Project/Area Number |
23K15576
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 55050:Anesthesiology-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白木 敦子 京都大学, 医学研究科, 助教 (80964733)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 精神依存 / κオピオイド受容体 / ドパミン / オピオイド |
Outline of Research at the Start |
がんサバイバーは、時に癌性疼痛や治療の合併症として生じた慢性疼痛と生涯に渡り共存していく必要がある。がんサバイバーの疼痛治療において中心的な役割を担うオピオイドは、最も強力な鎮痛薬である一方で、不適切な使用により精神依存を形成するという問題がある。 古典的には、オピオイドの投与により、脳内報酬系のドパミンの遊離が促進され、精神依存を形成すると想定されてきた。しかし、長期のオピオイド投与がドパミン受容体の感受性やドパミン分泌にどのように影響しているかわかっていない。本研究では、細胞レベルにおいてオピオイド投与がドパミン分泌およびドパミン受容体の動態にどのような変化をもたらすかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
オピオイドは癌性疼痛をはじめとした慢性疼痛において中心的役割を担っているが、長期投与により精神依存を形成しうる。精神依存はオピオイドに対する抑えがたい欲求のために違法な行為をしてしまうなど、重大な問題行動をきたす。精神依存形成は、オピオイドの投与により脳内報酬系のドパミンの遊離が促進されることに起因すると考えられているが、細胞レベルでどのような変化が起きているのかは明らかにされていない。本研究ではヒト神経芽細胞腫(SH-SY5Y細胞)を実験系として、精神依存形成をもたらす細胞レベルでの分子生物学的機序の解明を目的とする。 本年度は、オピオイド刺激に伴うドパミン受容体の発現量およびドパミン分泌量の変化の検証に着手した。まず未処理のSH-SY5Y細胞を用いてドパミン受容体をウェスタンブロッティング法で検出する条件を決定した。次にSH-SY5Y細胞を全トランスレチノイン酸により分化誘導し、ドパミン分泌能を有する神経様細胞とした実験系の確立に着手した。ドパミン分泌量の変化について、研究計画立案時にはウェスタンブロッティング法を用いて培養上清中のドパミン量を測定する予定としていたが、ELISA法を用いることに計画を変更し、測定の条件検討を行った。 また、脳内では内因性オピオイドであるダイノルフィンがκオピオイド受容体を介してドパミンの遊離を抑制し、精神依存形成に拮抗すると考えられているため、ダイノルフィンがドパミン分泌に及ぼす影響を検討するための実験系として、SH-SY5Y細胞にCRISPR/Cas9システムを導入しκオピオイド受容体を欠損した株の樹立に着手した。並行してSH-SY5Y細胞においてダイノルフィン刺激が細胞内シグナルを活性化するか検証したところ、ダイノルフィン刺激によりMAPK経路のひとつであるERK経路の活性化を示すERKのリン酸化が誘導されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まずオピオイド刺激によるSH-SY5Y細胞のドパミン受容体の発現量の変化をウェスタンブロッティング法で検出しようと試みたが、そもそも未処理の状態でSH-SY5Y細胞に内在性に発現するドパミン受容体を検出可能な市販の抗体の選出および検出の条件検討に難渋し想定よりも時間を要した。このため、オピオイド刺激による発現量の変化の検証には至らず、当初同時に行う予定としていたリアルタイムPCR法での解析にも至らなかった。また、研究計画立案時には分化誘導したSH-SY5Y細胞から培養上清中に分泌されるドパミン量の検出にウェスタンブロッティング法を用いる予定としていたが、分泌量がウェスタンブロッティング法で検出するには非常に微量であること、細胞培養上清の濃縮方法に苦慮したことから、ELISA法を用いることに変更した。このため、ELISA法によるドパミン分泌量測定のための条件検討に時間を要した。 また、SH-SY5Y細胞にレンチウイルスベクターを用いてCRISPR/Cas9システムを導入し、κオピオイド受容体欠損株の作出を試みた。限界希釈法により複数の単一細胞クローンを単離し、各クローンのゲノムのシークエンス解析を行った。しかし、いずれのクローンにおいてもκオピオイド受容体が欠損するような遺伝子編集が認められなかった。ただし、標的とした配列において遺伝子編集自体は確認できたため、まずは単離する細胞クローンの数を増やすことでκオピオイド受容体を欠損するような遺伝子編集を認める細胞クローンが得られる確率は高くなると考えられた。このためκオピオイド受容体欠損株の作出を再度試みることとなり、これに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はオピオイド刺激に伴うドパミン受容体発現量・ドパミン分泌量の変化の検証を予定していたが、検出や測定の条件検討に時間を要した。また、翌年度に予定していたオピオイド受容体のサブタイプがドパミン受容体・ドパミン分泌に及ぼす影響の検証の準備としてダイノルフィンが作用するκオピオイド受容体を欠損した株の樹立を並行していたが、細胞株の樹立に至らず、再試行を要した。 今後は、当初本年度に予定していたオピオイド刺激によるドパミン受容体の発現量の変化の検証をウェスタンブロッティング法とリアルタイムPCR法を用いて行う。また、SH-SY5Y細胞から培養上清中に分泌されるドパミン量をELISA法で測定するための条件を最終決定し、オピオイド刺激による影響を検証する。 並行してダイノルフィンがκオピオイド受容体を介してドパミン分泌に及ぼす影響を検討するための実験系として、SH-SY5Y細胞にCRISPR/Cas9システムを導入しκオピオイド受容体を欠損した株の樹立を再度試行中する。今回は単離する細胞クローンの数を増やして、期待する遺伝子編集を認める細胞クローンが得られる確率を高める予定である。また、ゲノムのシークエンス解析結果で期待する遺伝子編集を認めたら、ウェスタンブロッティング法によりκオピオイド受容体がタンパク質として発現しなくなっていることを確認する。ただし、SH-SY5Y細胞に内在性に発現するκオピオイド受容体は発現量が非常に少ない可能性が想定されるため、κオピオイド受容体を過剰発現させた株も新たに作出し、これをκオピオイド受容体が確実に検出される陽性コントロールとして設定出来るように準備する方針とする。
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