Project/Area Number |
23K17692
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 15:Particle-, nuclear-, astro-physics, and related fields
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 俊 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (60294146)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
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Keywords | 時間反転対称性破れ / K中間子 / ミュオン / 弱い相互作用 / シンチレータ結晶 / スピン偏極 / カロリメータ / 素粒子実験 / スピン偏極保持 / シンチレーション光 |
Outline of Research at the Start |
本研究の最終目標は、K→πμν崩壊(Kμ3)で生成するミュオンの崩壊面に垂直なスピン偏極成分(PT)を見出すことで、時間反転不変性の破れを発見することである。従来の実験方法では、ミュオンの運動量を磁気スペクトロメータで分析し、その後に金属中に静止させ偏極度を測るのが常識であった。しかし、装置の立体角や観測可能な運動量領域が小さくなる弱点があり、これを克服するために、ミュオンの偏極度をカロリーメータで測定する新しい方法を考案した。本研究では、実際に幾つかのシンチレーション検出器に偏極ミュオンを打ち込み、その偏極緩和時間を測定することで実験手法の有効性を確認する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は静止させた荷電K+中間子崩壊を用いて、CP非保存と同値である時間反転不変性の破れ(T非保存) を発見することを目的としている。実験は、K+→π0μ+ν崩壊で生成するミュオン(μ+)の崩壊面に垂直なスピン偏極成分(横偏極、PT)を精密に測定する。従来の研究ではPTの実験精度が10^(-3)程度であったが、本研究では新たな測定方法を導入することで10000倍のKμ3イベントを観測し、10^(-5)まで感度を向上させることでPT発見を目指す。申請者は、フッ化セリウム(CeF3)で90%以上の偏極度を保持できることを実験的に見出すことに成功し、前述の新しいT非保存実験方法の提案と偏極保持結果について併記した学術論文を発表している。ただし、米粒ほどのCeF3結晶を用いたテスト実験の結果であり、今後はカナダTRIUMF国立研究所の偏極ミュオンビームを用いて、CeF3結晶やその他の有望な結晶の詳細なデータが必要な状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究開始初年となる2023年度では、J-PARC Material Science and Life Facility (MLF)において100%偏極した表面ミュオンビームを用いてLaF3, PrF3, NdF3シンチレータ中に打ち込み、ミュオンスピン緩和時間を測定する実験を行った。これらのシンチレータにスピンに並行方向と垂直方向に磁場をかけることで、スピンの方向をコントール出来る。偏極度の絶対値は、偏極を保持することが知られている銀標的を用いて較正した。結果として全てのシンチレータにおいて、ミュオン偏極を90%以上保持することが可能であることを見出した。また、磁場を印加しない測定においてミュオンのスピン回転が観測され、シンチレータ中ではF-mu-F分子が形成されることが確認された。本研究ではミュオン偏極度測定方法技術を開発しているが、それに加えてシンチレータ物質とミュオンの相互作用の物性的な知見を得ることが出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、(1)ミュオン偏極を保持できるシンチレータの種類を増やし、そして残留偏極度を限りなく100%に近づける、(2)エネルギー分解能や時間分解能といった粒子線検出器としての性能を測定によって確認する、ことが目標となる。(1)については、J-PARC MLFまたはカナダのTRIUMF研究所にて、β-YF3構造をもつシンチレータ結晶におけるミュオン偏極度緩和時間を測定する。β-YF3 構造も大量のフッ素が含まれるため、これまでのシンチレータと同様に偏極度保持が期待出来る。(2)は2cm^3のCeF3シンチレータ結晶に、紫外線領域に感度のある光電子増倍管とMPPCの2種類の光デバイスを取り付け、エネルギー分解能と時間分解能を実測する。CeF3から発生するシンチレーション光は時間応答が非常に早く、時間分解能が従来のカロリーメータから大幅に改善される見通しである。これらの基礎的な測定終了後に、偏極ミュオンビームをCeF3に打ち込むことで、将来のT-violation実験をsimulateするミュオン偏極度測定を行う。
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