Project/Area Number |
23K17645
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 10:Psychology and related fields
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊澤 栄一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (10433731)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Discontinued (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
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Keywords | 社会的絆 / 親和関係 / 自律神経活動 / グルココルチコイド / オキシトシン / 社会的孤立 / 鳥類 / ストレス / 絆形成 / 共感性 |
Outline of Research at the Start |
個体間の絆・結束は排他性を生む。排他性がうむ社会的孤立は,自ら孤立する自発的孤立と行動・生理レベルで何が共通し,異なるのか未解明である。本研究課題では,カラスのオス3個体を2週間同居させることで,2個体の絆形成と1個体の孤立が生じるという独自に開発した行動課題を用い,社会的孤立と自発的孤立を分離し,ストレスホルモンのレベルから両者の相違・共通性を調べる。その上で,2種の孤立個体を群れと合流させる社会的機会を提供することで,ストレスレベルの回復の相違も検討する。これらの実験研究を通じて、絆形成がもたらす社会的排除の解明に向けた動物モデルを新たに確立することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は社会性鳥類カラスを対象に,3個体間交渉に着目し,2個体の親和関係の形成とそこに参加しない1個体について,行動と生理の2つのレベルにおいて,その過程の生物学的基盤を明らかにすることを目的とする。23年度は,代表者らが過去に独自に開発したオス3個体を2週間同居させる3個体同居実験を用いて,2つの実験検討を行った。第1の実験検討として,3個体同居実験を行い,過去の同実験では計測していなかった新たな行動データの取得と解析を行った。同課題における2個体間の親和関係形成および1個体の孤立が生じる過程におけるこれまでの行動解析は,個体間距離を指標にして行ってきたが,個体間のより具体的な社会行動の発現とその変化を記述する必要であったことから,今回新たに個体間の攻撃交渉と親和的(羽繕い)交渉を計測した。分析の結果,3個体同居初期には攻撃交渉が高い頻度で生じ,それが次第に消失していき,その変化と交差するように,親和関係を形成する2個体間の羽づくろいが次第に増加し,有意に高い頻度で維持されることが確認された。これらの結果は,過去に行った実験結果と合わせて国際誌に論文投稿中である。第2の実験検討として,同課題を介し親和関係の形成が,当該個体のどのような末梢生理活動の変化を伴っているのか生理レベルの解析を行った。親和関係を形成したオス2個体を対象に,当該2個体が同居している状態における自律神経活動および血中ストレスホルモン(コルチコステロン)濃度を計測し,親和形成の前後で比較した。その結果,親和形成に伴う心拍低下および副交感神経の賦活がみられた。交感神経活動およびコルチコステロン濃度は,親和形成前後の変化には一貫した傾向はなかった。その要因として,親和オスペア間における同居中の羽繕いなどの行動頻度の差が考えられる。これらの結果は,親和関係の形成に伴って身体生理反応が和いでいることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3個体同居課題における親和関係形成の行動学的変容過程を明らかにするために,新たな社会行動を追加した詳細な解析を行い,すでに取得していたバソトシンホルモンによる親和関係阻害効果のデータと合わせて既に国際誌に論文投稿しており,当初想定よりも早く成果を挙げている。これと並行して,親和関係形成に伴う自律神経活動およびストレスホルモンを測定し,データ解析をすでに終え,その成果を2つの国内学会にて発表済みである。ここで確立した生理測定は,24年に実施予定の孤立個体の生理活動計測にそのまま適用することができるため,2年目の研究計画の速やかな実施準備も整っている。以上を踏まえ研究全体としては順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,3個体同居課題において親和形成に参加しない他1個体,すなわち孤立個体の行動および生理基盤に着目した解析を進める。3個体同居において生じる孤立個体にはどのような類型があり,それがいかなる行動/生理学的特性と関係するのかを検討する。この検討に際して,同居開始当初から孤立している「自発型孤立」個体と,2個体の親和形成に伴って排除され次第に孤立していく「排除型孤立」個体がいると予想し,同居期間を通して最終的な孤立個体を同定し,ビデオデータ遡って解析することで,親和した2個体との距離がどのように広がっていくのか,その要因はいかなる交渉にあるのか(あるいは明示的な交渉場面はないのか)を解析する。さらに,孤立個体となる前後で,親和形成したオスとの同居状態における自律神経活動ならびに血中ストレスホルモンを計測し,孤立状態にあることが当該オスの体内にどのようなストレス反応を引き起こしているのか,さらにそれが自発型と排除型によってどのように異なるのかを比較検討する。23年度の成果と合わせて国外・国内での学会発表を行い,データに関するフィードバックを得た上で,最終的な解析を行い,論文としてとりまとめ国際誌へと投稿する。
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