Project/Area Number |
23K17530
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 4:Geography, cultural anthropology, folklore, and related fields
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
木村 真三 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (50321849)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,940,000 (Direct Cost: ¥3,800,000、Indirect Cost: ¥1,140,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | ハンセン病 / らい予防法 / 解剖録 / カルテ / 無らい県運動 / 隔離政策 / 人権 |
Outline of Research at the Start |
1873年ノルウェー人医師ハンセンにより、らい菌が発見されるまでハンセン病患者は、その病状から皮膚の脱落、容貌の変化から人々から忌み嫌われ、迫害を受けてきた歴史がある。ハンセン病の原因が細菌とわかり、治療薬が見つかっても患者の隔離政策がとられた。こうしたなか、2021年3月、岡山県の国立療養所長島愛生園で患者の解剖録が見つかった。ハンセン病患者が亡くなってからも解剖されなければならなかった理由を医学的所見から探る研究はない。本研究は解剖録やカルテを基に、我が国のハンセン病隔離政策の意味や戦後の治療薬が見つかった後も遺体の解剖が続いた理由などを探り、隔離政策や優生思想から人権問題を追求する。
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Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】ハンセン病はらい菌により発症することがあきらかになった以降も、不治の病であった戦前、戦中 、そしてハンセン病治療薬が日本に導入された以降と時代の変遷を踏まえて、我が国のハンセン病隔離政策の意味や戦後の治療薬製造後もなお、遺体解剖が続いた理由などを医学史的視点から追究することを目的とした。 【当該年度に実施した研究の成果】研究代表者の親族であったハンセン病患者の発症後、長島愛生園に収容されてからの記録を入園録、解剖録、カルテ、死亡診断書など患者が入園から死に至る期間の衣食住環境について当時を知る療養所入所者から聞き取り調査を行い、解剖録やカルテからは読み取れない傍証データの収集を行った。 長島愛生園では自治会長の中尾伸治さん、また、大島青松園では自治会会長の森 和男さん、副会長の野村 宏さんに当時の食糧事情を中心に聞き取りを行った。その結果、太平洋戦争の前から十分な食事が取れない状況にあったことが判明。無らい県運動による収容人数の増加が原因の一つと考えられる。労働可能な患者と労働できない重症患者には食事内容が異なり、非生産者には過酷な状況であった。また、長島愛生園の山本典良園長からは、ハンセン病で亡くなるケースは稀であり、多くは結核などで亡くなるケースが多いことがわかった。当時の食糧難からくる免疫力の低下が結核の進行を早め死を迎えていた。この他、園からの逃走や自死のケースもあり、カルテ等から読み取れない問題も多くあった。カルテや解剖録からだけでは得られない情報もあり、今後の調査には、当時を知る入所者から聞き取りを行うことが重要と考えられる。 また、患者を取り巻く家族(親、兄弟 、甥)への差別についても調べ、当時を知る親族や住んでいた地域で伝え聞いた話などの聞き取り調査を行い、当時の社会全体がもたらす不必要な恐怖を招く政策がなぜ起こったのかを改めて調査していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の親族と同時期に入園された患者遺族からの申し出で、カルテと解剖録の提供があり、当初、解読作業を行っていた。しかしながら、患者遺族の心境の変化から、すべての依頼を取り下げる旨の連絡があり、調査が中断した。患者の家族、遺族の心情や現在も続く偏見や差別に対し、十分な配慮が必要であることが痛感した。 このことを受けて、本学および長島愛生園での倫理審査を双方で話し合うことで進めていくことにした。そのため、これまで公の場で語り部となっている療養所の入所者の方々への聞き取り調査を中心にしたことが調査の進捗状況に影響した。 また、研究代表者の研究室の移転・移設問題が生じたため、十分な時間が取れなかったことも遅れの理由となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
【今後の推進方策】 引き続き、ハンセン病患者の親族である研究代表者しかできない時代背景とともに移り変わる偏見や差別による出来事を詳しく掘り下げ、他の研究者では得られない情報を明らかにし、垂直展開として、その出来事を記録する。 また、時代の変遷に伴うカルテや解剖録といった医療情報を整理するために患者の抽出作業を長島愛生園の園長に依頼する。次年度は、戦前、戦中を中心として調べていく。 さらに、らい予防法と同時期に成立した結核予防法、優生保護法などを医学的視点から評価するため、外部の専門家の協力を依頼している。
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