カメムシにおける地域特異的な共生細菌の選択に関わる分子基盤の解明
Project/Area Number |
23K14241
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 45020:Evolutionary biology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小口 晃平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (50966249)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | チャバネアオカメムシ / 必須共生細菌 / トランスクリプトーム解析 / 連鎖解析 / カメノコハムシ / 共生細菌 / カメムシ / 共生進化 / 集団遺伝 |
Outline of Research at the Start |
チャバネアオカメムシの本州個体群と南西諸島個体群が保有する主要な必須腸内共生細菌A/Bを混合感染すると、本来の共生細菌のみが腸内に共生する。すなわち宿主カメムシと共生細菌が各地域において独自の栄養依存関係を進化させてきたと考えられる。本研究では、カメムシと共生細菌における地域特異的な共生進化の仕組みを解明することをめざし、網羅的遺伝子発現解析およびRNAiによる遺伝子機能解析と、交配実験および連鎖解析を駆使することで共生細菌A/Bの選択に関わるゲノム領域や遺伝子を探索し同定する。
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Outline of Annual Research Achievements |
日本列島のほぼ全域に分布するチャバネアオカメムシの必須腸内共生細菌には種内多型が見られ、本州個体群では単一の共生細菌Pantoea sp. A(共生細菌A)に固定しているのに対し、南西諸島個体群では優占する共生細菌Pantoea sp. B(共生細菌B)に複数の共生細菌C,D,E,Fが共存している。これまでに主要な共生細菌AとBを個体群間で入れ替えると宿主の羽化率が極端に低下する不和合性を示すことから、宿主と共生細菌が各地域で共進化していると予想された。このような共生進化に見られる特異性は種分化等において重要な役割を果たす可能性があると考えられるが、そのメカニズムは未解明であった。そこで本研究ではカメムシと共生細菌AとBにおける地域特異的な共生進化機構の解明をめざし、RNAseqによる網羅的遺伝子発現解析、交配実験およびQTL解析等を駆使した共生細菌A,Bの選択に関わる候補遺伝子の選抜を行った。 本年度はRNAseqによる網羅的遺伝子発現解析を実施することでアミノ酸合成や輸送系の遺伝子、さらには免疫関連遺伝子の発現に地域間で差異がある事を見出した。さらに交配実験による継代2世代目(F2)の表現型の分離比から共生細菌Aの選択に関わる遺伝子型の顕性であり、共生細菌Bの選択に関わる遺伝子座が潜性であることが示唆された。作出されたF2個体を対象にRADseqを用いたSNPの検出を行ない、表現型と関連する宿主ゲノム領域の絞り込みを行なった。また、カメムシ類と同様に食植性昆虫であるカメノコハムシ類の必須共生細菌Stammeraの共生様式について、近年腸内(細胞外)共生細菌であると考えられていたが細胞内共生していることを組織形態学的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに本種の地域系統間における共生細菌の選択は孵化直後に共生器官内部で起こることを明らかにしている。そこで本年度は、若齢幼虫の共生器官を対象とした網羅的遺伝子発現解析を実施し、地域系統間で比較した。その結果、アミノ酸合成や輸送系の遺伝子、さらには免疫関連遺伝子の発現に地域間で差異がある事を見出した。さらに交配実験による継代2世代目(F2)の表現型の分離比から共生細菌Aの選択に関わる遺伝子型の顕性であり、共生細菌Bの選択に関わる遺伝子座が潜性であることが示唆された。作出されたF2個体を対象にゲノム抽出とRADseqを用いたSNPの検出を行ない、表現型と関連する宿主ゲノム領域の絞り込みを行なった。現時点では、候補となりうるゲノム領域が複数あり、絞り込みには至っていない。これは共生細菌Bの選択に関わる遺伝方が潜性であるため、B選択型の個体数が少なかったことに起因しているのではないかと考えている。また、カメムシ類と同様に食植性昆虫であるカメノコハムシ類の必須共生細菌Stammeraの共生様式についての研究も行なった。カメノコハムシは植物の消化酵素の合成に特化したStammeraを前腸・中腸境界部の共生器官内部に保有する。近年、Stammeraは腸内(細胞外)共生細菌であると考えられていたが、蛍光in situ hybridization法や透過型電子顕微鏡を用い細胞内共生していることを組織形態学的に明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的遺伝子発現解析から明らかとなった地域間で発現変動する遺伝子は数百あるため、これらの候補について発現量などを元に選抜していく。特にアミノ酸合成や輸送系の遺伝子、免疫関連遺伝子についてはRNAi法による機能解析を実施し、さらに共生細菌の入れ替えを行なった際の共生細菌の感染量を比較する。今年度は実施できなかったアミノ酸の定量比較についても実施予定である。また、連鎖解析では候補となるゲノム領域の絞り込みに至っていない。サンプル数、特にB選択型の個体数が少なかったことに起因していると考えられるため、交配実験を再度行い十分な個体数の確保を目指す。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)