Study on the identification of areas at risk of long-distance flow-type landslide and disaster mitigation measures
Project/Area Number |
23K17769
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 22:Civil engineering and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清田 隆 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70431814)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 大規模地盤流動 / 液状化 / スラウェシ島地震 / 被圧地下水 / 地盤流動 / インドネシア・スラウェシ島地震 / 現場調査 / GIS |
Outline of Research at the Start |
2018年インドネシア・スラウェシ島地震で発生したPalu市の大規模地盤流動は、超緩斜面地盤で数百m~1km以上の流動が複数個所で発生し、2000人を超える死者を出した。この地盤災害は世界的にも稀であり、同様の壊滅的な地盤流動の可能性を有する地域の比定とリスクの検討は危機管理上非常に需要である。本研究では、被災地調査に基づく知見と室内実験および数値解析により、地震時における地盤流動の発生条件を整理する。また、GISによる広域的な分析により、被災地と整合する地形・地盤条件を有する地域の比定を目指すと共に、詳細なフィールド調査を通じて将来的に発生し得る地震を考慮した被害予測と対策の道筋を示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2018年9月のインドネシア・スラウェシ島地震で発生したPalu市の大規模地盤流動は、従来の常識を大きく覆し、僅か1~4%程度(0.5~2.5°程度)の地表面勾配にもかかわらず数百m~1km以上の流動が4か所で発生し、2000人を超える死者を出した。この地盤災害は世界的にも前例がなく、稀有なものと捉えられた一方、同様の壊滅的な地盤流動の可能性を有する地域は世界中に数多く分布するものと考えられ、その地域の比定とリスクの検討は危機管理上非常に需要である。本研究では、応募者のこれまでの活動を踏まえ、Palu市の被災地と整合する地形・地盤条件を有する地域の比定を目指すものである。 初年次においては、Palu市の大規模流動のメカニズムについて、これまで実施してきた現地踏査に加え、ボーリング調査で確認された地下水位、および現地の降雨量と蒸発散量を考慮した浸透流解析により、流動の誘因となった地震前の被圧地下水の定量的な評価を行った。また、浸透流解析による流動域の水圧分布と、原位置試料を用いた室内土質試験結果(三軸液状化試験)に基づく液状化解析を実施し、比較的締まった地盤であっても被圧地下水の存在により液状化が発生し、その後被圧地下水が地表面に流入して大規模流動に繋がるプロセスを示した。また、2023年12月に中国甘粛省で発生したJishishan地震では、Paluの大規模地盤流動と似た形態の被害が発生したことから現地調査を実施した。その結果、流動の形態だけでなく、流動域の地形および堆積域の地下水環境についてもPaluの被災地と比較的似通った特徴を有していることが判明した。一方、流動した地盤は中国内陸部に特有の黄土であり、その特性が流動の発生に及ぼす影響は今後検討する必要がある。また、これらの海外の事例を参考に、国内を対象に地盤流動リスクを有する地域の調査・分析を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地震時に発生し得る大規模地盤流動の地盤環境的特徴を明確にするため、スラウェシ島地震のPalu市とその周辺地域で発生したケースを対象に検討を実施した。この流動地すべりの特徴は、約1~5%程度の超緩斜面地盤で発生したことであり、その流動距離は数百m~1km以上にも及んでいる。地すべりが発生した地域は、東西の山地に挟まれた幅約10kmの低地と扇状地との境界部分である。既往研究では、地盤流動域の直上にあった灌漑用水路からの恒常的な漏水とそれに伴う地下水位の上昇により、地震時に液状化が発生して流動を引き起こしたとの仮説もあるが、灌漑用水路が無い場所でも大規模流動が発生していること、および本事象は一般的な液状化流動とはその規模と水量が全く異なることから、地震前より確認されていた被圧地下水が重要な役割を果たしたと考えられる。流動メカニズムにおけるこの重要な点も明確にするため、調査地で行われたボーリング調査結果とそれに基づく浸透流解析・液状化判定を通じ、大規模地盤流動の発生に及ぼす被圧地下水の影響について検討した。 浸透流解析結果より、流動域内の礫質土層(帯水層)の特殊な分布形態により、地震前においては地すべり域上部のシルト質砂層の地下水は静水圧よりも約50~60kPa大きくなっていたことが示された。一方、灌漑用水路存在が間隙水圧に及ぼす影響はほとんど無い結果となった。この浸透流解析により得られた水頭分布を用い、シルト質砂層を対象に実施した簡易液状化判定を実施した。なお、当該層の液状化強度は、不撹乱試料を用いた三軸液状化試験結果を用いた。被圧地下水を考慮すると、地震によりほぼ全層にわたり液状化が発生する結果となり、礫質土層から供給された大量の被圧地下水が、シルト質砂層の液状化とそれに伴う変形・亀裂によって長時間にわたり表層地盤に流入し、大規模な長距離地盤流動に繋がったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Palu市で発生した大規模地盤流動と類似の形態の地すべりが中国甘粛省・Jishishan地震(積石山地震)で発生したことから、昨年度はその現場調査を実施した。当該地すべりの流動域の上流に丘陵地があるが、そこから流動域まで直接・間接的に水を供給する河川等は確認されず、Paluのケースと同様に上流域の土地は乾燥している。これは、降雨や融雪が地表流下せずに地下浸透していることを示している。従って、Jishishan地震による地すべり地の地盤の断面構造がPalu市のものと同様であった場合、流動域の地下水位とその圧力に影響を与えていた可能性は高い。一方、スラウェシ地震とJishishan地震による大規模地盤流動が同じメカニズムであることを示す基礎資料はまだ十分ではないため、2024年度では流動後の変状形態と湧水、流動部上位にある緩傾斜の扇状地、降雨浸透量、流動域の地盤種別に着目して、両者の類似性を明らかにする。また、我が国においてこれらと共通する地理的特性を有している地域の一つとして、富山県黒部市生地地区に注目している。当該地区では、12世紀ごろに大きな地盤流動が発生して大きな被害が生じたことが歴史的事実として伝わっている。また、Paluの地すべりの検討を通じて、大規模地盤流動は同じ場所で発生する可能性が考えられることから、今後は生地地区の過去の地盤流動規模と地盤構造を現地調査と既往ボーリングにより分析し、将来の地盤流動リスクについて検討する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)