細胞外マトリクスの特性が3Dがん微小環境構築に与える影響の解明
Project/Area Number |
23K17207
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 90120:Biomaterials-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 真子 東北大学, 工学研究科, 助教 (70908912)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2027: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | がん / 細胞外マトリクス / 3Dバイオプリンティング / 脱細胞化組織 / 細胞担持微粒子 |
Outline of Research at the Start |
がん細胞は周囲の正常細胞や細胞外マトリクス(ECM)成分と相互に影響しあうことで、増殖・転移のしやすい治療抵抗性ながん微小環境を構成する。近年の研究により、生体外3Dがんモデルの構築には、がん細胞を多様な正常細胞とECMとともに3D培養する必要性が示されてきた。本研究では、がん細胞にとって生体組織により近いECM環境を提供できれば、生体様がん微小環境を模倣できるのではないかとの発想に至った。生体組織由来のECMである脱細胞化生体組織と細胞担持コラーゲンマイクロスフィアを材料として成分や物性を再現し、3Dプリンティングで構造制御を検討することで、生体様がん微小環境の設計に必要な要素を探索する。
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Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞は周囲の正常細胞や細胞外マトリクス(ECM)成分と相互に影響しあうことで、増殖・転移のしやすい治療抵抗性ながん微小環境を構成する。近年の研究により、生体外3Dがんモデルの構築には、がん細胞を多様な正常細胞とECMとともに3D培養する必要性が示されてきた。本研究では、がん細胞や周辺細胞の挙動・機能を引き出すために、生体内のECMの特性(成分や構造、力学特性)を模倣できれば、生体様がん微小環境を構築できるのではないか、という発想のもと、生体組織由来の細胞外マトリクスである脱細胞化組織を材料として成分や力学特性を再現し、3Dプリンティングで構造制御することで、実際の組織に近いがん体外モデルを構築するための条件探索を目的とする。 本年度は、種々の条件で脱細胞化処理した食用ブタの小腸粘膜下組織、膀胱粘膜組織、肝臓を用いて脱細胞化組織由来ゲル(dECMゲル)を作製し、ECM組成評価やECM繊維構造観察、粘弾性測定を行った。ゲルのみでは印刷に十分な強度が得られなかったことから、各組織の凍結乾燥粉末もゲルに混合し、粘弾性を増加させた。次に、作製したゲル中で細胞集合体が生存・増殖可能かどうかを調べるために、ヒト結腸がん細胞(Caco-2)、ヒト子宮頸がん細胞(HeLa)、ヒト肝がん細胞(HepG2)のスフェロイド(細胞塊)を作製し、ゲル中に包埋した。これをバイオインクとして印刷し、がんスフェロイドの挙動評価を行った。これらの結果から、がん細胞が周辺のECM環境に応じて、がん細胞特有の反応を示したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、①dECMゲルの作製と特性評価(ゲルの成分、物性評価)、②ゲル中への細胞集合体の包埋条件検討、③細胞集合体包埋バイオインクの印刷検討の3点を計画した。①については、凍結乾燥した脱細胞化小腸粘膜下組織、膀胱粘膜組織、肝臓を粉末化し、酵素溶液で溶解し、生理的条件下で調整することで、dECMゲルを作製した。酵素溶解液のポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行ったところ、コラーゲン溶液のみと比較して、dECM粉末溶解液中では、複数の低分子量のバンドが検出されたことから、生体組織由来の生理活性物質が豊富に含まれていることが示唆された。また、dECM粉末・溶液、コラーゲンを混合して得られたゲルの粘弾性を評価したところ、dECMゲル単体では印刷に十分な強度が得られなかったが、各組織粉末をゲルに加えることで粘弾性が増加した。走査型電子顕微鏡を用いてdECMゲルの繊維形状を観察したところ、微細で均一な繊維がゲル全体に見られた。②と③に関しては、作製したゲル内にがんスフェロイドを包埋し、印刷・培養する条件を探索するために行った。ヒト結腸がん細胞、ヒト子宮頸がん細胞、ヒト肝がん細胞のそれぞれのスフェロイドを作製した。これらをゲル中に包埋し、バイオインクを調製した。3Dバイオプリンターで印刷し、がんスフェロイドの挙動を評価した。一部のがんスフェロイドは印刷工程で崩れてしまったが、dECMを含んだゲル中では、コラーゲンゲルのみに包埋したがんスフェロイドと比較して、がんの浸潤・転移に関わるECM分解酵素の発現量が高い傾向にあった。がん細胞が周辺のECM環境に応じて、がん細胞特有の反応を示したと考えられる。また、dECMゲル中への組織粉末・がん細胞の包埋によるバイオインクの作製と特性評価や、3Dバイオプリンティングによる構造体の作製についての成果報告を国内・国際学会で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の推進方策とし、① 細胞集合体作製のためのECM成分由来マイクロスフィアの作製と特性評価、② ①のdECMゲルへの包埋によるバイオインクの作製、③ マイクロスフィアのパターニング印刷、④ 3D構造体内部のがん細胞の生存、増殖、浸潤転移能の評価を実施する。 ①については、スフェロイドとは別の方法で3D構造体中に高い細胞生存率を有する細胞凝集体を作り出すために検討を進める。作製時のパラメーターを変更することで、様々な粒子形態、粒子径のマイクロスフィアの作製検討を行う。②では、種々のdECMゲルとマイクロスフィア混合バイオインクの印刷可能条件を検討するために、印刷スピードやノズル径、印刷形状など様々な条件で印刷を行う。スフェロイドを印刷した際に、一部ではスフェロイドの形状を維持できなかったことを踏まえて、パターニング印刷できる条件を探索する(③の方策)。④に関しては、がん細胞の生存・増殖をCalcein, PI染色で評価するだけでなく、細胞形態や浸潤転移能をVimentin, β-tubulin, Phalloidin, MMP2の免疫蛍光染色により評価することで、3D構造体中のがん細胞挙動を評価する。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)