Project/Area Number |
23K14310
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 46030:Function of nervous system-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
稲田 健吾 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (20823363)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 養育行動 / オキシトシン / バソプレシン / リガンド・受容体クロストーク / 視床下部 / クロストーク |
Outline of Research at the Start |
オキシトシンとバソプレシンは社会性行動に関与する神経ペプチドで、脳視床下部の異なる神経細胞によって産生される。これらは構造が非常に似ており、リガンド・受容体クロストークを起こすことが知られている。しかしこのリガンド・受容体クロストークが、脳機能発現において何らかの本質的な役割を果たしているのかについては良く分かっていない。本研究では雄マウスの養育行動発現をモデルに、バソプレシン神経細胞の養育行動における機能解析を通して、リガンド・受容体クロストークの重要性について解析する。これにより僅かな構造の違いを基盤とした生体内におけるクロストークシステムの重要性の理解に道を拓くことができる。
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Outline of Annual Research Achievements |
オキシトシンとバソプレシンは社会性行動に関与する神経ペプチドで、脳視床下部室傍核の異なる神経細胞によって産生・放出される。これらはわずか2アミノ酸残基の違いしかなく、オキシトシン受容体がバソプレシンをある程度受容する、リガンド・受容体クロストークを起こすことが知られている。しかしこうしたリガンドと受容体間のクロストークが、脳機能発現において本質的な役割を果たしているのかについては良く分かっていない。本申請課題では、雄マウスの養育行動発現をモデルにこの問題を検討した。まずアポトーシスを誘起することで、父親マウスのバソプレシン神経細胞を欠損させた。するとそうした父親マウスはコントロール群と異なり養育行動を見せないどころか、仔への攻撃行動を行った。一方仔に対して攻撃的な交尾未経験の雄マウスにおいて、バソプレシン神経細胞を活性化させたところ、仔への攻撃行動が起こらず、代わりに養育行動を行った。これらの結果は、バソプレシンが仔への攻撃行動抑制に関与していることを示している。 次にリガンド・受容体クロストークがどの程度これらの機能に寄与しているのかがどの程度により発現しているのか解析し、また同時にクロストークを起こしている脳部位を特定するため、交尾未経験の雄マウスにおいて、いくつかの領域でオキシトシン受容体をコンディショナルノックアウトで欠損させた上でバソプレシン神経細胞を活性化させた。すると前側視床下部の神経核にあるオキシトシン受容体に対して、バソプレシンが作用することで、仔への攻撃性抑制が達成されていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題はリガンド・受容体クロストークの、生体内における機能について明らかにすることを目的としている。現在までの研究により、リガンド・受容体クロストークが雄マウスの養育行動、特に仔への攻撃性抑制に関与していることが明らかになった。またその現象を起こしている脳領域の絞り込みも進んだ。そのため本研究課題は計画を超えて順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、リガンド・受容体クロストークが仔への攻撃性抑制に関与していることが明らかになった。次年度ではこの知見を受けて、さらにそのメカニズムを掘り下げるために電気生理実験を計画している。具体的にはリガンド・受容体クロストークを起こしているオキシトシン受容体発現細胞から電気生理学的な記録をとりつつ、バソプレシンやオキシトシンを投与することで、その反応性を見る。それによりリガンド・受容体クロストークが膜電位変化など神経細胞にどのような影響を与えるのか解析することができる。一連の実験から、分子レベルの現象と神経細胞レベルの応答の間をつなぐ知見を得ることができる。最終的には仔への攻撃性抑制という行動への影響についても説明したい。
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