Project/Area Number |
23K17413
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Pioneering)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 48:Biomedical structure and function and related fields
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
今泉 和則 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (90332767)
|
Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥26,000,000 (Direct Cost: ¥20,000,000、Indirect Cost: ¥6,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,200,000 (Direct Cost: ¥4,000,000、Indirect Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2024: ¥10,400,000 (Direct Cost: ¥8,000,000、Indirect Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,400,000 (Direct Cost: ¥8,000,000、Indirect Cost: ¥2,400,000)
|
Keywords | 核膜ストレス / 核膜修復 / シグナル伝達 / 核膜病 / プロジェリン |
Outline of Research at the Start |
細胞老化や細胞へのメカニカルストレスなどで核膜構成タンパク質が劣化・変性すると、重篤な核機能障害に陥り(核膜ストレス)、疾患発症の原因になる。しかし、核膜ストレスから核膜が破綻していく分子機構や、破綻後の修復機構の詳細はわかっていない。本研究課題では、核膜ストレス応答の仕組みをストレス感知、シグナル伝達、細胞・生体応答の各観点から解き明かすとともに、核膜病のモデル動物を用いて核膜ストレス応答機構の生体内での役割を解明し、疾患発症の分子機構に迫る。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、以下の示す3点を中心に研究を進めた。 1) 核膜損傷を高効率に誘導する実験系の開発;これまでに確立している核膜損傷モデル(トランスウエル、コンプレッション)に加え、高浸透圧負荷によるモデル系を開発した。 2) 新規核膜ストレス応答因子の網羅的探索系構築;最初期の核膜ストレス応答因子として知られるBAFと周囲約10nmに存在する分子をビオチン化するTurboIDとの融合タンパク質を安定発現する細胞株を作製し、近接依存性ビオチン標識法と質量分析による新規核膜ストレス応答因子の網羅的探索のための詳細な条件検討を行った。 3) 核膜ストレス応答因子の発現および機能解析;以前報告した核膜ストレスに対する感受性の異なる細胞株を用いた個別の核膜ストレス応答因子の発現解析を行った。その結果、核膜ストレスに対して感受性の高い細胞株・U251MGにおいて、核膜の修復を担うESCRT III複合体の動態に関与するATPase・VPS4Bの発現量が減弱していることを見出した。核膜ストレス応答におけるVPS4Bの機能を明らかにするため、RNAiによりその発現を抑制すると、核膜ストレス誘導時に見られるDNA損傷が亢進した。加えて、VPS4Bの発現をドキシサイクリンの添加により誘導可能な細胞株を作製し、VPS4Bの発現上昇が核膜ストレス誘導性のDNA損傷を低減させることを確認した。これらのことから、VPS4Bの量的制御が核膜ストレスに対する応答性を決定する重要な要因の一つであると結論付けた。さらにVPS4Bの機能を分子レベルで明らかにするため、その他の核膜ストレス応答因子との共局在を観察した。現在までにESCRT III複合体を構成するCHMP7と核膜上で共局在する一方で、BAFとは相互排他的な局在パターンを示すことを見出している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、核膜ストレス応答に関わる因子の同定を初年度に行う予定であった。実際は分子同定のためのモデル細胞系構築や候補分子の同定方法の確立に時間を要したため、成果は限定的な範囲に留まった。しかし、重要な分子の同定には、質の高いアッセイ系と評価系が必須であり、それを可能にするための研究ツールと方法を1年で完了できたと考えている。少し予定より遅れているが、今年度構築できた系を用いて重要分子の同定とそれらの機能解析を速やかに進めていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
分子レベルの解析に加え、個体レベルの解析を行い、生体における核膜ストレス応答の分子基盤解明を目指す。以下に具体的な研究計画を示す。 1)核膜ストレス応答の分子機構;新規核膜ストレス応答因子の探索とその機能解析を進める。まず、浸透圧ストレスにより核膜の損傷を誘導し、BAFとTuboIDの融合タンパク質を用いて核膜ストレスの初期に損傷部位へと集積する因子を明らかにする。その後、LEMタンパク質やESCRT III複合体に加えVPS4Bに関しても同様に近傍に集積する因子を網羅的に同定する。得られた候補因子について、核膜ストレス応答における局在変化を観察する。損傷部位への集積が見られた因子に関して、RNAiとドキシサイクリンによる発現誘導系を用いて、核膜ストレス応答における機能を明らかにする。並行して、VPS4Bの発現量による核膜ストレス応答の制御メカニズムを明らかにする。特に、ESCRT III複合体の動態に与える影響に着目し、各因子の局在変化やVPS4BとESCRT III複合体との相互作用について解析を進める。 2)核膜ストレス応答の生理的意義と疾患との関連;In vivoにおける核膜ストレス応答の生理的意義を明らかにするため、核ラミナの構成因子・Lamin Aタンパク質をコードするLMNA遺伝子の変異により発症するハッチンソン・ギルフォードプロジェリア症候群(HGPS)のモデルマウスを用いた解析を行う。HGPSではProgerinと呼ばれる変異型のLamin Aが発現するが、Progerinが核膜ストレス応答に与える分子レベルでの影響はほとんど明らかになっていない。2023年度の結果も踏まえ、野生型マウスとHGPSモデルマウスで既知の核膜ストレス応答因子や①で見出した新規因子の発現量や局在の比較を行い、Progerinによる核膜恒常性維持の破綻の分子機構を解明する。
|