Project/Area Number |
23K14257
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 45030:Biodiversity and systematics-related
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Research Institution | Meguro Parasitological Museum |
Principal Investigator |
高野 剛史 公益財団法人目黒寄生虫館, その他部局等, 研究員 (50794187)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2026: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 寄生 / 腹足類 / 宿主転換 / 進化史 / 分子系統解析 / 棘皮動物 / 棲み分け / X線マイクロCT |
Outline of Research at the Start |
ハナゴウナ科の巻貝は、棘皮動物を宿主とする寄生者である。同科貝類は高い生態的・形態的多様性を示す一方、移動能力を有し宿主個体を転々とする一時的寄生者を中心に、基礎生態の知見を欠くものも多い。本研究では、分子生物学的手法による固定標本からの宿主同定と、X線マイクロCT撮影による寄生状況の可視化により同科貝類の生態を詳細に調べる。確度の高い系統構築とあわせ、多様化過程における宿主転換と寄生部位の転換を複合的に検討、特に寄生者の移動能力の違いにより異なる多様化パターンがみられるかを検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
寄生生物はあらゆる環境で普遍的にみられ、生態系の維持や生物の多様化に大きな影響を与えることから、分子系統解析を用いた系統・進化学的研究の対象として注目されてきた。寄生者の多様化メカニズムとして特に宿主転換が着目されてきたが、寄生部位の転換を伴う同一宿主での棲み分けや宿主内種分化も重要であることが示唆されている。しかしながら、先行研究の大多数はいずれかの事象に着目したものであった。本研究では、棘皮動物に寄生する海産寄生性腹足類の一群であるハナゴウナ科に着目し、分子生物学的手法による固定標本からの宿主同定と、X線マイクロCT撮影による寄生状況の可視化、確度の高い系統構築とあわせ、多様化過程における宿主転換と寄生部位の転換を複合的に検討することを目指す。 当年度は、既存サンプルのDNA抽出やサイズ計測等を中心に行い、ハナゴウナ科の網羅的分子系統解析や、次年度実施予定のリアルタイムPCR解析の準備を進めた。国内での野外調査を実施し新規サンプルの収集にも努め、特に、約3週間にわたる日本海溝および千島海溝の深海帯・超深海帯の生物相調査航海に参加し、同科の深海性種について宿主利用と深度分布に関する多くの新知見を得た。また、南西諸島においてクロナマコに寄生するハナゴウナ科2種の、系統関係と付着部位選好性について論文を発表したほか、神奈川県沖で採集された深海性クモヒトデに寄生する1新種を報告した。前者の論文では、種間に付着部位の差が観察され、両者で摂餌生態が異なること、ならび各々独立にクロナマコへ宿主転換を遂げたことが明らかとなった。この付着部位の差は、両者の共存に寄与しているかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度は、南西諸島でクロナマコに高率で寄生するハナゴウナ類2種について、その付着部位と系統関係について論文を執筆した。対象種間には宿主上での寄生部位に差がみられ、摂餌生態が異なることが示唆されたほか、両種は系統的に離れており、独立にクロナマコへ宿主転換を遂げたことが示された。また、神奈川県沖において、クモヒトデ類に寄生するOphieulima属貝類を北太平洋から初めて発見し、新種として報告した。同属貝類は世界中に分布すると考えられるが、知られる限り全種がOphiactis属のクモヒトデを宿主とする。したがって、宿主転換を近縁な種の間で起こし、多様化してきたものと考えられた。 あわせて、既存標本の解析ならびにその準備を進めた。ハナゴウナ科の分子系統解析に用いる標本について、核とミトコンドリアDNAの6遺伝子座の配列決定を行うとともに、リアルタイムPCR解析に用いるカギモチクリムシのサイズ計測ならびにDNA抽出作業に着手し、進行中である。 既存標本の解析のほか、新規サンプルの収集にも努めた。南西諸島で複数回の野外調査を実施し、また約3週間にわたる日本海溝および千島海溝の深海帯・超深海帯の生物相調査航海に参加した。これらにより、深海性ナマコ類に寄生する未記載のハナゴウナ類複数種のほか、X線マイクロCT撮影に用いる、宿主に付着した状態の標本を複数得ることができた。サンプルの一部は現在解析中であり、次年度も継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、引き続きハナゴウナ類の系統解析を目的とした既存標本のDNA解析を行うとともに、カギモチクリムシを対象に、胃内容物のリアルタイムPCRを実施し、宿主DNAの減衰過程を検討する。これにより、ハナゴウナ類の摂餌あるいは宿主個体間の移動頻度を推定したい。また、宿主に付着したハナゴウナ類標本のX線マイクロCT撮影に向け、共同研究者と撮影法や条件の検討を進めていく。 次年度中、鹿児島県奄美大島の一部地域において、ナマコ類の捕殺許可を取得した。これを機に、ナマコ類に寄生するハナゴウナ科腹足類の調査、並びに宿主の同定とバーコーディングを合わせて実施する予定である。
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