Project/Area Number |
23K14681
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 51020:Cognitive and brain science-related
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
木村 新伍 福島県立医科大学, 医学部, 特任助教 (20939037)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 線条体 / オペラント学習 / 直接路 / 化学遺伝学 / 神経回路操作 |
Outline of Research at the Start |
線条体は聴覚弁別学習に関与しており、ラットを用いたレバー押し行動課題において、学習初期に前背外側線条体の活動が増加し、学習後期では後腹外側線条体の活動が増加することが示唆された。しかし、各領域においてどのような神経回路が学習に関与するかについては未解明であったため、本研究では線条体直接路に着目し、各領域における神経活動の時系列変化と学習の関連性について解析を行う。具体的には、各領域における直接路の選択的除去および化学遺伝学的手法による直接路の選択的抑制を行い、聴覚弁別学習への影響を評価する。また、各領域における直接路の投射部位を同定し、学習過程における機能的関連性を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
ラットの聴覚弁別課題(高い音が鳴ったら左レバー、低い音が鳴ったら右レバーが正解となり、餌報酬が与えられる)において、学習中期には前背外側線条体aDLSが活性化し、学習後期には後腹外側線条体pVLSが活性化することが示された。 学習の制御については、線条体内の直接路および間接路と呼ばれる神経回路が関与しており、脳の様々な領域と連絡することによって、学習行動を調節していることが知られている。その中でも直接路は、先行研究において、マウスの単一レバー押し課題の学習獲得に関与していることや、正解のレバーを選択するのに必要な時間と関連していることが示唆されており、aDLSやpVLS領域を介した学習獲得過程においても、直接路が中心的な役割を果たしている可能性が考えられる。 そこで、令和5年度は、化学遺伝学的手法を用いて、学習中期・後期に到達したラットのaDLSまたはpVLS領域内直接路を選択的に抑制し、聴覚弁別課題への影響を評価する実験を行った。 ラットの直接路選択的にglutamate-gated chloride channel(GluCL)を発現させ、その特異的リガンドであるイベルメクチンを各領域に投与した。GluCLはイベルメクチンと結合すると、細胞内にクロライドイオンを流入させ、神経細胞を持続的に抑制することが可能である。先行研究に基づき、レバー押し正答率が60%を超えた日を学習中期、80%を超えた日を学習後期と定義し、学習中期(または学習後期)の翌日の聴覚弁別課題実施前に、イベルメクチンを脳内に投与し、レバー押し正答率を記録した。 その結果、aDLS・pVLSともに、学習中期と学習後期にイベルメクチンを投与した直接路抑制群は、コントロール群と比較して、学習完了基準(2日間連続正答率85%以上)に到達するのが遅延することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学遺伝学的手法を用いた一過性の直接路の抑制実験については、aDLS・pVLS領域ともにデータ解析に必要な個体数が揃ったと考えられる。他にも各領域の直接路を慢性的に破壊したラットを用いた聴覚弁別課題も実施している。こちらについても個体数が揃いつつある。直接路の慢性的破壊実験については、直接路と他の神経回路(主に線条体間接路)の残存細胞数を算出し、直接路が選択的に破壊されていることを担保するための組織解析実験も行っており、必要な個体数を増やしている段階である。以上のことから、聴覚弁別課題のデータ取得とそれに関連する組織解析実験については、おおむね順調に進展していると考えられる。 aDLSおよびpVLSから投射する神経のコネクティビティ解析については、投与部位の神経細胞に感染後、神経細胞末端に移動し、シナプスを経由して隣接する神経細胞に感染するという特徴を持つウイルスベクター(AAV1-Creベクター)を、Cre組み換え酵素依存的にGFPを発現させるラットのaDLSに投与する実験を行った。その結果、淡蒼球外節や、黒質など、線条体の代表的な投射部位にGFPが発現することが示唆された。その他の投射部位については現在解析中である。 脳スライスを用いたex vivoカルシウムイメージングについては、顕微鏡や人口脳脊髄液の灌流機器など、測定用機材のセットアップを行っている。予備的な実験として、GFPを直接路に発現させたラットの脳スライスを用いて、GFP蛍光の検出および動画撮影を行った。現在の測定用機材でGFPの検出と動画撮影および撮影した動画の解析が可能であることが分かったので、今後はカルシウムイメージング用のGCaMPを直接路に選択的に発現させたラットの脳スライス用いて、神経活動計測を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
化学遺伝学的手法を用いた実験については、今後は正答率変化だけでなく、レバーを押すのにかかる時間の解析や、オープンフィールドテストの結果をまとめ、aDLS・pVLS領域における直接路の役割を詳細に解析するつもりである。また、直接路を抑制した状態において、一つ前の試行における結果(レバーを押して正解になったか、不正解になったか)が次の試行にどのように影響するか(前の試行と同じレバーを選ぶか、異なるレバーを選ぶか)、解析するつもりである。さらに、学習中期から学習後期に到達するのに必要な日数と、学習後期から学習完了基準に到達するのに必要な日数を解析し、直接路の学習時期に関連した機能を明らかにする予定である。その他にも、化学遺伝学で使用したGluCLとそのリガンドであるイベルメクチンが、直接路を抑制していることを確認するためにex vivoカルシウムイメージングを行う。具体的には直接路選択的にGluCLおよびGCaMPを発現させたラットの脳スライスを作製し、イベルメクチンを投与することによって神経活動が低下するかどうかを確認する。 aDLS・pVLS領域内の直接路を慢性的に破壊した際の聴覚弁別課題については、今後も個体数を増やし、上記の化学遺伝学実験と同様の解析を行う予定である。化学遺伝学による一過性の直接路抑制実験と、直接路を慢性的に破壊した実験の結果を比較し、2つの方法論によって得られたデータの整合性を評価する。 aDLS・pVLS領域内の直接路の神経活動計測や、他の大脳基底核領域との活動連関についてはex vivoにおけるカルシウムイメージングを用いて解析することを考えているが、マルチユニット電極と光ファイバーを用いた直接路特異的なin vivo神経活動計測法の実験系が構築されつつあるため、これを代替案として考えながら両方の実験を進めるつもりである。
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