Project/Area Number |
23K15619
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 55060:Emergency medicine-related
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Research Institution | Gunma University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
土井 慶子 (三枝慶子) 群馬医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (60881183)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Discontinued (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 急性腎障害 / バイオマーカー / L-FABP / NGAL / 尿細管障害 / 蛋白再吸収障害 / 糸球体濾過障害 |
Outline of Research at the Start |
急性腎障害(AKI)診断の尿中バイオマーカーとして、本邦ではL-FABPとNGALが保険収載されている。これらは傷害された尿細管上皮細胞より産生・放出されると考えられていたが、近年、尿中L-FABPおよびNGALは血液由来であり、糸球体を通過した後、近位尿細管の蛋白再吸収障害により尿中に排泄されることが示されるようになってきた。本研究では「再吸収障害型AKIバイオマーカー」という概念を提唱し、AKI尿中バイオマーカーが血液濃度に依存して上昇するという仮説を検証する。また糸球体濾過障害を検出するツールを開発し、AKI発症時に糸球体を通過できる分子サイズを推定する。
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Outline of Annual Research Achievements |
急性腎障害(Acute Kidney Injury: AKI)は発症頻度が高く生命予後を左右する病態であり、早期診断と早期介入のため、尿中バイオマーカー測定が重要な役割をはたしている。本邦で保険収載されている尿中AKIマーカーにL-FABP(liver-type fatty acid binding protein)とNGAL(neutrophil gelatinase-associated lipocalin)がある。これらは傷害された尿細管上皮細胞から放出されると考えられていたが、申請者らは、尿中L-FABPが肝臓由来(血液由来)であり、近位尿細管障害により蛋白再吸収能が低下すると尿中L-FABPが上昇することを明らかにしてきた。また虚血再灌流傷害時に上昇する尿中NGALも腎由来に加え肝臓由来も含まれることが報告されている。そこで本研究では、AKIの病態毎に尿中L-FABPおよびNGALがどのような機序で上昇するか検証した。 虚血再灌流によるAKIモデルマウスでは、血中L-FABPの上昇に対し尿中L-FABPの上昇率が予想より大幅に小さかった。また、蛍光ラベルしたリコンビナントL-FABP蛋白を静注することにより、糸球体を通過するL-FABP量が減少することが確認できた。以上より、虚血再灌流では、近位尿細管上皮細胞の蛋白再吸収よりも、糸球体濾過が優位に障害されることがわかった。一方で、尿中NGALは虚血再灌流によって著しく増加した。肝臓、腎臓のmRNAが上昇したこと、血中NGALが200倍以上上昇したことより、既報と同様に、尿中NGALは肝臓および腎臓由来であると推察された。尿中L-FABPとNGALは共にAKIマーカーであるが、両者の上昇機序が異なるため、2つのマーカーを組み合わせることで、AKIによる尿細管障害と糸球体障害の評価に役立てることができると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30分間の片側虚血再灌流+片側腎摘出によるAKIモデルマウスを作成した。一方、AAV(アデノ随伴ウィルス)により肝臓特異的にジフテリア毒素受容体を発現するマウスにジフテリア毒素を投与することで肝障害モデルを作成した。これらの組み合わせのモデル(AKIのみ、AKI+肝障害)を作成し、血中および尿中のL-FABP、NGALレベルと、肝臓と腎臓のmRNAレベルの変動を検証した。 虚血再灌流によるAKIのみでは、尿中L-FABPの上昇は見られなかった一方、尿中のNGALは数百倍に上昇した。AKI+肝障害モデルでは、尿中L-FABPがわずかに上昇したのに対して、尿中NGALは数千倍に上昇した。L-FABP mRNAはいずれのモデルでも腎臓での発現増加は見られなかった。一方、NGAL mRNAは、腎臓・肝臓で共に大幅に増加し、血中濃度も10倍以上上昇した。リコンビナントL-FABPを静注する実験で糸球体を通過するL-FABPが減少したことと、分子サイズがL-FABP (14 kDa) < NGAL (21 kDa)を合わせて考えると、尿中NGALが増加する要因は、腎臓での発現増加と肝臓での発現増加(血中濃度の上昇)の両方が関与するものと推察された。 これらの結果から、虚血を伴うAKIにおいては、尿細管障害よりも糸球体障害の影響が大きいこと、尿中NGALは尿細管障害が軽微でも上昇すること、尿中L-FABPの解釈には尿細管障害に加え糸球体障害のレベルも考慮する必要があることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の予想に反して、虚血再灌流傷害では近位尿細管上皮細胞の蛋白再吸収障害はほとんど見られず、糸球体濾過障害が主要な機能異常であることがわかった。今後、虚血再灌流の病態生理と2つのAKI尿中バイオマーカーの挙動の大きな差異のメカニズムをさらに掘り下げ、統計処理ができるよう1群あたりn = 6 を作成し、解析する。加えて、虚血時間の長短による腎障害の出現の程度と、虚血後の時間経過による腎障害の程度と回復の様子を解析する。 そのほか、申請時の予定にある、アセトアミノフェン投与によるAKIとジフテリア毒素による近位尿細管特異的障害モデルにおいて、糸球体濾過障害と蛋白再吸収障害の観点から、尿中バイオマーカーの上昇機序を解析する。 さらに、糸球体濾過障害を検出するツールとして、分子サイズの異なるタンデム蛋白を用いる。リンカー蛋白を用いてL-FABPおよびNGALをタンデムに連結し、分子サイズの異なる(L-FABP or NGAL)1,2,3,4を作製する。これらのタンデム蛋白は分子サイズが大きくなるにしたがって糸球体を通過しにくくなると予想される。糸球体のサイズバリアは約40kDaとされているが、正確なサイズの境界は未知であるため、まず正常糸球体を通過できるサイズ境界を明らかにし、AKI発症時に糸球体を通過できる分子サイズに変化があるか検証する。
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