Project/Area Number |
23K17753
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 21:Electrical and electronic engineering and related fields
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
岡崎 雄馬 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60738277)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,200,000 (Direct Cost: ¥4,000,000、Indirect Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | 単一電子素子 / 単一電子トランジスタ |
Outline of Research at the Start |
本研究では、電界放出素子と電子1個レベルの操作・計測を可能にする単一電子トランジスタを組み合わせ、電界放出される電子を単一電荷レベルで検出制御可能な新たな電子源の開発に挑戦する。これが実現すれば、放出するタイミング、電子数を単一電子の精度で検出できるため電子源としての制御性・再現性が向上、単一電子の量子操作や、単一電子ビームを利用した量子電子光学実験などにおける制御性向上に寄与する。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年、単一電子の電荷やスピンなどの自由度や量子力学的な波動性を活用したデバイスの実験技術が発展し、それを量子計算や量子計測などへと応用する研究に社会的に高い関心が集まっている。特に、より高い操作性を実現する試みとして、真空中の電子を直接操作する手法に注目が集まっている。このような実験で重要となる電子源としては、例えばフィラメントを希釈冷凍機内に設置し、電流を流して点灯させた際に放出される熱電子を電子源として用いるなどがある。しかし、熱電子放出などを利用した電子源では、電子の放出過程がランダムであることから、偶発的な要素を含み、デバイスとしての制御性を律速している。また、放出される電子のエネルギー分布も幅広いため、電子線としてのコヒーレンスが悪く、量子操作応用に向けて改良が必要である。このような電子源の課題は、今後の集積化やより高度な量子操作の実現に向けてボトルネックとなっている。 本研究では、申請者がこれまで培った単一電子計測の実験技術と電界放出を融合し、将来的に真空中の単一電子源として使用しうる要素技術を確立することを目指している。そのような要素技術の実証実験に向けた準備として、超高真空対応の極低温冷凍機の設計や高周波測定用の回路部品の調達、素子のシミュレーションなどを進めた。申請者自身が研究の企画運営を行う企画室へ出向となりデスクワークがメインとなったこともあり、その片手間に必要となる部品の調達などを進めてきた。本格的な実験は2年目に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、電界放出を単一電子制御で検出・制御するナノ構造を試作し、将来的に真空中の単一電子制御に使用可能な電子源の創出を目指した要素技術の開発を行うことを目指している。初年度の計画としては、必要となる物品の購入、電界放出デバイスのシミュレーション、デバイスの設計、素子の試作、測定装置の開発などを予定していた。物品として想定していたのは、素子の作製に必要となるSOI基板、高周波反射測定などに必要となるアンプやミキサーなどの高周波回路部品、高真空冷凍機の実現に必要となる真空部品などである。特に真空中の単一電子の実験では、真空度が重要になるが、従来の冷凍機のように断熱を主目的とした真空断熱槽では真空度の面で不十分であり、排気効率を改善し真空度を向上させた冷凍機の設計が必要となる。初年度には、そのような冷凍機の実現に必要となる真空槽の設計を行った。初年度中に設計を完了させ部品の注文まで進めたかったが、企画室への出向などもあり、現在も設計を継続中の段階であり、やや遅れ気味の進捗となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、電界放出型のデバイスの設計や高真空タイプの冷凍機の設計を継続し、実験に進めるよう取り組む。電界放出で鍵となる電場の先端部への集中は、電極の形状や基板の誘電率に依存するため、まずは有限要素法を用いて素子構造をシミュレートし、トンネル確率など数値的な検証を行い、最適化した素子設計を行う。ナノ構造を用いた方法のほかにも、光を用いる方法によっても可能になるという情報を得たので、それらの知見をもとに素子設計を進める。設計に基づき、素子の作製に進む。本研究では、将来的に真空中の電子を制御して量子制御に用いることを念頭に研究を行っているが、研究期間中に、新たな知見として、加速器に入れる電子線や放射線源に使用する電子線の電流量を正確に決定したいという要望があることを知った。本研究で開発する単一電子源が、将来的にこのような線源としての応用も期待されることから、そういった知見を念頭に設計を継続していく。
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