Project/Area Number |
23K17863
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 28:Nano/micro science and related fields
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吾郷 浩樹 九州大学, グローバルイノベーションセンター, 教授 (10356355)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
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Keywords | 六方晶窒化ホウ素 / 磁気トンネリング素子 / CVD / スピンコヒーレンス / 六方窒化ホウ素 / 磁気トンネル接合素子 / トンネル磁気抵抗 / 化学蒸着法 |
Outline of Research at the Start |
磁気トンネル接合(MTJ)素子は、トンネル磁気抵抗(TMR)効果と呼ばれる大きな磁気抵抗を示し、MRAMやHDの磁気ヘッドから超高感度磁気センサーまで幅広い応用が進んでいる。代表的なMTJ素子の絶縁層として、酸化マグネシウム(MgO)のエピタキシャル膜が広く知られているが、本研究では最先端の二次元絶縁体である六方晶窒化ホウ素(hBN)を用いて、次世代MTJ素子としての可能性を探索する。特に、当該研究者の有する多層hBNの化学気相成長(CVD)合成技術と組み合わせることで、高い磁気抵抗比を実現し、二次元材料によるイノベーションにつなげていく。
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Outline of Annual Research Achievements |
厚さ数nmの絶縁体薄膜を、強磁性体電極で挟んだ磁気トンネル接合(MTJ)素子は、トンネル磁気抵抗(TMR)効果と呼ばれる大きな抵抗変化を示し、MRAMやハードディスクの磁気ヘッドから超高感度磁気センサーまで幅広い応用が進められている。代表的なMTJ素子の絶縁層としてMgO(100)のエピタキシャル膜が広く知られているが、二次元絶縁体である六方晶窒化ホウ素(hBN)とCo(0001)との六方格子の組み合わせによってMgOを超えるMR比を示すと理論計算で提案されている。しかしながら、高品質のhBNを大面積に合成することが難しいため、hBNを用いたTMR効果の報告は数えるほどしかない。 我々は、金属触媒を用いた多層hBNのCVD成長の研究を独自に続けてきており、比較的均一性の高い多層hBNを合成できるようになっている。そこで、本研究では、CVD法によって合成したhBNを用いてMTJ素子を作製し、世界に先駆けて高いMR比をhBNで実現することを目的とした。 実験ではサファイア基板の上に堆積させたFe-Ni合金を用い、ボラジン原料と高温で反応させた。ラマン分光、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型電子顕微鏡(STEM)を組み合わせた複合的な解析から、主に2層から3層のhBNが合成できたことが分かった。このような数層の厚みは、効果的なトンネリングに有効であると期待できる。 さらに、このhBNを用い、転写プロセスを経ることなく、MTJ素子を作製して動作させることに成功した。触媒となるFe-Niを下部磁性電極として用いることで、界面汚染や電極酸化を抑制でき、結果として10%の高いMR比を得ることが出来た。これは、従来報告されてきた転写したhBNのMTJのMR比(1%程度)をはるかに上回るものであり、今後、より一層の高いMR比が期待できる成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Fe-Niの合金触媒を用いたCVD法によって数層hBNを制御しながら合成できた。そして、ラマンマッピング、AFM、STEM測定などから、単層から四層のhBNが主で、特に二層領域が50%以上を占めていることも明らかにできた。これまでCVD法で単層hBNを合成した論文は多数あるが、このように数層を制御しながら合成した例はなく、先駆的な成果といえる。さらに、STEMからは二層hBNは最も安定なAA’積層をもつことも確認できた。一方、三層になると、回転積層が部分的に生成しており、積層構造が成長メカニズムと関連することを示唆する結果を得た。なお、このAA’積層はスピンコヒーレントなトンネリングに効果的である。 その後、フォトリソグラフィで、as-grownのhBNにパターニングを行い、上部に強磁性電極を堆積させ、MTJ素子を多数作製した。転写プロセスを用いず、CVD成長した数層hBNをそのままFe-Ni上でデバイス化することは、界面のコンタミネーションを防ぎ、かつ酸化しやすい強磁性電極の酸化を抑制するために効果的であると考えられる。この数層hBNを磁場中で低温で測定したところ、最大で10%の高いMR比を得られた。従来のCVD合成したhBN膜を転写したMTJ素子では1%程度のMR比しか報告されていなかった。このことから、我々の層数制御した数層hBNの合成、ならびにダイレクトなデバイス測定が極めて有効だったことを示しているといえる。 さらに、各素子の抵抗値から、MR比がhBNの層数に依存する傾向も見出しており、今後のさらなる高いMR比の実現に向けた大きな結果も得られている。なお、本研究は初期的な段階であるが、そのような状況にあるにもかかわらず、高いMR比が得られたことから、今後、さらなる高機能化が期待できると考えられる。このhBN-MTJ素子の成果は、論文として、投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も継続して数層hBNのさらなる層数制御とMTJ素子の高度化を進める。特に、触媒金属の種類やCVD合成の条件など多角的な観点から検討を行う。同時に、上部の強磁性電極についても、hBNに適した電極を探索していく。さらに、数層hBNを介した強磁性電極間のスピンコヒーレントなトンネリングを実現するため、デバイス構造に関しても、複数の可能性を検討することを計画している。 このような研究を通じて、世界トップレベルの高いMR比を得て、革新的な研究成果の実現に結び付けていく。
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