戦略外交と地域紛争の往還に関する研究:アブラハム合意後のパレスチナ問題を事例に
Project/Area Number |
23K17096
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 啓之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任准教授 (50792488)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | パレスチナ / イスラエル / 中東 / 戦略外交 / 地域紛争 / パレスチナ問題 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、紛争当事国による戦略的外交に着目し、相手方陣営の一部国家との同盟関係がいかにして構築されるのかを、その影響を含めて明らかにするものである。 イスラエルとアラブ四カ国(UAE、バハレーン、スーダン、モロッコ)は、2020年に関係正常化を宣言した。パレスチナ紛争がたびたび激化したにも拘わらず、経済や安全保障分野での協定がその後も続いている。本研究では、既存の同盟関係や予防外交に関する学術的成果を踏まえた上で、紛争当事国が相手方陣営の一部と同盟を結ぶ過程とその効果を、総合的に明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
第一年度には、フィールド調査の実施、論文の執筆、研究成果の発信において多くの成果があった。 2023年9月にイスラエルおよびパレスチナでのフィールド調査を実施した。イスラエルとパレスチナ双方の現地研究者から本研究課題に対するアドバイスを受けるとともに、研究動向と共同研究の可能性について協議した。また、現地在住の実務家や研究者、NGO関係者と情報交換を行い、特に西岸地区情勢の緊張について意見を交わした。さらに現地書店では、アラビア語およびヘブライ語でコロナ禍後に刊行された資料を入手し、内容の参照と分析を進めている。 また、一般刊行論文として、『外交』、『Synodos』、『UP』、『JIME Center-IEEJ 中東動向分析』、『世界』などに寄稿し、特に2023年10月以降に深刻な事態に陥ったガザ情勢について、研究成果の発信に努めた。ガザ情勢の緊迫化は、本研究が課題として掲げた「アブラハム合意」後の情勢を分析することで、より良く理解されるとの認識を深めている。また、ラシード・ハーリディー著『パレスチナ戦争:入植者植民地主義と抵抗の百年史』を山本健介氏、金城美幸氏と共訳し、出版した。 他に、研究成果の発信では、緊急人道支援学会での報告を行ったほか、日本記者クラブでの会見を含めて社会的な研究成果の発信に努めた。また、NGOや研究機関が主催する情勢分析で報告を行い、自身の研究の成果の社会還元を心がけた。 以上のような成果があったものの、情勢の不安定化によって調査スケジュールの変更と現地研究者との調整の難航が生じている。したがって、オンライン書店を通しての現地資料の収集と整理に年度の後半では注力せざるを得なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年10月以降の現地情勢の緊迫化による影響は不可避的にあるものの、夏期調査の成果を踏まえて概ね順調に研究は進展している。 大きな変更として、当初予定していた冬期のフィールド調査は断念せざるを得なかった。航空便のたび重なる混乱があり、戦闘の展開も不透明であったことから、計画的な調査ができないことが明らかだったためである。 これに替わるものとして、文献資料をインターネット書店で購入し、また夏期の調査で得た資料の整理と分析を前倒しで進めている。特にアラブ諸国の外交官による書籍の分析は、本研究が分析対象とする2020年以降のイスラエルとアラブ諸国の関係に関して、示唆的な内容を多く含んでいることが明らかになった。また、現地研究者から得たアドバイスをもとに、すでに入手済みの資料を改めて検討する作業も進めている。 また、本研究課題が着目した2020年の関係正常化によって構築されたイスラエルと一部のアラブ諸国の関係は、後退こそ見せていないものの新たな進展を見せる状態にはなく、この点で分析視座のさらなる精緻化が必要であるとの認識に至った。特にサウジアラビアとイスラエルの関係正常化に向けた動きが年度の前半では注目されたが、後半ではこのサウジアラビアが中東諸国のまとめ役として振る舞う様子も観察された。 現在の情勢に関連して様々に発信される情報を収集し、本研究の分析視座を改めて精緻化する作業に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度は、文献資料の分析を進めつつ、オンラインを活用した現地研究者との意見交換を続けるとともに、情勢が許せば現地調査を実施する方針である。 特にオマーンやサウジアラビアを典型例として、イスラエルとの暗黙の関係を保っている国家の安全保障観や対外政策の推移を整理し分析を行うことで、現在は一見すると動揺しているイスラエルと一部のアラブ諸国の関係が、いかに発展してきたのかを明らかにしたい。特にガザ情勢の緊迫化のなかで、UAEやバハレーン、モロッコ、スーダンといった2020年から新たにイスラエルと関係正常化に踏み込んだ各国はイスラエルとの断交に乗り出さず、特にUAEのようにイスラエルの政治家による同国訪問を公に受けいれる姿勢を続けている。アメリカのトランプ前政権による強力な働きかけがあったことは事実だが、それでもなお、現在に至るまで一部のアラブ諸国とイスラエルが関係を取り結んでいる背景を、文書資料の分析とフィールド調査を軸にして引き続き検討していきたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(10 results)