Project/Area Number |
23K16725
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 59020:Sports sciences-related
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
室伏 由佳 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (60740529)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | アンチ・ドーピング規程 / アンチ・ドーピング / ドーピング / アンチ・ドーピング教育 / 禁止物質 / サプリメント |
Outline of Research at the Start |
日本のアスリートは、海外アスリートと比較してドーピング禁止物質を意図的に用いるような違反は極めて少ない。一方、サプリメント等、栄養補助食品へのドーピング禁止物質の混入 (汚染)による違反が大学生年代も含め相次いでいる。栄養補助食品は法律上、全含有成分の表記の義務はない。このように、違反のリスクがあるにもかかわらずサプリメントを使用する意志や信念にはどのような背景があるのだろうか。本研究は、アスリートのサプリメント使用によるドーピング違反リスクの認識、サプリメントに対する信念、使用意思の決定に及ぼす影響を明らかにし、ドーピング違反を予防するためのガイドラインの策定、教育プログラムの開発を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究は、アンチ・ドーピング規則違反に陥る可能性のリスク認識がアスリートのサプリメント使用決定に及ぼす影響を明らかにした。具体的には、サプリメント使用の再考及びパフォーマンス向上効果を期待する信念(サプリメントに対する信念)が媒介要因として機能するかを検証した。これらの媒介要因が、アスリートがサプリメントを使用しない選択に重要な役割を果たすことが示された。 研究1では、逆翻訳法を用いスポーツサプリメント信念尺度の日本語版(SSBS-J)を開発した。SSBS-Jは高い信頼性を持ち、原版尺度と同様の単一構造の妥当性が確認された。研究2では、大学生アスリートを対象にサプリメント使用に伴う規則違反のリスク認識、サプリメント使用の再考、及びSSBS-Jに関する調査を実施した。その結果、規則違反リスクの認識が高いアスリートはサプリメント使用を再考し、それによりサプリメントに対する信念が低減され、サプリメント使用を控える行動が促されることが確認された。この結果は、アスリートの規則違反リスク認識を強化し、サプリメント使用の再考を促すことでパフォーマンス向上効果を過度に期待する使用を抑制し、結果的に規則違反リスク回避につながる可能性を示している。この知見は教育プログラム設計において、不用意なサプリメント使用の回避とアンチ・ドーピング規則の遵守を促進するための重要な戦略となる。 その他の研究として、教育受講方式がアンチ・ドーピング知識の定着に及ぼす影響をランダム化比較試験で検証した。また、大学生アスリートを対象にドーピング検査に対するアンチ・ドーピング対策の実態についてインタビュー調査を行った。更に、大学生アスリートにおける他者提供の飲食物及び薬の共有状況の実態把握調査を行った。得られた知見は国内学会で発表した。更に英文論文としてまとめ、学術雑誌への投稿を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、研究1でアスリートのサプリメント使用に関するアンチ・ドーピング規則違反リスクの認識、信念、意思決定要因を把握することを目指していた。研究2としては、サプリメントによるドーピング違反を予防するための教育実施方法を検討し、教育映像等を含む教材の開発を行い、開発した教材を用いた教育効果の検証とガイドラインの策定を目指すことであった。 まず、研究1の目的を達成するために、日本語版スポーツサプリメント信念尺度(SSBS-J)を開発し、その信頼性と妥当性を確認した。この尺度を使用して実施した調査により、アスリートのサプリメント使用に関する意思決定プロセスを詳細に分析し、原著論文に掲載されるなど国際的な認知を獲得した。得られたデータからは、サプリメント使用の再考及びパフォーマンス向上効果を期待する信念がアスリートの行動にどのように影響するかを明らかにし、これらの媒介要因がサプリメント使用を控える選択にどのように寄与するかを示すことができた。この知見はアンチ・ドーピング教育プログラムの設計に直接的な影響を与え、教育実施方法の開発や教材の開発にも生かされることが期待される。 これらの進展は当初の計画以上の成果であり、科研費の助成を受けて計画した活動が予定よりも早く、かつ広範な影響を与える結果に結びついた。このため、達成度を「当初の計画以上に進展している」と評価する。この成果は今後の研究方向性や教育プログラムにおいても重要な基盤となり、さらなる研究の発展に寄与することが考えられる。これらの進捗により、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究で、日本語版サプリメント信念尺度(SSBS-J)を開発し、大学生アスリートのサプリメント使用時のリスク認識、信念、及び禁止物質の確認行動に関する教育効果が限定的であることを明らかにした。これに基づき、次年度の研究計画では新たな視点を導入し、特に道徳的離脱という心理的特性に焦点を当てる。道徳的離脱は、個人が自己の行動を外的要因や他者の責任に帰属させることで、自己の道徳基準と矛盾する行為を正当化し、罪悪感や羞恥心を抱くことなく禁止された行為を許容する心理的メカニズムである。この特性の理解は、アスリートの道徳的離脱プロセスやドーピング行為への抵抗、またはその促進に関する教育的アプローチの開発に不可欠である。 そのため、研究2年目では、日本語版ドーピングにおける道徳的離脱尺度を作成し、この尺度を用いて道徳的離脱がドーピング行動に及ぼす影響を探る。具体的には、パフォーマンス向上を目的とした禁止物質・方法の使用、及び医療目的であるが未承認でこれらが使用されるケースを対象に、両ドーピングに対する道徳的離脱の影響を分析する。さらに、これらの両ドーピング形態における道徳的ジレンマに対抗し得る心理的特性として、Grit(情熱と粘り強さ)の媒介効果を解明する計画である。Gritは長期的な目標への情熱と粘り強さを持続させる個人の傾向として定義され、挫折や退屈を乗り越えながら目標達成に向けた努力を継続する能力として重要である。この特性が道徳的離脱と両ドーピング形態との関連をどのように調節するかの理解は、効果的な教育プログラムの開発に寄与する可能性がある。得られた知見は、ドーピング予防策の開発に直接的な応用が可能であり、教育プログラムの設計に貢献することが期待される。さらに、国内外の学術集会や学術誌への投稿を通じて、これらの研究成果を広く公表し、国際的な研究コミュニティとの知識共有を図る。
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