Project/Area Number |
23K14400
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 47060:Clinical pharmacy-related
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
出石 恭久 就実大学, 薬学部, 講師 (80791847)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 肺炎症 / 精神機能低下 / 不安症状 / ミクログリア / 亜鉛 / RAGE / S100β |
Outline of Research at the Start |
近年、肺の炎症を主徴とする新型コロナウイルス感染症の特徴的な後遺症として、不安症状や倦怠感、認知症等の精神機能が低下した患者が急増しており、本邦でも社会問題となっている.早急な対策が必要であるが、肺の炎症と精神機能低下の関係性に着目した研究は進んでいない. これまで申請者は、マウスを用いた全身炎症モデルが不安症状を示し、その不安に亜鉛が有用である事、肺に限局した炎症モデルでも不安症状を示す事、またRAGEというタンパク質が肺炎症下で重要な分子である事を既に見出している.本研究では、モデル動物を用いて肺炎症による精神機能低下の発症機序の解明および亜鉛等の予防候補因子の有用性を明らかにしていく.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,新型コロナウイルス感染症の後遺症で発症する精神機能低下症に注目し,肺炎症による精神機能低下の病態形成の機序の解明および新規治療標的因子を明らかにする事を目的としている.本年度は,ICR雄性マウス(6週齢)にLPSを経気道投与した24時間後の肺炎症モデルを作製し,本年度の実施計画に従い研究を進めた. まず肺炎症後の不安症状について明暗探索試験およびhole-board試験により行動薬理学的評価を行った.明暗探索試験では,生食群に対しLPS 0.5, 1, 3(mg/kg)経気道投与群で用量依存的に明室での滞在時間の短縮作用が認められた.Hole-board試験においても生食群に対しLPS群で用量依存的に穴を除く回数が減少した.一方、LPS腹腔投与による全身炎症が脳内炎症を引き起し,脳内GABAA受容体を介した塩化物イオンチャネル排出ポンプの減少により細胞内塩化物イオンが蓄積する事で,ゾルピデムによる睡眠時間が延長する事が報告されているが,本研究の肺炎症モデルでも同様に生食群に対しLPS用量依存的にゾルピデムによる睡眠時間の延長が認められた. さらに全身の炎症状態を評価するためにLPS投与後の2,5,24時間の経時的な血中のサイトカインTNF-αとIL-6を調べたところ,いずれも2時間をピークとする上昇を示し,24時間後は正常レベルまで低下していた. 次に,肺炎症の残存状態を肺胞洗浄液(BALF)および肺組織のヘマトキシリン-エオジン(HE)染色で評価した.その結果、BALF中の白血球(WBC)数が生食群に対し有意に上昇し,HE染色でも肺胞中隔の肥厚,および炎症様細胞の顕著な浸潤の様子が認められた. 最後に,肺炎症モデルにおける海馬のミクログリアの蛍光染色による評価を行った結果,生食群に対しLPS群で有意に脳内ミクログリア陽性細胞の増加が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初予定していた研究実施計画の目標である肺炎症モデルを作製し,精神機能の変化および肺炎症と脳内炎症の評価を行う事が出来た. 具体的には,LPS経気道投与24時間後の肺炎症モデルにおいて,肺組織構造の炎症性変化および肺胞洗浄液中の白血球数の増加により肺炎症が残存し,海馬内のミクログリアが活性化している状態において,明暗探索試験およびhole-board試験により不安症状が出現する事を明らかにした. 従って,LPS誘発性肺炎症が脳内炎症を引き引き起こす事で不安を惹起する可能性を見出すことが出来た事から,当初の予定通り進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,当初の研究実施計画に従い,マウスにLPSを経気道投与した肺炎症モデルを作製し,不安症状だけでなくうつ状態についても評価していくとともに,亜鉛と終末糖化産物の受容体の可溶型分子種の組換え体(rsRAGE)の肺炎症モデルの精神機能低下に対する有用性を明らかにしていく. 具体的には,硫酸亜鉛(5mg/㎏)を1日2回, 2日間皮下投与,またはrsRAGEについてはLPS投与1時間後に5mg/㎏を経気道投与し,LPS投与24時間後の状態について,不安症状やうつ状態を行動薬理学的手法により評価する.さらに肺炎症についても,炎症性サイトカインやRAGEやToll様受容体、HMGB1等炎症を惹起する分子の評価,および脳内炎症については前述の炎症に関連する評価項目に加えて脳由来栄養因子(BDNF)とその受容体やミクログリア,アストロサイト等について分子生物学的手法および組織学的手法を用いて評価していく. 前年度の研究では,LPS 3mg/㎏の経気道投与が比較的重症度の高い肺炎症であったことから,今後の研究では文献調査も含めて他の肺炎症の重症度についても検討を行う可能性がある.
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