The nature of color qualia challenged by the diversity of color vision
Project/Area Number |
23K17643
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 10:Psychology and related fields
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平松 千尋 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (30723275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 靖人 東北大学, 情報科学研究科, JSPS特別研究員(PD) (00927569)
伊藤 潤一郎 新潟県立大学, 国際地域学部, 講師 (20895651)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | 色覚多様性 / クオリア / 主観的意識の変化 / 言語論 / 色覚研究史 / 主観的感覚意識体験 |
Outline of Research at the Start |
色は主観的な感覚であり、光波長の物理特性の違いと、青、緑、赤などのクオリアの関係に必然性はない。また、同じ光波長に対する個人間でのクオリアの同質性の証明は難しい。本研究では、色覚多様性に着目し、少数派の色覚を持つ人において、知覚特性や、多数派の言語体系に合わせた色彩語の習得がどのようにクオリアに影響するかを、量的および質的に分析する。特に、同じ物理刺激に対しクオリアが変化する現象に焦点を当て、あいまい図形に対する知覚交替に類似する短期的な変化の実験的検討と、言語との結びつきによる長期的な変化に対する現代哲学の言語論からの分析を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、色覚多様性に着目し、他者との共有が困難な色のクオリア(主観的体験)が、多数派の言語体系の中で生きる少数派の色覚を持つ人々において、どのように表現されているかについて、自然科学の実験的手法、国内外での文献調査、現代哲学の言語論の立場からの分析により進めている。自然科学的な分析では、短期的なクオリア変化現象に焦点を当て、同じ物理刺激に対しクオリアが変化する現象の客観的な検証を試みた。具体的には、これまでに現象報告があった石原色覚検査表を数秒から数十秒間見ている際に起こる数字の明滅現象を実験的に調査し、色覚との関連を調べた。その結果、少数派の色覚を持つ参加者において現象が再現されることが示された。また、本来は色覚検査用に使われる装置であるアノマロスコープを用い、クオリアの変化を報告してもらう実験的検討を行い、同一の光波長に対する一定の再現性のある主観的体験の変化が特に少数派の色覚を有する参加者において確認された。同時に、変化の起こりやすさや生起条件には個人差も見られた。これらの結果をまとめ、学会紀要論文として発表した。 国内外の文献調査を踏まえた現代哲学の立場からは、少数派の人々の色のクオリアが色覚研究史においてどのように捉えられてきたかについて新たな視点から考察を加えるとともに、「証言」の概念にもとづいて、少数派である人々の主観的体験の言説を対象とする本研究全体の意義づけを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の平松は、色の主観性の揺らぎの客観的な検証を試みた。まず、研究分担者の馬場が著していた、石原色覚検査表における様々な色相のドットで構成された数字の、少数色覚を持つ人における数字の明滅現象の再現性を実験的に調査した。その結果、少数派の色覚を持つ2名において、数秒から数十秒間の観察中に、異なる数字が明滅するという現象が報告された。様々な光強度で現象報告を求めたところ、明滅現象の起こりやすさと光強度には一貫した関連はなく、明滅現象が起こりやすい表と起こりにくい表、また個人差があった。一方、多数派である3色覚の参加者からは、数字の明滅は起こらないが、奥行き知覚が揺れる現象が報告された。さらに、クオリア変化現象の客観的な検証の試みとして、色覚検査装置であるアノマロスコープを用い、様々な単色光(589nm)と混色光(549nm + 666nm)の組み合わせをランダムに各30秒間呈示し、色の主観的体験の変化を報告してもらった。報告の一貫性を検討するため、別日に2回の調査を行った。その結果、2色覚に近い少数派の3色覚を持つ参加者において、一定の再現性のある主観的体験の揺れが再現された。特に、一般的な3色覚が単色光と混色光を等色する中間の単色光の明るさが呈示された場合、単色光の主観的体験が変化しやすいことが報告された。得られたデータをまとめ分担者の馬場らと学会紀要論文として発表した。 研究分担者の馬場は、当事者研究を通して色覚少数者の多様な主観的体験を聞き取り、日常生活世界の構造について明らかにするとともに、色覚研究史における色のクオリアの位置づけについて国内外で文献調査を進めた。 研究分担者の伊藤は、現代哲学の言語論、とりわけ「証言」の概念にもとづいて、色覚において少数派である人々の主観的体験の言説を対象とする本研究全体の意義づけを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において、石原色覚検査表における数字の明滅現象や、アノマロスコープ刺激に対する主観的体験の変化が再現性を持って示されたことから、クオリアの短期的変化現象については当初目標を達成したため、新たに、「主観的体験やその揺れがどのような神経表現によってもたらされるのか」という問いをたて、研究を発展させる。多数派の言語体系の中で生活する少数派の色覚を持つ人々は、赤や緑などのクオリアを有していることから、それらのクオリアに対する神経表現が存在するはずである。カテゴリや言語表象とも関連する高次レベルの神経表現は、多数派の色覚を持つ人々と類似している可能性も考えられる。また、主観的体験の揺らぎは、少数派、多数派を問わず条件により起こりうると考えられる。将来的に、外部からの視覚入力がある知覚、視覚入力のない覚醒時の想像、視覚入力がなく意志による制御が難しい睡眠時の夢における神経表現を比較することを目標に、実験計画を立て、時間解像度の高い神経活動計測法により、色のクオリアに関連する神経表現の揺れを捉えられるかを検討する。 長期的なクオリア変化現象や少数派の色覚を持つ人々のクオリアについては、研究分担者、研究協力者それぞれが意義づけを行い、日本色彩学会全国大会におけるパネルディスカッション等において一般の人々にも共有し、新たなクオリアの捉え方を提案していく。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)