Project/Area Number |
23K17804
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 25:Social systems engineering, safety engineering, disaster prevention engineering, and related fields
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
安永 数明 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (50421889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 耕介 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10634123)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
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Keywords | 豪雨 / メソ気象学 / 層状性降水 / 気象災害 / 梅雨 |
Outline of Research at the Start |
本研究では,梅雨期に発生する豪雨の抑制に関わる基礎研究を行う。具体的には,積乱雲から水平に拡がる“層状性の降水”に着目して,その降水を強化することで雨の元となる水蒸気を減少させる手法について検討する。研究手順としては,降水システムにおける層状性の降水と水蒸気量の変化の関係を明らかにすると共に,幾つかの豪雨事例を数値モデルで再現して,人工的に層状性降水を強化した感度実験を行うことで水蒸気や降水の影響を調べる。近年の気象災害の激甚化の一部の原因は,人為起源CO2に伴う温暖化にある可能性が指摘されている。こうした背景において本研究は,減災という現代社会の最も要請の高い課題の1つに挑むものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,「暖候期の豪雨を人工的に抑制する手法に関しての基礎的な知見を得る」ことを目的としている。具体的には,梅雨後期から夏季の降水システムに関して,積乱雲から水平に拡がる“層状性降水”に着目しながら雲微物理過程と水蒸気の変動の関係を明らかにすることである。本年は,豪雨事例を数値気象モデル(SCALE)で再現し,その再現性と実験設定との関係性について整理した。対象とした豪雨事例は,2021年8月11日から19日の九州付近を中心に発生したもので,気象庁が編集している「災害をもたらした気象事例」にも含まれている。まず領域の大きさの影響を調べるために,①水平解像度を固定のまま東シナ海から東アジア全体に及ぶものまで4種類の領域に対して実験を行った。また雲微物理の影響を調べるために,②降水の粒径分布に関わるパラメータを4通り変化させて,結果を比較した。①に関しては、最も広範囲をカバーする実験と東シナ海だけを対象とする実験で、9日間の総合的な降水のパターンの再現性が良く,その間の中国大陸をカバーする程度の中程度の領域実験では再現性が劣ることが多いことが分かった。②に関しては,先行研究で提案されたGreen関数法から雪の粒径を小さくしながら、雹の粒径を少し大きくするように調整した実験で,降水の9日間の総合的な再現性が上がることが示唆された。 また本研究課題で想定する「豪雨における層状性降水の強化を通じた水蒸気の減少」の効果を調べるために、人為的に雲微物理過程のパラメータを層状性降水が強化する方向へと人工的に変化させる感度実験を行った。この感度実験では、標準実験に比べて大気中の水蒸気量が1-2%程度低下したが、全体の降水量に関しては顕著な変化は見られなかった。一方で、強い降水の極大の値は小さくなっていることが多く、全体というよりは局所的な豪雨抑制の可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
豪雨事例を数値気象モデル(SCALE)で再現し,その感度実験を複数実施している点に関しては、当初の計画通りとなっている。通常の数値予報では,様々な実験においてRobustな結果が得られることが望ましいが,ここでは気象改変の可能性という点で,むしろ数値モデル内で再現される大気状態が安定的でないことが重要な意味を持つ。そういったことから,複数の感度実験を行い,その変動幅を見積もることは本課題において最も重要な要素の1つであり,それが計画通りに進んでいることから順調と判断できる。 また雲微物理過程のパラメタリゼーションの影響に関して研究分担者と議論を行い,先行研究で提案されているGreen関数法を用いて,豪雨の再現性が上がると考えられるパラメータの改良に向けた情報が得られている。今回得られた値については,現在対象としている豪雨事例にだけに有効な(どちらかというとad hocな)可能性が高いが,これをパラメタリゼーションの経験式に戻って,その物理空間での値の変化を調べるという形で研究が展開しつつある。更に,また本研究課題で想定する「豪雨における層状性降水の強化を通じた水蒸気の減少」の効果について,雲微物理パラメタリゼーションの人工的な改変による数値実験における再現性の違いから,比較的ポジティブな可能性が明らかになっている段階である。以上から,研究全体としても方向性を大きく変える必要はない。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題が対象としている豪雨事例において,数値モデル内で再現される大気状態が安定的であるかどうかについて,現在では計算領域において4つの設定,雲微物理の粒径分布に関わるパラメータにおいて4通りの設定をして,それぞれ10日間の積分を行うことで,それらの実験間の変動幅を基に評価をしている。令和6年度は,この変動幅の確信度を上げるために,計算開始時刻を少しずつ変えながら,更に初期にランダムなノイズを与えることによって,感度実験の数を増やす予定である。現在の計画では,約100程度の追加の数値実験を行う考えである。また一連の実験に加えて,本課題で最も着目する「雲微物理パラメタリゼーションの人工的な改変による層状性降水の強化実験」についても,定量的な評価に向けて実行数を多くすることを計画している。これらの計画が全て順調に進んだ場合は,得られた知見の一般性を調べるために,対象とする豪雨の事例を変える予定である。現在は,気象庁・気象研究所による線状降水帯の研究において,精力的に取り組まれてきた2020年7月に発生した球磨川豪雨を対象とする計画である。これについては, 1000程度の予報実験のデータが研究用途として入手できる可能性があるのでそれを模索しつつ,新たに100程度の数値実験を行う。これらの計算結果を全て保存し,そのデータを用いて解析を行うためには,約400 TB程度の記憶容量が必要であることから,令和5年度においてそのためのRAIDサーバの購入し設置済みである。また計算を実施するにあたって,東京大学の大型計算機の気候システム研究系共同研究に採択されており,計算機資源も確保できている。以上から,これらの研究計画を実行するにあたっての計算機環境についての大きな問題はない。
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