Project/Area Number |
23K14243
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 45020:Evolutionary biology-related
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
荒井 直樹 神奈川大学, 化学生命学部, 助教 (80802074)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 食虫植物 / プロト食虫植物 / Ibicella lutea / プロテオーム / 遺伝子発現 / 新規形質獲得 / イビセラ / 消化酵素 |
Outline of Research at the Start |
食虫植物は食虫機能をもたない“一般の植物”から進化したと考えられているが、進化の道筋は未だ明らかでない。申請者は、食虫植物の虫を捕らえる葉(捕虫葉)と一般の植物の根が共通した機能をもつことに気づき、『食虫植物は根の機構を葉に転用することにより食虫機能を獲得した』という新規の仮説を提唱した。本研究では、この仮説を検証するため、食虫植物に進化する途上にある植物(プロト食虫植物)のイビセラに着目し、根と捕虫葉の分泌タンパク質および遺伝子発現を解析し、食虫機能に関わる遺伝子の発現制御機構を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、プロト食虫植物であるIbicella luteaを材料に、根と捕虫葉の分泌タンパク質および遺伝子発現を解析し、食虫機能に関わる遺伝子の発現制御機構を解明することにある。2023年度は、捕虫葉から分泌するタンパク質の同定および各組織で発現する遺伝子の解析を行なった。捕虫葉から分泌された粘液のタンパク質をLC-MS/MSにより解析した結果、全部で50種類のタンパク質を同定・定量することに成功した。その内訳を見ると、全体の58%が生体防御タンパク質であることが判明し、プロテアーゼやキチナーゼ、グルカナーゼなど食虫植物の消化液に共通して含まれるタンパク質が多量に存在することが明らかとなった。次に、分泌されるタンパク質の遺伝子発現について解析を行なった。腺毛(捕虫器官)、腺毛を取り除いた葉、根を用いてRNA-seqを行なった結果、意外なことに、全ての遺伝子は腺毛特異的に発現してはいなかった。その半数近くの遺伝子は根でも発現しており、その中には根特異的に発現している遺伝子も存在した。分泌されるタンパク質のいくつかは根において合成され、腺毛に輸送されているのかもしれない。何れにしてもこれらの事実から、腺毛と根は密接な関係があることが伺える。さらに、捕虫葉からの栄養吸収の観点から、腺毛で発現するトランスポーターについても解析を行なった。その結果、腺毛では100個ほどのトランスポーターが発現していることが明らかになり、その中でも窒素、リン、カリウムなどのトランスポーターが高く発現していることが判明した。これらのトランスポーターは腺毛だけではなく根でも発現していることから、I. luteaは根で発現している遺伝子を葉で利用していることが強く示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、粘液に含まれるタンパク質の同定・定量および各組織で発現する遺伝子のトランスクリプトームの解析から、捕虫葉と根との関連を見出し、腺毛と根で高発現している遺伝子を抽出することができた。当初予定していた根から分泌するタンパク質の同定とゲノム解読については実施できなかったが、上記の解析から興味深い結果を得られたため、概ね順調に進んでいると評価した。実施できなかった解析についても既に材料は準備できており、すぐに解析できる状態にある。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、①根から分泌するタンパク質の同定ならびに②腺毛と根で高発現している遺伝子の制御因子の探索を行う。①に関しては、水耕栽培をしているI. luteaの溶液を回収し、そこに含まれるタンパク質をLC-MS/MSにより網羅的に同定する。②に関しては、ゲノム解読を早急に行い、腺毛と根で高発現している遺伝子のシスエレメントを探索し、発現を誘導する転写因子を予測する。その後、予測された転写因子を対象にChIP-seqを行い、発現との関連を明らかにする。また、プロモーターの近傍にCpG配列を多く含む遺伝子は、バイサルファイトシークエンスにより、発現とDNAのメチル化との関連を調べる。
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