Project/Area Number |
23K15174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 53020:Cardiology-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
寺本 了太 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (90735169)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 拡張型心筋症 |
Outline of Research at the Start |
拡張型心筋症における心筋の広範囲な線維化は同疾患に生じる致死性不整脈基質の主座であると考えられるが、単一臓器・個別分子を対象とした仮説駆動型の遺伝学的手法はその成因を明らかにすることは困難であった。そこで我々は遺伝子変異機能解析とシングルセルレベルでの心筋組織構成細胞の遺伝子発現プロファイルを組み合わせたオミックス研究を立案する。本研究課題において、悪性度の高いLMNA変異がもたらす転写活性異常とクロマチン制御不全の解明に基づいて心筋の成熟中に生じる線維化分子パスウェイを特定し、拡張型心筋症における新規創薬シーズの発見を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
我々は難治性疾患である拡張型心筋症において、心筋興奮伝導障害を伴う不可逆的な心筋障害の分子病態を解明するため本研究課題を立案した。本疾患は特にLamin A/C遺伝子(LMMA)の変異を原因とする場合、徐脈性不整脈を呈し、突然死を引き起こすことが知られている。そこで、我々はゼブラフィッシュを実験動物として用い、ヒトLMNAのゼブラフィッシュ相同遺伝子であるlmnaをCRISPR/Cas9技術を用いてノックアウト(KO)した。 KO体において、心拍数の低下、光学マッピング技術による房室結節における興奮伝導速度の低下を認め、本モデルの妥当性を確認した。次に、心筋組織のRNAシーケンスによりトランスクリプトーム解析を行い、細胞分裂・クロマチン分離に関わる分子パスウェイが強く抑制されていることを明らかにした。このような細胞機能恒常性に関連する遺伝子発現を集積したクラスター解析により、KO体の心臓では細胞死プロセスに関わり癌関連分子としても注目されるカゼインキナーゼ2(CK2)のサブユニットが極端に活性化されていることが判明した。 我々はLMNAがゲノム上のLMNA関連ドメインを介した核膜直下におけるクロマチンリモデリングの制御機能を備えていることから、KO体においては細胞恒常性を統御するシグナル系統に異常をきたしていると考えた。CK2が触媒するJAK-STATシグナルパスウェイはその有力な候補であり、これを選択的に阻害するSilmitasertibを用いた機能解析を行ったところ、心筋における電気生理活性が回復することを示した。 以上より、本研究課題ではLMNA変異に起因する拡張型心筋症モデルを作成し、その心臓トランスクリプトーム解析および光学マッピング機能解析により病態形成に深く関わる酵素機能異常を見出したことを報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に則り、拡張方心筋症モデル・ゼブラフィッシュにおいて、LMNAタンパク質ドメイン別機能解析を進めた。CRISPR/Cas9系により機能的に重要と考えられるドメインに対応するゲノム編集を行い、稚魚における心機能を解析した。LMNA頭部ドメイン、桿状ドメイン1A 、1B、2A、2B、および尾部のそれぞれのノックアウトモデルを用いた詳細な心機能解析、および光学マッピング法による興奮伝導速度を比較した結果、頭部ドメインノックアウトモデルにおいて有意に機能喪失が確認された。 従って我々は頭部ドメインノックアウトモデルを用い、心臓におけるシングルセル解析によって細胞種ごとに細胞運命を決定する分子発現、およびその発現の制御メカニズムを解析を試みた。 ゼブラフィッシュ成魚の心臓組織を細胞分離するプロトコールは確立されておらず、ライシスバッファーの種類、加温振盪条件、遠心分離条件等の検討に時間を要した。不明な点は先進的な研究を実施している海外研究機関と連携し、プロトコールの改良を図った。これにより、生物的活性を保ち、かつよく分離されたサンプルを得ることができ、良質なシングルセルRNAシーケンスライブラリーを作成することが可能となった。シーケンスの結果、一細胞あたりの検出遺伝子数913、リード数14.7万と良好なシーケンスクオリティを示した。 各細胞種のトランスクリプトームプロファイルとプロテオーム解析を統合し、野生種との発現量差解析から見出される標的分子における遺伝子発現とその制御状態を解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
心機能評価においては収縮と拡張の両フェーズが機能的に繰り返すことが重要である。 ゼブラフィッシュモデルにおいて拡張能評価はこれまで確立されていなかったが、我々は心拍動データにおける画像上の輝点(speckle)を追跡するスペックル・トラッキング技術を応用し、対象物の時間軸上での歪みを数値化(ストレイン率)する技術により定量化を可能とした。すでに約1000例のゼブラフィッシュ心拍動解析データを教師あり学習として機械学習させ、人工知能(AI)による映像データを起点としたハイスループット心機能自動解析システムが構築された(相関係数 0.82、中央絶対誤差 4.7%)。本システムを用いてLMNAドメイン別変異による心機能解析を深めていく。 シングルセルレベルでの心筋構成細胞の各トランスクリプトームプロファイルの解析を進める。並行して、変異体での各臓器・組織(心臓、肝臓、膵臓、筋)から得られたプロテオーム解析と層別解析を行うことで、LMNA変異が心臓のみならず全身臓器で様々な疾患表現型を来す分子生物学的機序を探る。 心筋線維化を制御し得る創薬シーズの特定には、ヒト心筋細胞での変異ラミナの挙動を検証し、線維化プロセスにおける細胞運命および細胞機能の制御に関わる分子を特定する必要がある。候補遺伝子変異部位を抽出する、1)ドメイン別機能解析、および2)変異体における心筋組織シングルセル分子挙動解析はこの最終段階に必須のものであり、本研究課題の遂行により心筋細胞におけるエネルギー代謝、細胞外マトリックスを包括する細胞間相互作用、および免疫細胞網等の心筋線維化分子病態に関わる分子パスウェイを発見し、拡張型心筋症における革新的な創薬シーズの発見を目指す。
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