Project/Area Number |
23K16837
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 60010:Theory of informatics-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
清水 伸高 東京工業大学, 工学院, 助教 (10910127)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2027: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 平均時計算量 / 困難性の増幅 / 埋め込みクリーク問題 / エクスパンダー / 計算量下界 |
Outline of Research at the Start |
ランダムな入力に対して問題がどれだけ効率的に解けるかを解析する枠組みを平均時計算量という. 平均時計算量は暗号学的プリミティブの構成やアルゴリズムの実用性の解析という重要な応用を持ち, 現在も活発に研究されている. 例えば1%の割合の入力上で問題を解くアルゴリズムを使って99%の割合の入力上でその問題を解けるかどうかを考える. このような問いに対して, 本研究は離散構造のエクスパンダー性という観点から解析する.
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Outline of Annual Research Achievements |
エクスパンダーグラフは疎であり, かつ強い連結性を持つという互いに相反する性質を兼ね備えた不思議なグラフである. 理論計算機科学ではグラフのエクスパンダー性を利用してPCP定理や誤り訂正符号といった重要な成果を得ている. 令和5年度はエクスパンダーグラフに基づいて平均時計算量理論における困難性の増幅と呼ばれる手法に関する成果が理論計算機科学のトップ国際会議STOC (Synmposium on Theory of Computing) に論文が採択された. また, 高次元エクスパンダーと呼ばれる近年の理論計算機科学において重要な役割を果たす単体複体の理論とその誤り訂正符号における応用を純粋数学の研究者らに広く紹介した. 平均時計算量とは, 問題の計算複雑性を平均的(ランダム)な入力に対するアルゴリズムの挙動によって評価する計算量の枠組みであり, 最悪時計算量 (最悪な入力上での計算量) よりも実用に即した枠組みであるばかりでなく暗号プリミティブの計算量的安全性を議論するための重要な土台にもなっている. 困難性の増幅とは, 平均時計算量の意味で「少しだけ」困難な問題を, 別の「非常に」困難な問題に変換する手法である. この変換はしばし元の問題が人工的な問題に変換されてしまうため, 実用上現れる自然な問題に対しては適用しにくい. 本成果は, クエリを1回だけ行う帰着を考え, その帰着から誘導される二部グラフがエクスパンダー性を持つならば, その帰着に基づいて得られる別の問題はその困難性が増幅されることを示した. これに基づいて行列積, オンライン行列ベクトル積問題, 三角形のパリティ数え上げ, 埋め込みクリーク問題に対して新たな困難性の増幅の結果を与えた. 特に埋め込みクリーク問題に対しては初の困難性増幅を与えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実績は主に二つに大別される: 平均時計算量理論における困難性増幅の成果と, 理論計算機科学で近年重要視されている高次元エクスパンダーの概念を国内の幅広い分野の研究者に紹介したことである. 1. 困難性増幅の成果は理論計算機科学において最もレベルの高い国際会議Symposium on Theoery of Computingに採択されただけでなく, 国外の多くの研究者の注目を集め, 海外での(オンラインでの)招待講演も行った. 2. 高次元エクスパンダーに関しては誤り訂正符号への応用を交えて国内の複数のシンポジウムで発表を行った. これらを鑑みて, 本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平均時計算量に関する今年度の成果は国内外で高い評価を受けており, 最高峰の国際会議に論文が採択されている. また, この論文の後続研究として新たに書いた論文もまた同様に令和6年度のSymposium on Theory of Computingに採択が決定しており, この論文に関しても国外からの招待講演の依頼が2件受けている. 今後もこの枠組みに基づく計算量下界の理論をさらに加速させていきたい. また, 高次元エクスパンダーは幾何学的群論や組合せ論といった純粋数学の分野の手法を使って構成されるものであった. 本研究課題の一環としてエクスパンダー性を起点として国内の純粋数学と理論計算機科学の繋がりが強固になれば良いと思っている. こちらに関しては今年度は単に理論をサーベイして伝えることに終始したが, 誤り訂正符号やPCP定理などに関する応用を模索して新たな研究に繋げたいと考えている.
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