Project/Area Number |
23K14238
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 45020:Evolutionary biology-related
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
高島 勇介 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源研究センター, 研究員 (70833987)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 細胞内共生 / 有性生殖 / β-カロテン / バクテリアゲノム / 菌類ゲノム |
Outline of Research at the Start |
細胞内共生細菌において,共生・寄生の関係は連続的であり,その進化プロセスを明らかにすることは細菌が生物進化を如何に駆動してきたかを理解する上で重要である.節足動物とその細胞内共生細菌の相互関係には,栄養共生と生殖干渉があるが,これらの共生関係のどちらが先に成立したかは進化生物学において未知の課題の1つである.本研究では,栄養共生と生殖干渉が同時に存在する可能性のある菌類と細胞内共生細菌を対象として,① 菌類-細菌の相互作用の分子機構を解明し,②共生・寄生の可変的な相互作用獲得の進化プロセスを明らかにすることにより,細胞内共生細菌による生物進化に関する新規研究モデルの確立を目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,進化生物学分野ではこれまで注目されてこなかった菌類と細菌の微生物間相互作用に着目し,栄養共生と生殖干渉が同時に存在する可能性のある菌類と細胞内共生細菌を対象として,課題① 菌類-細菌の相互作用の分子機構を解明し,課題②共生・寄生の可変的な相互作用獲得の進化プロセスを明らかにすることにより,細胞内共生細菌による生物進化に関する新規研究モデルの確立を目的としている.本年度は,所属変更に伴う研究・解析環境の構築および前所属までに得た実験材料を現所属へ寄託する手続きに時間を要し,課題①に十分に取り組む時間がなかったため,本年度は情報解析が主体である課題②を重点的に進めた.モデル共生系の共生細菌Burkholderiaceae sp. YTM39s3EBと同じくMorBRE group Cに属する菌類細胞内共生細菌2系統(YTM133s1EBおよびE2010s1EB)の完全ゲノムを構築した結果,YTM133s1EBにはYTM39s3EBと同様にカロテン合成遺伝子が存在した一方,YTM39s3EBとは系統的にサブクレードレベルで異なるE2010s1EBにはカロテン合成遺伝子が存在しなかった.カロテン合成遺伝子の獲得はMorBRE group BおよびCの共通祖先,またはMorBRE group C内の特定のサブクレードに限定されている可能性を想定していたが,今回の結果よりカロテン合成遺伝子の獲得がMorBRE group C内の特定のサブクレードに限定されている可能性を示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は所属変更に伴う研究・解析環境の構築および実験材料を現所属へ移動する手続きに時間を要したことから,生物実験が主体となる課題① 菌類-細菌の相互作用の分子機構解明に十分に着手することができなかった.そのため,情報解析が主体となる課題②共生・寄生の可変的な相互作用獲得の進化プロセスの解明に先に着手した.カロテン合成遺伝子を持つモデル共生系の共生細菌Burkholderiaceae sp. YTM39s3EBと近縁なMorBRE group Cに属する細胞内共生細菌2系統(YTM133s1EBおよびE2010s1EB)の完全ゲノムの構築を検討した.それぞれの宿主菌類の菌糸(細菌を含む)より抽出したDNAを用いてナノポアロングリードおよびDNBSEQショートリードを取得した.MaSuRCAを用いて校正ロングリードを作成し,metaflyeによるアセンブリを行った結果,共生細菌に由来する完全長ゲノムと推定される環状コンティグが各菌株より得られた.DFASTでアノテーションを行った結果,YTM133s1EBにはYTM39s3EBと同様にカロテン合成遺伝子が存在した一方,E2010s1EBにはカロテン合成遺伝子が存在しなかった.YTM133s1EBおよびE2010s1EBに対するYTM39s3EB の16S rRNA遺伝子の相同性はそれぞれ98%および96%であり,先行研究の系統解析からYTM39s3EBおよびYTM133s1EBは,MorBRE group C内の同一サブクレードに位置することが分かっている.カロテン合成遺伝子の獲得はMorBRE group BおよびCの共通祖先,またはgroup C内の特定のサブクレードに限定されている可能性を想定していたが,今回の結果より後者の仮説が適切である可能性が高くなった.
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Strategy for Future Research Activity |
1年目にほとんど着手できなかった課題①について,モデル共生系である糸状菌Mortierella sugadairana YTM39(共生細菌としてBurkholderiaceae sp. YTM39s3EBが菌糸内に存在)の現所属への寄託が完了したため,モデル共生系に対する遺伝子発現解析に向けたRNA抽出およびシーケンス条件の最適化が可能になった.その際,細菌の遺伝子発現比較解析も行う予定のため,適切なrRNA除去の試薬および解析データ量(シーケンスデプス)の検討が必要である. 課題②について,カロテン合成遺伝子の獲得はMorBRE group C内の特定のサブクレードに限定されているという仮説を詳細に検証するため,先行研究で得られているMorBRE group Cに属する共生細菌におけるカロテン合成遺伝子の有無を調査する.使用する糸状菌株を現所属で利用するために菌株の寄託を早急に進める.また,カロテン合成遺伝子の有無のスクリーニングにはcarotene oxygenase遺伝子を標的とした特異的PCRを当初検討していた.しかし,現所属ではPromethION を利用した効率的なゲノム解析が実施可能なため,MorBRE group C内の各サブクレードから代表菌株を選出し,ゲノム解析に基づくカロテン合成遺伝子の有無の精査および細胞内共生細菌のゲノムレベルの系統解析を行うことにより,菌類の細胞内共生細菌におけるカロテン合成遺伝子の獲得プロセスの推定を行う.
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