新規シングルセルeQTL解析手法に基づく自己免疫疾患リスク多型の機能解明
Project/Area Number |
23K15361
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 54020:Connective tissue disease and allergy-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中野 正博 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 学振特別研究員PD (20907951)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
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Keywords | シングルセル解析 / eQTL解析 / 自己免疫疾患 |
Outline of Research at the Start |
発現量的形質遺伝子座 (eQTL) 解析は、大規模ゲノム研究で同定された疾患リスク多型の機能を解明するうえで重要な解析手段であり、リスク多型が特定の原因細胞において発現量を制御している原因遺伝子を探索することが可能となる。しかし従来の研究では、既知の表面マーカーのみに頼って曖昧な細胞集団を定義していたため 、リスク多型の多くで原因細胞と原因遺伝子が同定できていない。 本研究では、シングルセル解析を自己免疫疾患の患者末梢血に応用し、最先端のシングルセル解析技術と組み合わせることで、従来の研究では達成できなかった新たなシングルセルeQTL解析手法を確立する。
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Outline of Annual Research Achievements |
発現量的形質遺伝子座 (expression quantitative trait loci; eQTL) 解析は、大規模ゲノム研究で同定された疾患リスク多型の機能を解明するうえで重要な解析手段であり、リスク多型が特定の原因細胞において発現量を制御している原因遺伝子を探索することが可能となる。しかし従来の研究では、既知の表面マーカーのみに頼って曖昧な細胞集団を定義していたため、リスク多型の多くで原因細胞と原因遺伝子が同定できていない。本研究は、従来の手法とは異なる新たなシングルセルeQTL解析手法を確立することで、自己免疫疾患の原因細胞と原因遺伝子を多数同定し、自己免疫疾患の新規治療標的の開発に繋がる知見の獲得を目指すことを目的とする。 現在、自己免疫疾患の代表的疾患である関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)患者各50例の末梢血を新たに収集し、高精度シングルセル実験を実施、データ収集中である。 上記と並行して、今年度はシングルセルデータの特性を活かした新たなeQTL解析モデルの開発にも取り組んだ。近年報告されたポアソン混合回帰モデルを用いた単一細胞レベルのeQTL解析手法とk近傍法を用いた細胞集約手法(MetaCell)を組み合わせることで、従来のpseudobulk-eQTL解析に比して高精度かつ検出力に優れたシングルセルeQTL解析手法を確立することに成功した。 今後は自己免疫疾患の大規模ゲノムデータとの統合解析を行うことで、各疾患の原因細胞と原因遺伝子を網羅的に同定することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己免疫疾患患者末梢血サンプルの収集自体は当初の予定よりやや遅れたものの、現在高精度シングルセル実験を実施、データ収集中である。 これと並行して、シングルセルデータの特性を活かした新たなeQTL解析モデルの開発にも取り組んだ。具体的には、近年報告されたポアソン混合回帰モデルを用いた単一細胞レベルのeQTL解析手法とk近傍法を用いた細胞集約手法(MetaCell)を組み合わせることで、シングルセルデータの最大の弱点である「1細胞あたりの情報量の少なさ」を克服し、高精度かつ検出力に優れたシングルセルeQTL解析手法を確立することに成功した。従来のシングルセルデータでは、遺伝子の発現量をクラスターや細胞種ごとに集約して遺伝子型との関連解析を行うpseudobulk-eQTL解析が主流となっているが、今回開発したシングルセルeQTL解析手法は、pseudobulk-eQTL解析よりもeQTLシグナルの検出力に優れることを確認した。 さらに本手法をSLE患者の大規模公共シングルセルデータに適用することで、自己免疫疾患リスク多型の有する細胞種特異的かつ疾患特異的なeQTL効果の存在を確認するとともに、各細胞種に存在する共通した遺伝子プログラムが、同一の自己免疫疾患リスク多型と遺伝子に対して同様のeQTL増強効果を有している可能性があることを示すことができた。 これらの成果は自己免疫疾患の原因細胞と原因遺伝子を同定するための重要なステップであり、本課題の進捗はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の公共シングルセルデータは数年前の古い技術で収集されたものであり、1細胞あたりの情報が極めて少ないため、自己免疫疾患の病原性細胞を精密に同定するためにより充実したシングルセルデータを構築する必要がある。現在、RAとSLE患者の末梢血を新たに収集し、単一細胞レベルで遺伝子発現と細胞表面マーカー蛋白を同時に評価するシングルセル解析 (Cellular Indexing of Transcriptomes and Epitopes by Sequencing; CITE-seq) を実施中である。正準相関分析 (canonical correlation analysis: CCA) を用いて遺伝子と表面マーカー蛋白の発現情報を統合し、ここ に高性能ノイズ補正アルゴリズムを適用してシングルセル多次元データを効率的に次元圧縮することで、さらに高精度な細胞集団の定義が可能となる。 本データに今年度開発した新たなシングルセルeQTL解析モデルを応用し、さらにバイオバンクジャパンや理化学研究所が独自に保有する各疾患の大規模ゲノムデータベースから同定されたリスク多型情報との統合解析 (colocalization解析) を行うことで、自己免疫疾患の原因細胞と原因遺伝子を網羅的かつ高精度に同定することが可能となる。さらに、複数の自己免疫疾患で共通して観察されるeQTL効果や疾患特異的に観察されるeQTL効果の評価も予定している。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)