Project/Area Number |
23K14499
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 49030:Experimental pathology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原田 一貴 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (60830734)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / エピジェネティクス / 脳腸相関 / メタボローム / Kmt2c遺伝子 |
Outline of Research at the Start |
脳と腸が相互に情報を伝達して全身の機能を制御する「脳腸相関」は、生体恒常性維持に重要である。脳、腸、腸内細菌叢のいずれかに破綻が生じるだけで、全身性疾患の発症に至る。自閉スペクトラム症(ASD)は脳の機能障害疾患であるのみならず、下痢などの消化器疾患も併発する。ASDにおける脳と消化管双方の障害に対する治療法の開発が急務であるが、ASDに脳腸相関が関与するメカニズムは未解明である。申請者らは、ASDの中枢および末梢の症状を再現するモデルとしてエピジェネティクス調節因子であるKmt2c遺伝子の変異マウスを用い、ASDの脳と腸の疾患を結ぶ脳腸相関におけるエピジェネティクス制御の重要性を検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
脳と腸が相互に情報を伝達して全身の機能を制御する「脳腸相関」は、生体恒常性維持に重要であり、腸管内の栄養素や細菌叢といった環境因子は神経系、内分泌系やエピジェネティクスを介して脳腸相関に影響を及ぼす。自閉スペクトラム症(ASD)は脳の疾患であるのみならず、下痢などの消化器疾患も併発するが、ASDに脳腸相関が関与するメカニズムは未解明である。 申請者は、エピジェネティクス因子KMT2C遺伝子に着目した。KMT2C遺伝子は、ASD関連遺伝子データベースで有力な原因遺伝子として登録されており、ヒトにおいて、片側の染色体からKMT2Cタンパク質が産生されない機能喪失型ヘテロ変異患者は、精神遅滞およびASD様行動を伴うKleefstra症候群という神経発達障害を発症する。申請者らがKleefstra症候群患者の変異を再現する機能喪失型のKmt2cヘテロ変異マウス(以下、変異マウス)を作成したところ、ASDに特徴的な社会性や柔軟性の低下を示したほか(Nakamura et al., Mol Psychiat, 2024)、従来のASDモデルマウスで見られた小腸の短縮を示した。そこで、この変異マウスの代謝や遺伝子発現異常をオミクスレベルで解析することで、エピジェネティクスを起点とする脳腸相関の制御がASDの全身の症状の発症に果たす役割の解明に貢献できると考えた。 これまでに組織化学解析やオミクス解析を行い、変異マウスでは消化管の形態に異常は見られなかった一方、体重や体脂肪率の低下、ミトコンドリア機能の活性化が起きていることを見出した。今後は生化学解析や電子顕微鏡を用い、ミトコンドリア機能の活性化メカニズム解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異マウスで小腸の短縮が見られたことから、当初は消化機能の異常を想定し組織化学解析を行ったが、予想に反して形態学的な異常は見られず、ASD患者で見られる腸管バリア機能の低下には至っていないことが示唆された。また、変異マウスの糞便中腸内細菌叢を解析したところ、α多様性、β多様性、Firmicutes/Bacteroidetes比などの指標で野生型マウスと差は見られず、腸内細菌叢の乱れも起きていないと考えられた。 一方、変異マウスの糞便および血漿でメタボローム解析を行ったところ、チアミン代謝をはじめとするミトコンドリア機能の活性化が示唆された。また、変異マウスは体重と体脂肪率が低く、さらに肝臓において脂質合成にかかわる遺伝子の発現が有意に低下していた。 以上から、変異マウスでは消化機能や腸内細菌叢には変化が生じていない一方、ミトコンドリア機能の活性化と脂質合成能の低下が起きていると示唆された。ASD患者ではミトコンドリア機能の活性化が報告されており(Needham et al., Biol Psychiat, 2021)、本研究の成果はASDにおける末梢臓器の代謝機能異常を再現すると考えられ、順調な進展を見せていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で用いた変異マウスのミトコンドリアでもASD患者と同様の活性化が起きているか調べるため、酸素消費量を指標とした生化学解析、電子顕微鏡を用いた形態解析、ミトコンドリアゲノムの定量を行う。また、この変異マウスではヒストン脱メチル化酵素の阻害剤投与によりASD様行動の改善が見られており(Nakamura et al., Mol Psychiat, 2024)、同様の薬剤投与で上記の代謝関連異常が改善されるかも解析する。
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