コロナ禍における東北民俗行事の情報保存活動に関する研究
Project/Area Number |
23K17166
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 90020:Library and information science, humanistic and social informatics-related
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Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
松田 俊介 東北芸術工科大学, 芸術学部, 講師 (60548246)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 民俗行事 / 文化保存 / 情報活用 / コロナ禍 |
Outline of Research at the Start |
本申請研究は、東北6県に見られるコロナ禍をめぐる民俗行事の「継承の危機」に対処していくために、民俗行事の情報発信の事例を対象に、住民主体の民俗行事の情報化の手法をメタマニュアル化し、伝統維持の効果的な情報保存方法を検討していくものである。そのさい、①東北各県ごとに抽出した(指定文化財中心の)民俗行事の情報化の現況調査を行ったうえで、②顕著な活動が行われてきた重点的対象(上山市の加勢鳥行事や青森市のねぶた祭り等)については、フィールドワーク調査を実施し、住民主体の民俗行事情報保存活動の質的分析、③民俗技術の情報保存の実験民俗学的検証といった方法から明らかにしていく。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、コロナ禍をめぐる民俗行事の「継承の危機」に対処していくために、東北の民俗行事の情報発信の事例を対象に、住民主体の民俗行事の情報化の手法をメタマニュアル化し、伝統維持の効果的な情報保存方法を検討していくものである。ここまでの段階において、山形県山形市大字上東山における鹿踊り・鹿楽招旭踊、山形県飽海郡遊佐町における番楽・杉沢比山、岩手県遠野市における神人神楽・山伏神楽・南部ばやし・太神楽・しし踊り・田植踊り・さんさ踊り、山形県上山市における奇習・加勢鳥について、フィールドワーク調査を実施した。上記事例について、調査開始時に方法として設定していた「民俗行事の情報化の現況調査」「住民主体の民俗行事情報保存活動の質的分析」については、実施済みである。調査した事例からは、当事者たちが演舞の身体作法や楽器の奏法などを撮影や記号記録、教育カリキュラムをはじめとしたさまざまな手段で保存し、静態的情報として日常的に扱ってはいるが、活用する場面によって依存することを忌避する傾向が確認された。これらの研究成果として、現時点で論文1点・学会口頭発表2点のかたちで公表した。 また、今後の課題としては、同様に方法として設定していた「民俗技術の情報保存の実験民俗学的検証」を行っていくこと、また、「現場での手ほどき」などの動態的情報を整理し、その文化保存の方法について検討していくこと、現時点で山形県の事例については複数着手しているが他県の事例が手薄なため、今後それをカバーしていくことなどが挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗として、東北の民俗行事の情報発信の事例複数について調査を実施してきたが、とくに「山形県飽海郡遊佐町における番楽・杉沢比山」と「山形県上山市における奇習・加勢鳥」との2点については重点的に分析している。 「杉沢比山番楽」については、調査時点において、遊佐町杉沢地区の少子高齢化・過疎化に対応すべく、演目数の短縮・減少、少人数運営への移行といった縮小化の流れと、ユネスコ登録への推進活動への文化遺産指定を企図する流れとがあった。これを受けて、具体的な情報保存/活用として、行政を交えた毎年の映像撮影、また個人単位でのスマホカメラでの映像共有と演目確認での活用が見受けられた。録画録音が個人/集団単位でさかんに実施されるようになった反面、当事者からは、熟達者たちによる実際の手ほどきなしに静態的情報(録画録音)に依存すること自体を忌避する発言もあり、どのような画角の撮り方であっても「あくまで確認用」という位置づけとするようである。また、かつては低年齢層、とくに小学生に向けた杉沢比山の身体作法習得として「比山体操」が編み出され、図解や実践によって非言語的情報の授受が行われてきたが、少子化の影響で受け皿となってきた小学校が閉校したため、こうした情報喪失をカバーする方策の必要性が明らかとなった。 また、「加勢鳥」についても、上記事例と同様に調査時点で上山市の少子高齢化・過疎化の影響を受けていたが、こちらは外部者を積極的に受け入れて演じ手とする体制をとっている。そのため、演技のための情報授受もあえて最低限とされ、むしろ情報伝達不足によるトラブル・ハプニング性、アドリブ性を重視した演舞が実施されている。そのような形式であっても、録画録音といった静態的情報に依存することを忌避する傾向は確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点において、当初予定していた山形県内の顕著な事例への調査・検討は実施できており、その都度、成果の公表を行ってきた。今年度においても調査を実施した同様の事例について、追跡調査を行い、より深度の深い分析を行っていきたい。また、東北地方の山形県以外の事例については、岩手県遠野市における民俗芸能公演会で実演された神人神楽・山伏神楽・南部ばやし・太神楽・しし踊り・田植踊り・さんさ踊りについて分析中という段階にとどまっているため、今後、東北地方のなるべく多くの事例について追加のフィールドワーク調査を実施してまとめていきたい。 また、分析方法として設定していた「民俗技術の情報保存の実験民俗学的検証」については、その成果をひとつのモデルとして、当該文化への実社会的な貢献を見込んで計画していたが、上記したように芸能の当事者たちに「静態的情報に依存しようとしない」傾向が強いため、根底から検討し直さなければならない。当初の路線において情報保存検討をしつつ、「現場での手ほどき」などの動態的情報への検討も今後実施していく。 大まかな今後の予定としては、今後の全期間で東北地方でのフィールドワーク調査を断片的に継続させつつ、2024年5~6月で民俗技術の情報保存状況の整理期間、7~9月で現地調査集中期間、10~12月で調査データの分析期間、2025年以降に成果公開への集中期間として設定して、引き続き本研究課題に取り組んでいきたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)