Project/Area Number |
23K15260
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 53050:Dermatology-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大森 遼子 東北大学, 大学病院, 助教 (30965421)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 血管肉腫 / 血管新生因子 / PAI-1 / IL-23p19 / tube formation assay / MMP / 腫瘍随伴性マクロファージ |
Outline of Research at the Start |
プラスミノーゲン活性化阻害因子(PAI-1)は、がん細胞の浸潤や転移に関与する因子であり、近年PAI-1が腫瘍環境において免疫チェックポイントに与える影響が注目されている。PAI-1は血管内皮細胞の増殖を促進すると共にそのアポトーシスを阻害することが明らかにされつつあることから、血管肉腫においてPAI-1阻害が腫瘍増殖因子と関連する可能性があると仮説を立てた。本研究では、PAI-1の血管肉腫細胞ISO-HAS-Bに与える影響と内皮細胞の血管構築に与える影響についてマトリゲルを用いた3次元培養法で検証し、これまで不明であった皮膚血管肉腫の腫瘍成立、進行のメカニズムの解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、当初の目的通り、初めにin vitroで血管肉腫細胞株ISO-HAS-BをPAI-1で刺激し、血管新生因子であるVEGF-A, VEGF-B, VEGF-CおよびMMP-2、MMP-9、IL-23p19と、マクロファージ関連ケモカイン、Th17関連ケモカインの産生を検証した。その結果、PAI-1刺激によりmRNAで上昇が確認されていたIL-23p19、VEGF-C、CXCL5、CCL20の中で、IL-23p19のみがタンパクレベルでも産生が亢進されることを明らかにした。次に培養上清を用いてヒト皮膚血管微小内皮細胞を用いて、血管新生アッセイを行ったところ、血管新生はIL-23p19依存性に生じることが明らかとなった。これらの結果から、PAI-1は血管肉腫細胞からのIL-23p19の産生を介して腫瘍の血管新生を促進することが明らかになった。また、血管肉腫患者の6割以上でIL-23p19が腫瘍組織で発現していることが明らかとなり、PAI-1/ IL-23p19が血管肉腫の予後に関与しうることが示唆された。現在これら研究をさらに推進するため、次年度に向けて血管肉腫患者の血清の蓄積を行っている。また、これらの非臨床研究の成果をもとに、当該年度9月よりPAI-1阻害薬を用いた「皮膚血管肉腫治療に対するパクリタキセルとTM5614併用の安全性・有効性を検討する第II相試験」を医師主導治験として開始し、ヒト血管肉腫患者におけるPAI-1阻害が与える影響の解析の準備を進めている。また、当該年度にISO-HAS-BをSCIDマウスに移植する実験系の探索を開始した。以上、当該年には、予定していた非臨床研究部分をほぼ終了させることができ、次年度に当初の予定を超え、ヒト血管肉腫患者におけるPAI-1阻害の意義の検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、当初の目的通り、初めにin vitroで血管肉腫細胞株ISO-HAS-BをPAI-1で刺激し、血管新生因子であるVEGF-A, VEGF-B, VEGF-CおよびMMP-2、MMP-9、IL-23p19と、マクロファージ関連ケモカイン、Th17関連ケモカインの産生を検証し、それまでの研究で明らかにしていたPAI-1刺激により上昇するmRNAの中でIL-23p19がタンパクレベルでも産生が亢進されることを明らかにした。また、ISO-HAS-BをPAI-1刺激後に培養上清を用いてヒト皮膚血管微小内皮細胞を用いて、血管新生アッセイを行い、血管新生はIL-23p19依存性に生じることを明らかにした。また、血管肉腫患者の6割以上でIL-23p19が腫瘍組織で発現していることが明らかとなり、PAI-1/ IL-23p19が血管肉腫の予後に関与しうることが示唆された。また、これらの非臨床研究の成果をもとに、当該年度9月よりPAI-1阻害薬を用いた「皮膚血管肉腫治療に対するパクリタキセルとTM5614併用の安全性・有効性を検討する第II相試験」を医師主導治験として開始した。上記の成果は、欧州研究皮膚科学会雑誌であるExperimental Dermatology 2024に掲載している。現在、上記医師主導臨床研究におけるヒト血管肉腫患者におけるPAI-1阻害が与える影響の解析を、新たな共同研究者とともに、Mass spectometryを用いて準備を進めている。また、当該年度にISO-HAS-BをSCIDマウスに移植する実験系の探索を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の当該研究により、1)血管肉腫細胞株ISO-HAS-BのPAI-1刺激により、血管新生因子としてIL-23p19が上昇すること、2)血管肉腫由来のIL-23p19はヒト皮膚血管微小内皮細胞によるtube formationを亢進すること、3)血管肉腫患者腫瘍組織において前述のIL-23p19の発現が約6割の患者で見られ、PAI-1の発現に相関すること、が示された。今後は、さらに臨床検体を用いて、IL-23p19の発現が疾患の予後に関与しうるかを、mRNAで上昇を認めたCXCL5、VEGF-Cとともに後ろ向きに検討する。また、前述の医師主導臨床研究の探索的研究としての血清学的研究のターゲットをPAI-1に加えてIL-23p19やCXCL5、VEGF-Cとともに、LC-Mass spectrometry を用いてPAI-1阻害薬の血管肉腫患者に与える影響を網羅的に検証する予定である。Mass spectrometryから抽出された分子で血管新生因子を中心に過去に蓄積した血清と合わせて解析を進める予定である。また、同時に上記分子を免疫組織染色により、過去の血管肉腫患者の組織サンプルを用いて検証し、これらの発現が血管肉腫の生命予後に関与するか、統計学的に解析する。以上の項目を総合的に解析し、当初の目的であるPAI-1により誘導される腫瘍進行および腫瘍性血管新生への影響因子を解明することにより、血管肉腫に対する新規治療法の開発に将来的につなげる分子の探索を次年度の目標とする。
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