Project/Area Number |
23K17518
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 3:History, archaeology, museology, and related fields
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
上田 たかね 帝京大学, 医学部, 講師 (80459312)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
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Keywords | 歴史学 / 土壌内DNA / アンプリコン解析 / 考古医科学 / 遺伝子解析 / 網羅解析 / 土壌資料 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、考古資料に残留している有機物(断片化したDNA)情報を解析しその生物種の同定を可能にする新規方法を実証し①寄生虫卵や消化管寄生原虫の嚢子を認識するDNA検出のためのユニバーサル・プライマーセットを新規に作成し、得られたアンプリコン中の配列の違いによるバーコード法を用いた寄生虫・原虫種の同定系を確立し、②考古資料である排泄場遺跡の土壌、有機物由来試料(coprolite)中の微生物相検出からの古食生、感染症罹患状況の復元を目的とする。新規ユニバーサル・プライマーは現生においても、寄生虫による土壌などの環境汚染監視にも資することが出来る。
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Outline of Annual Research Achievements |
考古資料から検出される寄生虫を含む微生物相の解析から、古代の遺跡集落の食性と共に過去の衛生・疾病状況といった社会環境を復元し、感染症の変遷を構築する考古医科学的視点と方法論を確立することを目指している。次世代シークエンサーを活用した網羅的DNA解析は様々な分野で活用されており、考古学分野においても注目されている。2023年度は、国内の江戸時代の土葬墓から発掘された人骨の腹部周囲より採取した土壌からDNAを抽出し、発掘地域で流行が見られた寄生虫の中間宿主である淡水性巻き貝のCOIプライマーで増幅する遺伝子を確認した。現生のものとの判別や比較が必要となるが、そこに存在する寄生虫や病原性原虫、細菌も含めた病原微生物相のDNAを系統解析している所である。 中央アジア、キルギス共和国のアクべシム遺跡で行われている発掘調査現場の3地点の土壌を採取し、それら土壌中のdsDNAの定量、16S rRNA、ITS1、18S rRNAのアンプリコン解析を行なった。採取できた土壌は今季、先発隊が遺跡発掘再開を始めてから我々が採取するまでの期間、全く雨が降らない状態であった。そのため、採取箇所の一部は完全に乾燥しており、アンプリコン解析で増幅が見られなかった。乾燥と紫外線によって表面土から土壌内DNAが劣化していくことが判った。アンプリコン解析の結果の詳細はまだ検討中であるが、自由生活アメーバの痕跡が認められている。遺跡の土壌採取地点周辺からは割れた瓦や焼物、動物の骨が頻繁に発掘されていることから、動物の骨由来のDNAが土壌で検出されるかどうかを、当時の食性を考慮しsheep, cattle, chickenのCOX1を標的としたプライマーを用いてPCRを行った。その結果複数の土壌にcattleとsheepのアンプリコンが認められた。現在解析を続けている所である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
病原原虫、寄生蠕虫を検出するため、ITS1領域を増幅するユニバーサル・プライマーを用いたDNAバーコードを試みている。このITS1プライマーは、真菌、マラリア原虫、日本海裂頭条虫、陸生巻貝のDNAに対し、それぞれ異なるサイズのアンプリコンを示したことから、環境土壌中の微生物を含む真核生物の検出に有用である。 土壌解析については、1回目の遺跡現場の土壌を採取し、PCRやアンプリコン解析を試すことができた。その1次解析結果から、遺跡土壌に含まれる雑多なDNAの量と質が網羅的なアンプリコン解析に供しうるかをどうかは採取されるまでの土壌の状態(特に長期間の乾燥、紫外線曝露)に大きく影響を受けることが判った。このことから、解析に適した土壌採取に当たっては、採取直前に目的地点の表面を削って露出した所から採取すべきとの指針を立てることができた。遺跡の土壌採集地点周辺は、植物の根、動物の骨、瓦や焼物の破片などが頻繁に露出し発掘されており、土壌のメタゲノムデータの一次解析では植物の遺伝子も当然ながらヒットしている。これらの検出された遺伝子の生物相が古のものか、現生のものの混入かを慎重に解析を行なっている。遺跡周辺には複数の植物が生えており、日本で生えているものと似ているものから、全く見慣れないものまで様々である。土壌にこれら植物の根が混入することが考えられるため、今回は写真を撮るのみに留めたこれらの植物のDNAを抽出して解析することを次年度に計画したい。ユニバーサル・プライマーによるDNAバーコードをまだトライアルしていない原虫や寄生虫でも試している所である。非破壊的な方法で動物の骨からDNAの抽出が可能かどうかについても現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)次年度、キルギス共和国のアクベシム遺跡に資料採取に行く時には今回の反省を踏まえて本隊が現場に入ってからあまり日を置かずに合流し、採取時に新しい土壌表出面を出してもらい、遺伝子解析に悪影響の少ない地点かつ遺跡的にポイントとなる地点の土壌採取を行う。この際、試料の国内移送に際しては今年度と同様にキルギス共和国科学アカデミーの許可の下移送し、横浜植物貿易所による管理の下、輸入・保管される。 2)今回の土壌採取は、地層面の土壌採取に際して、その露出時期が様々である上に採取法が精々表面から10cm掘り進めることに限られていたため、この深度が微生物の生存に与える影響は充分評価できない。今後の研究としては地上からのボーリングと、地層面からの水平ボーリングを行うことによって解決出来る可能性があると考えている。 3)土壌採取地点周辺の植物を写真撮影し、植物のすり潰し液をFTAシートに吸収・乾燥させて持ち帰り、D N A抽出とアンプリコンシークエンスから種の同定を行う。 4)キルギス共和国内に生えている植物などを収載している図鑑などの入手を試み、遺跡現場周辺に生えている植物の情報を収集し、解析結果との照合を試みる。
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