Project/Area Number |
23K17590
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 9:Education and related fields
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
藤岡 達也 滋賀大学, 教育学系, 教授 (10311466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 教一 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 教授 (80572768)
澤口 隆 東洋大学, 経済学部, 教授 (50318755)
小森 次郎 帝京平成大学, 人文社会学部, 准教授 (10572422)
松本 一郎 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (30335541)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,110,000 (Direct Cost: ¥4,700,000、Indirect Cost: ¥1,410,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
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Keywords | 人新世 / SDGs / 地球科学教育 / 地球環境 / Web教材 / 自然災害 |
Outline of Research at the Start |
本研究では高校地学を踏まえ現在の理系の範疇に留まる扱いから,文理融合型を目指した科目に向けての再構築に取り組む。特に地質時代区分において完新世から人新世に注目されるように人間の自然界への影響が非常に強くなったことから,現在人類が抱えている,気候変動危機,資源・エネルギー危機,地球環境問題の現状を科学的データと共に,政治・経済・社会システムも踏まえ,自然科学と社会科学の両面からの手法を用いて課題を整理し,人新世の概念も取り入れる。今日国際的にもSDGs,ESDやSTEM教育から文理融合型のSTEAM教育が注視されている中で高校教育課程での具現性を図り社会教育にも貢献することを意図する。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年,気候変動をはじめとした人間活動とも関連した地球環境への様々な影響を無視できなくなっており,「人新世」と呼ばれる新たな地質時代区分の設定が注目されている。その背景には,国際的にも取組が重視されているSDGs(持続可能な開発目標)の実現がある。本研究では,これらを踏まえて,従来理系の枠組の中だけで体系化されていた高校地学に,地球科学をベースとしながらも自然環境と人間活動の相互関係性の視点を取り入れる文理融合型の新たな科目としての再構築に取り組み始めた。 まず,「人新世」に関して,国際的な動向を探り,2024年3月において,作業部会から全委員会において,これが否決されたプロセスを探った。しかし,国内において自然環境と人間活動との関係を考えるにあたって,人間活動が自然環境に大きな影響を与え始めた地点を検討することはそれなりに意味があることを明らかにした。確かに,人間活動は世界各地で状況が異なっており,人新世が否決されたことも理解することができるが,日本列島においては考古学的な手法から,縄文時代前期,さらには縄文時代と弥生時代の境界が,一つのポイントとなることが遺構・遺物から考えられた。 「人新世」と連動して重要な視点である「SDGs」については,現在の日本のおかれた状況,気候変動とも無関係でない風水害,さらには,能登半島地震に見られるような地震災害をグローカルに捉えていくことの必要性が明確になった。 これらを学び行動に結び付けることができる人材育成の点から,教科「理科」を構成する科目「地学」では,他の理科教育の内容,方法と同様に自然の事物・現象の取扱いにとどまっている制限された教科の枠組を越えた,科学技術が自然環境に影響を及ぼす状況まで扱い範囲を広げ,これからの科学的リテラシーを有し,適切な行動が可能な人材育成を目指すような教科・科目の変革を提言する現実的な手法を探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際的な動向を重視して,SDGs,人新世に関連して,自然災害・戦災,原子力災害,公害の経験を持つ日本の科学・技術・社会の相互関連のアプローチの先進性の可能性を探り,本研究での教育内容・方法の成果を世界に発信する方向性を探ることができた。特に,気候変動と関連して,自然災害に関する防災・減災,復興,資源・エネルギー,化学物質等の地球環境問題との解決とも連動したSDGs・ESDの理念,さらにはSTEAM教育の方法を重視しながらも,日本独自の自然環境への対応や教育の重要性も明確にし,欧米のスタンスが日本の歴史・伝統・文化等と整合する領域とそうでない領域を明らかにするアプローチが明確となった。 本研究では,学校教育では,理系科目であり,日本に住む市民にとって基本的な知識が重要性でありながら,履修率が低い「地学」の改編を超えることも検討した。学校の教育課程だけでなく,社会教育,地域教育を重視した取組,特にジオパークの活用を本研究と結び付ける必要性が明らかになった。確かに地質時代区分として,完新世から人新世が注目されるようになったのは人間の自然界への影響が非常に強くなってきたからであるが,一方で本研究では,現在人類が抱えている,気候変動危機,資源・エネルギー危機,地球環境問題の現状を,環境史を探りながら人間が環境の変化に対応してきたプロセスを科学的データと共に,政治・経済・社会システムも踏まえ,自然科学と社会科学の両面からの手法を用いて課題を整理し,持続可能な社会の構築への貢献も重視する。今日国際的にもSDGs,ESDや理系総合型のSTEM教育から文理融合型のSTEAM教育が注視されており,教育課程での具現性を探り,さらには社会教育にも貢献することを意図する意義が明らかになってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,日本における人新世の仮説を明確に示す。具体的には考古学の手法も取り入れながら自然環境への影響を明らかにする。環境史を踏まえながら,自然環境の影響を人間はどのように対応してきたのかを,先史時代から日本列島を例にして探り,自然災害,気候変動,エネルギー危機などの変化,対策などにも焦点を当てる。自然災害では,特に風水害を取り上げ,台風・前線の発達に伴う経年変化,災害の規模,被害の状況,その対応予算成果などを「人新世」の時間軸を踏まえながら分析することを目指す。SDGsの実現,特に地球科学教育における,その具現化に関しては,日本において,その17のゴールや169のターゲット等が表面的に重視されているが,232の指標を見ることによって,そのねらいが明確になることも多く,本研究も科学的根拠としてそのデータの収集に取り組む。SDGs7,13,14では,様々な指標が挙げられており,これらの指標を随時活用する。 以上の研究内容を踏まえ,整理,開発した教材,教育プログラムを日本,台湾等で実施し,現在の高校地学の再構築を図る。現状では,高校地学の履修率は低く,教科書会社も1社のみである。また,教育課程の現状から学校教育だけでなく,地球環境と人間活動の相互関係についての科学的リテラシー向上を意図する。そのため,日本各地のジオパークを中心としたフィールドワークの教材開発を図る。地域と連携した学校外での教育活動の在り方の内容・方法に取り組み,その実践によって意義を明らかにする。これらを取扱った開発教材としてのWebページから公開,更新し,社会教育にも波及させる。同時に日本の独自性を明確にし,国際的に発信する。
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