Project/Area Number |
23K14583
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
小林 之乃 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80912419)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | 低酸素 / 乳がん幹細胞 / 3次元培養 / 転写因子 / 慢性低酸素 / シグナル伝達 |
Outline of Research at the Start |
乳がんによる死亡率の改善には、転移を防ぐことが重要である。従って、乳がんの転移を引き起こす原因となる乳がん幹細胞を標的とした新規治療法の確立は急務である。低酸素誘導性因子HIF-1αの発現が見られる低酸素急性期では、HIF-1αによるシグナル伝達経路の活性化が、がん幹細胞を維持することが分かっている。しかし、HIF-1αの発現は一時的である。申請者は、HIF-1αの発現消失後の低酸素慢性期では、HIF-1αに代わって別の転写因子がシグナル伝達経路を活性化することで、がん幹細胞を維持するのではないかと考えている。本研究では、その転写因子を同定し、乳がん幹細胞維持を抑制する新規抗がん剤開発につなげることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍の内部では、血管からの酸素供給量の違いにより、低酸素領域が生じる。低酸素領域で発現量が増加したHypoxia-Inducible Factor (HIF)によって、乳がん幹細胞が維持されるが、HIFの発現は一過的である。本研究では、HIF消失後の低酸素慢性期に、乳がん幹細胞を維持する転写因子を探索し、その転写因子による乳がん幹細胞維持機構を明らかにすることを目的としている。 まず、乳がん細胞株を用いて、低酸素慢性期で乳がん幹細胞が維持される条件を検討した。トリプルネガティブ乳がん細胞株 (MDA-MB-231)と細胞外マトリックス成分を混合したものを丸底低接着プレートに播種することで、乳がん幹細胞と非乳がん幹細胞を強制的にまとめたスフェロイドを作製し、酸素濃度1%条件下で1週間培養した。乳がん幹細胞関連遺伝子であるNANOG、KLF4、SOX2、NRP1、IGF1Rの発現量を検討した結果、低酸素培養1週間後でも、通常酸素培養と比較して乳がん幹細胞関連遺伝子の発現量の増加が見られた。エストロゲン受容体陽性型乳がん細胞株 (MCF7)でもスフェロイドを作製し、長期低酸素培養したところ、MDA-MB-231と同様の結果を得た。このことから、少なくとも2つの乳がんサブタイプでは、低酸素慢性期で乳がん幹細胞が維持されることが示唆された。 次に、この実験系を用いて、低酸素慢性期で乳がん幹細胞を維持する転写因子の探索を行った。当研究室では、低酸素慢性期でcAMP-response element binding protein (CREB)が活性化することを報告している。野生型では、長期低酸素培養後でも乳がん幹細胞関連遺伝子の発現量が増加したが、CREBノックダウン細胞では、増加が見られなくなった。この結果から、CREBが低酸素慢性期における乳がん幹細胞維持に関与する可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
低酸素慢性期で乳がん幹細胞の維持に働く転写因子を複数同定する予定であった。しかし、候補として挙げた転写因子の内の一つであるCREBの乳がん幹細胞維持への関与を示唆する結果が得られたものの、他の転写因子候補については検討ができなかった。当初、MDA-MB-231を平面培養の状態で低酸素培養を行っていたが、実験系の再構築が必要となったことが理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
長期低酸素培養を行ったスフェロイドを免疫蛍光染色し、リン酸化CREB、NANOG、KLF4、SOX2、ALDHの発現量の低酸素培養による経時的変化を、CREBノックダウン細胞を用いた場合と比較する。また、乳がん幹細胞は、細胞外マトリックス成分や、丸底低接着プレートによる物理的な細胞間接着の促進が無い条件でも、スフェロイドを形成するという特性を持つ。長期低酸素培養を行ったスフェロイドから細胞を単離し、細胞外マトリックス成分非存在下で平底低接着プレートに播種し、スフェロイド形成数をCREBノックダウン細胞を用いた場合と比較する。これにより、低酸素慢性期においてCREBが乳がん幹細胞を維持するのかを検討する。さらに、NANOGとKLF4はHIF-2α、SOX2はSTAT3によってそれぞれ転写誘導されることが報告されていることから、HIF-2α及びSTAT3のノックダウン細胞を用いて、細胞外マトリックス成分存在下で作製したスフェロイドを長期低酸素処理し、乳がん関連遺伝子の発現量が減少するのかを検討する。HIF-2α及びSTAT3の乳がん幹細胞維持への関与が示唆された場合、CREBがHIF-2α及びSTAT3を介して乳がん関連遺伝子の発現量を増加させるのかを検討する。実験内容としては、細胞外マトリックス成分存在下で作製したスフェロイドを長期低酸素培養し、HIF-2α及びSTAT3の発現量をCREBノックダウン細胞を用いた場合と比較する。転写因子の同定後、研究計画に従って、低酸素慢性期で乳がん幹細胞維持に関与するシグナル経路の同定を行う。活性化するシグナル経路が見出された場合、そのシグナル経路が関与する転写因子の活性化状態を検討する。
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