Project/Area Number |
23K17675
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 14:Plasma science and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
矢代 航 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 教授 (10401233)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
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Keywords | X線 / イメージング / 偏光 / 位相 / 回折格子 / トモグラフィ / 磁性 / 放射光 / 空間変調 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、硬X線の新しい偏光制御法(偏光の空間・時間変調法)と、それを利用した新しい超高感度・マルチモーダルX線磁気イメージング・トモグラフィ法の開発を目的とする。試料内部の磁化の空間分布を従来よりもはるかに高い感度で三次元的に可視化できるようになり、従来の走査型XMCDのような長時間撮影なしに、将来的には高空間分解能で三次元的に可視化できるようになり、新規磁性材料の開発や、不均一な強相関系(実材料系)の物性研究が飛躍的に加速されると期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、硬X線(以下、「X線」と呼ぶ)の新しい偏光制御法(偏光の空間・時間変調法)と、それを利用した新しい超高感度・マルチモーダルX線磁気イメージング・トモグラフィ法(結像型顕微鏡も含む)の開発を目的とする。本研究で提案する方法が実現すれば、試料内部の磁化の空間分布を従来よりもはるかに高い感度で三次元的に可視化できるようになることが期待され、新規磁性材料の開発や、不均一な強相関系(実材料系)の物性研究が飛躍的に加速されると考えられる。 本研究では、X線用の位相型回折格子によるFresnel回折を利用して、まずX線の偏光(円偏光、直線偏光など)の周期的な空間分布を生成する。特殊な光学系により、位相型回折格子の下流の適当な距離において、偏光方向が周期的に変化したX線の電場(例えば直線偏光の偏光方向が周期的に変化した電場)が生じると期待される。試料を挿入すれば、試料によるX線の位相シフトにより、偏光方向が変化する。この偏光方向を、偏光アナライザー(散乱角90°でX線をBragg反射する適当な厚さの単結晶)の下流側に配置した高速X線画像検出器(+必要に応じて、吸収型回折格子)で検出し、かつ偏光アナライザーを透過したX線の画像も取得することで、通常の回折格子干渉計と同様に、縞走査法により(位相型回折格子のラインに垂直な方向への走査により)、吸収像、微分位相像、極小角X線散乱(USAXS)像が得られると期待される。 2023年度は、本アイディアの実験的な実現に向けて、光学系のパラメータの設計を行った。また、実験に必要な光学素子(回折格子など)の設計と開発、光学系を構成する物品(各光学素子のための精密ステージ、画像検出器など)の選定・発注などを行った。さらに2024年度のSPring-8での実験に向けて課題申請を行い、採択された。これにより、2024年度の実験計画も確定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではまず、光学系のパラメータの設計、また、実験に必要な光学素子(回折格子など)の設計と開発、光学系を構成する物品(各光学素子のための精密ステージなど)の整備などが必要である。これらの準備と並行して、SPring-8の高輝度放射光を用いた実験に向けた準備を進める必要があるが、SPring-8の課題申請は、アカデミックユースの場合には半年に一回である。例えば、2024A期にSPring-8で実験を行うためには、2023年12月頃に課題申請が必要であるため、2023年度は、SPring-8で実験するための実験準備に専念し、2024年度の2024A期、2024B期に実験により原理実証する計画が最も妥当である。そのため、計画より進んでいるとは言えないが、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度に設計、準備した光学系を、実際にSPring-8のアンジュレータビームラインであるBL20XUに構築し、前半(2024A期)は、まずは原理実証を行う計画である。原理実証は、まずX線の偏光(円偏光、直線偏光など)の周期的な空間分布が実際に実現できているか確認することから始める。X線の偏光解析は、単結晶のBragg反射を利用して行う。二枚目の回折格子として吸収型回折格子を位相格子に平行に配置することにより、偏光の周期的な分布をフィルタリングできる。二枚目の回折格子を平行移動しながら、フィルタリングされたX線の偏光を単結晶のBragg反射により解析することを繰り返すことで原理実証が可能であると考えている。なお、空間分解能の高い画像検出器を用いれば、偏向分布を直接解像できる可能性もあり、その可能性についても検討する。 次のステップとして、2024年度後半(2024B期)においては、試料を挿入して、実際にイメージングを行う。縞走査法を適用することにより、吸収像、微分位相像、極小角X線散乱(USAXS)像が得られると期待され、これにより、新規磁性材料の開発や、不均一な強相関系(実材料系)の物性研究への有効性を検証する。 さらに、縞走査により、偏光の空間変調は時間変調にも変換できるが、回折格子を高速回転するなどの方法で、kHz~MHzの時間変調も可能であると期待される。すなわち、移相子を振動させる従来の時間変調法に比べ、最大数桁程度周波数の限界を上げることができ、ロックイン検出の原理を組み合わせれば、従来よりもはるかに高感度で、かつ従来にはないマルチモーダルX線イメージング法が実現できると期待される。そのような新しい偏光微分干渉計や、X線結像顕微鏡との組み合わせなど、新しいアイディアの原理実証についても、時間的に可能であれば、検討する。
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