| Project/Area Number |
23K17517
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| Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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| Allocation Type | Multi-year Fund |
| Review Section |
Medium-sized Section 3:History, archaeology, museology, and related fields
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| Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
池田 美穂 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (10717698)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小越 咲子 福井工業高等専門学校, 電子情報工学科, 教授 (70581180)
嶋田 千香 福井工業高等専門学校, 福井大学, 特別研究員 (20345599)
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| Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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| Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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| Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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| Keywords | 植物組織培養 / 伝統工芸技術 / 文化財保護 / 和紙原料植物 |
| Outline of Research at the Start |
本研究では、培地上で植物組織を増やす植物バイオテクノロジー「植物組織培養」を用いた和紙原料の安定供給技術の開発研究を通して、紙漉きの伝統技術の安定的伝承と和紙品質向上の基盤を作り、和紙を用いた文化財保護等に貢献することをめざす。研究対象は、紙漉きに必須な粘剤「ネリ」の原料、トロロアオイである。ネリの成分はトロロアオイの根に含まれる多糖質とされている。そこで、本研究では、培地中で根のみで旺盛に増殖する「毛状根」を、トロロアオイ植物体から誘導し、さらにネリ生産に適したトロロアオイ毛状根培養環境を探索することで、ネリの周年安定供給と質の安定化を試みる。
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、培地上で植物組織を増やす植物バイオテクノロジー技術「植物組織培養」を用いた和紙原料の安定供給系の開発によって、手漉き和紙の伝統工芸技術の安定的伝承と和紙品質向上を介した文化財保護に貢献することである。 令和6年度は越前和紙原料系統の特性を解析した。令和5年度までに行った調査の結果、トロロアオイには同じ学名のハナオクラが存在しており、メディアや文化庁も2種を同一視しているが、越前和紙職人はトロロアオイのみを原料とすることがわかっていた。和紙原料を安定的に供給するには、正しい原料植物であるトロロアオイを理解し、保全・供給する必要があると考えたが、当初、トロロアオイとハナオクラの違いは経験論的で、曖昧であった。そこで、トロロアオイとハナオクラ、および、令和5年度に両者を交配して得たF1ハイブリッド種子を同じ栽培し、形質を比較した。その結果、トロロアオイは著しく矮性の形態を示し、地上部の大きさがハナオクラの30%程度であった。一方で、和紙原料である根のサイズはほぼ同等だった。F1の草丈や節間伸長はハナオクラに近かったことから、トロロアオイは潜性の矮性変異体である可能性が考えられた。また、植物ホルモン含量を調査した結果、複数の植物ホルモンの量に違いがみられた。 さらにトロロアオイとハナオクラから和紙抄造に使われる根の抽出物「ネリ」を抽出する方法を検討した。福井県和紙工業協同組合との情報交換により、複数の越前和紙工房にて聞き取りと見学を行い、産業的なネリ抽出方法を調査し、それをベースにして、実験用に小スケールでのネリ抽出法を開発した。抽出したネリの粘性を二種の方法で測定した結果、ネリの性質は個体ごとにばらつきがあったものの、ハナオクラと比較して、トロロアオイの方が良質な傾向が見られた。また、根の特定の組織がネリを多く産生するという傾向が見られた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和6年度は、和紙原料として用いられる系統「トロロアオイ」の性質を、同じ学名のハナオクラと比較することで解析した。その結果、トロロアオイが植物ホルモン合成酵素の変異による矮性変異体である可能性を明らかにできた。一方で、興味深いことに根のサイズはほぼ同じであった。150年前の文献を調査した結果、複数の文献に「和紙用のトロロアオイは矮性のものを用いる」という記述があり、現在和紙用に使われるトロロアオイ系統は150年前から使用されてきた可能性を示唆した。当初は想定していなかった歴史的な知見も得られ、さらに、伝統的系統保全に必要な基盤知識も得られたことから、本研究は当初の計画以上に進展していると言える。また、和紙職人が経験的に知っていたトロロアオイとハナオクラのネリの違いを数値データ化できた点も評価できると考えられる。
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| Strategy for Future Research Activity |
令和7年度は、令和5年度に確立したトロロアオイ毛状根ライン、令和6年度に明らかになったトロロアオイの特徴をベースにして、さらに深く解析していきたいと考えている。 培養系においては、ネリを生産するトロロアオイの根の特定の組織と類似の細胞形態を持つ組織を培養で得ることで、培養系におけるネリ生産を試みたい。 また、ネリ生産を効率的に評価するために、ネリに含まれる多糖類の測定なども予定している。 さらに、トロロアオイを特徴づける矮性形態の原因遺伝子、および、ネリとなる遊離多糖類の合成に関わる遺伝子なども調査していきたい。 さらに、越前和紙職人、トロロアオイ栽培農家との連携も深め、お互いの情報を交換し、手漉き和紙工芸技術の保全への貢献を考えていきたい。
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