炎症性腸疾患の新規バイオマーカー・病態関連候補血清ペプチドの網羅的解析
Project/Area Number |
23K14466
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 49010:Pathological biochemistry-related
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
加藤 正樹 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (70940568)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
|
Keywords | 炎症性腸疾患 / バイオマーカー / ペプチドミクス |
Outline of Research at the Start |
炎症性腸疾患(IBD)は原因不明の難治性炎症疾患であり、潰瘍性大腸炎とクローン病からなる。慢性の下痢・血便・腹痛等により生活の質が低下する為、正確な診断と速やかな寛解導入、長期の寛解維持が重要である。診断及び粘膜評価に必須の内視鏡は侵襲性があり頻回施行が困難な為、代替となる非侵襲的なバイオマーカーの確立が急務である。本研究では、IBD患者血清中のペプチドを網羅的に定量し、IBDの診断、腸管粘膜及び全身の疾患活動性、治療反応性を評価する為のバイオマーカー候補となるペプチドを同定する。更に上記の評価項目で特異的な量的変化を示した血清ペプチドについて、IBDの病因や病態における関与を検討する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、潰瘍性大腸炎(UC)の腸管病変及び全身疾患活動性を評価する新規バイオマーカー候補となる血清ペプチドを探索した。UC 60例の血清から弱陽イオン交換でペプチドを抽出し、質量分析でペプチドイオン強度を測定した。116個のペプチドを検出し、これらのイオン強度を用いた主成分分析で4例が外れ値を示した為、以後は56例または下記選定例を対象とした。各ペプチドイオン強度の2群間の平均値の比較をWilcoxon検定、臨床スコアとの相関をSpearman順位相関係数を用い解析した。 腸管病変活動性のペプチドマーカー探索は、血清採取前後100日内に内視鏡を施行し、この間に疾患活動性の変化及び治療追加がなかった17例を対象とした。各ペプチドイオン強度とUCの内視鏡スコアMESとの間に中等度の相関(0.4<|r|≦0.7)を示すペプチドを18個認め、粘膜治癒群(MES≦1)と非粘膜治癒群(MES≧2)間でイオン強度が変化したペプチドを31個認めた(p<0.05)。全身疾患活動性のペプチドマーカー探索は56例で行い、イオン強度とUCの全身疾患活動性スコアSCCAIの間に中等度の相関を示すペプチドを4個、寛解群(SCCAI≦2)と非寛解群(SCCAI≧3)の間でイオン強度が変化したペプチドを19個認めた(p<0.05)。 代表例としてペプチドAは、MES・SCCAIと中程度の相関を示し(各r=-0.4869、r=-0.4811)、粘膜治癒群と非粘膜治癒群間及び寛解群と非寛解群間で差を認め、非粘膜治癒群を感度100%・特異度76.9%、非寛解群を感度84.6%・特異度60.5%で検出した。腸管病変及び全身疾患活動性の有用なバイオマーカー候補であり、またMES・SCCAIと負の相関を示すことから、UCの活動性を制御する機能をもち治療標的となる可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
UC 60例及びクローン病(CD)52例の血清から弱陽イオン交換にてペプチドを抽出し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析で個々のペプチドのイオン強度を網羅的に測定する段階を終了したことによる。 UCに関しては、腸管病変活動性の指標MES及び全身疾患活動性の指標SCCAI以外に、病変範囲についても対象患者の情報を収集した。ペプチドイオン強度と各臨床項目との相関を解析し、また各臨床項目で重症度により患者を2群に分け、群間のペプチドイオン強度差及び重症群を検出する感度・特異度を検討した。UCの血清ペプチド中に、MESやSCCAIに対して中等度・軽度の相関を示す、または高い感度・特異度を示すものを認め、これらをUCの有用なバイオマーカー候補として挙げることができた。前述したペプチドAの様に、複数の臨床項目で有用な結果を示しUCの有用なバイオマーカー候補であると共に、相関の方向性から炎症または抗炎症に働く可能性をもつペプチドが検出されており、治療標的としての有用性も示唆されている。 現在、UCにおいて採血日以降1年以内の臨床的再燃・罹病期間、CDにおいて腸管病変活動性・全身疾患活動性等について臨床情報を収集しており、各ペプチドイオン強度との関連を解析し新規バイオマーカー候補となる血清ペプチドの検出を試みている。 上記の解析にて有用な結果を示した血清ペプチドは、UCやCDの病態に関与する可能性が示唆される。そこで当該ペプチドを合成し、腸管上皮細胞への作用やその作用機序を解明するためにヒト結腸癌細胞Caco-2とヒト単球THP-1の共培養系を用いて解析予定であり、準備を進めている。またデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性炎症性腸疾患(IBD)モデルマウスに当該ペプチドを投与し、病態の変化が認められるかを検討予定であり、準備を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
UCとCDの各臨床項目において有用な結果を示した当該ペプチドのアミノ酸配列をタンデム質量分析法にて同定を行う。その得られたアミノ酸配列からタンパク質配列データベースを探索し、親蛋白質を同定する。当該ペプチドを外部委託にてペプチド合成を行う予定とする。各解析にて同定されたペプチドが、IBDであるUCやCDの病態にどの様に関与するかを以下の方法を用いて検討する。 IBDの腸管炎症のin vitroモデルとして、腸管上皮Caco-2細胞と腸管の炎症時に活性化されるマクロファージ様THP-1細胞からなる共培養系を用いる。実際には、結腸癌細胞Caco-2と単球THP-1の共培養系に上記で合成したペプチドを添加する。ペプチド添加によるCaco-2細胞障害をLDHアッセイで、培養上清の炎症関連サイトカインの変化をサイトカインアレイで測定を試みる。またペプチド無添加と差を認めれば、DNAマイクロアレイまたは次世代シークエンス法で各細胞の遺伝子発現変化を解析予定とする。 またIBDの腸管炎症のin vivoモデルとして、DSS誘発性IBDモデルマウスを用いる。DSS誘発性IBDモデルマウスに合成したペプチドを投与し、ペプチド未投与を対象にマウスの体重増減の有無、下痢・血便の程度、腸管長短縮の有無、血中の炎症関連サイトカインの変化をサイトカインアレイにて測定する。また病変部の組織学的評価として、炎症性細胞浸潤の抑制の有無やCD4、CD14等の分子の組織染色で評価することを試みる。ペプチド未投与と差を認めれば、DNAマイクロアレイ次世代シークエンス法により病変部組織の遺伝子発現変化を解析予定とする。
|
Report
(1 results)
Research Products
(2 results)