Project/Area Number |
23K14345
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 47030:Pharmaceutical hygiene and biochemistry-related
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長田 夕佳 金沢大学, 薬学系, 助教 (80802016)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | マスト細胞 / IgE受容体 / 脱感作 / アレルゲン |
Outline of Research at the Start |
アレルギー疾患の有病率は依然として高く、現状の打開が急務である。現在の治療は対症療法を主体として根治は容易ではない。アレルゲン特異的免疫療法(脱感作療法)は、唯一の根治的治療であるが、疾患の原因物質(アレルゲン)を摂取するため危険性を伴う。また、治療に長期を要するが治療効果は決して高くなく、安全性や有効性にまだ課題を残している。マスト細胞のIgE受容体の脱感作は、脱感作療法の奏効に極めて重要な過程である。しかし、その分子メカニズムは不明な点が多い。本研究は、IgE受容体の脱感作機構の解明を通してアレルギー疾患に対する安全かつ有効な根治的治療法の確立に寄与することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アレルゲン漸増刺激によりIgE受容体(FcεRI)の脱感作を誘導するin vitro実験系を確立した。この実験系を用いて、アレルゲンの親和性がFcεRI脱感作効率に与える影響を評価した。 FcεRI脱感作の成立には、炎症性メディエーター分泌応答を伴わないFcεRIの細胞内移行(内在化)が不可欠である。はじめに、IgEとの親和性が異なるアレルゲン(高親和性・低親和性)で刺激したマスト細胞について、顆粒内酵素β-hexosaminidaseを指標とした脱顆粒応答とFcεRIの内在化率を評価した。その結果、低親和性アレルゲンは、脱顆粒を誘導しない一方、FcεRIの内在化については、高親和性アレルゲンと同等に誘導できることが分かった。この結果を支持するように、低親和性アレルゲン漸増により脱感作を試みると、脱顆粒を惹き起こすことなく脱感作が成立した。さらに、脱感作誘導細胞のシグナル伝達経路を解析したところ、低親和性アレルゲン漸増により抑制性シグナル経路が優位に働く傾向が観られた。また、高親和性アレルゲン漸増により炎症性サイトカインの著しい分泌亢進が観られたが、低親和性アレルゲンではこれが抑えられることも明らかとなった。また、内在化したFcεRIクラスターの形成状態を解析したところ、低親和性アレルゲン漸増により有意に小さいFcεRIクラスター形成が観察され、低親和性アレルゲンによFcεRIの緩やかな内在化が脱感作成立の鍵となることを示唆した。このようにアレルゲン親和性によって異なるFcεRIの制御は、アレルゲン漸増による脱感作の誘導効率や安全性に関与することが示唆された。 これらのことから、本年度の研究は、アレルゲン親和性が安全かつ有効な脱感作療法を確立する上で重要な因子であること示唆した。今後、アレルギー疾患モデルを用いた検証やFcεRI制御メカニズムの追究を課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究課題の基盤となるin vitro系を確立し、アレルゲン親和性によって異なる脱感作効率を評価することができた。 高親和性および低親和性アレルゲンのいずれを用いても脱感作誘導は可能であったが、両者の間で脱感作が成立する濃度範囲に明確な違いが見られた。高親和性アレルゲンで脱感作を誘導するためには、アレルゲン濃度を慎重に漸増させる必要がある。高親和性アレルゲンでは、漸増パターンや濃度の変更により、非意図的な脱顆粒が生じるか、またはFcεRIの内在化が不十分になり、脱感作が不成立となる場合がある。一方、低親和性アレルゲンでは、同様の漸増パターンや濃度の変更を行っても、脱感作を効果的に誘導することができた。さらに、脱感作効率に差異が生じた機序として、FcεRIクラスターの形成状態に差があることが示唆された。過去の報告から、FcεRIクラスター形成状態とアレルゲン刺激後のシグナル伝達との関与が示されている。特にFcεRIクラスターサイズと抑制性シグナル伝達と関与は近年の報告から明かである。本年度は、脱感作誘導細胞の共焦点顕微鏡観察やフローサイトメトリー解析により、アレルゲン親和性によって脱感作誘導時のFcεRIクラスターの形成状態が異なることを解析することができた。 このように、研究の基盤となる成果およびそのメカニズムを示唆する知見が得られ、今後の研究の指針を得ることができた。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を踏まえ、低親和性アレルゲンによる脱感作制御メカニズムの解明 、およびアレルギー疾患モデルを利用した検証を行う。 本年度に作製したin vitro系を用いて、脱感作制御メカニズムの解明を行う。アレルゲン親和性の違いは、FcεRIクラスター形成を介してマスト細胞の分泌反応を制御する。低親和性アレルゲンによる脱感作誘導は、アレルゲンに対する不応答だけでなく能動的に抑制性応答を誘導する可能性がある。そこで、脱感作誘導後のマスト細胞のシグナル伝達経路の解析を進めるとともに、抗炎症性サイトカイン等の産生を定量的RT-PCRやELISAより解析する。 また、アレルギー疾患モデルマウスを作製して、以下の項目より、脱感作誘導機構を追究する。1) アナフィラキシー反応モデルによる検証:腹腔マスト細胞の活性化による全身性アナフィラキシーモデルを作製し、各種アレルゲンを腹腔に漸増投与して脱感作を誘導する。その後、アナフィラキシーショックの指標である直腸体温低下を測定し脱感作効率を定量評価する。また、脱感作誘導の標的となる腹腔マスト細胞のFcεRIについて、発現量をフローサイトメトリーで、クラスター形成状態を共焦点顕微鏡で解析する。また、炎症組織において、制御性T細胞の誘導などを指標として抑制性免疫応答を解析する。2) 食物アレルギー病態モデルによる検証:腸管マスト細胞の活性化による食物アレルギーモデルを作製し、アレルギー性下痢症状を指標に脱感作効率を評価するとともに、腸管粘膜のマスト細胞を単離し、IgE受容体の発現量やクラスター形成状態、抑制性シグナル、およびトレランス誘導機構を解析する。 以上のことから、アレルゲン親和性によって異なる脱感作機構について、in vitro脱感作評価系とin vivo疾患モデルを用い、分子メカニズムと生理的意義を解明する。
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