波動関数理論を活用する化学反応ポテンシャル面の高精度化:反応座標分離アプローチ
Project/Area Number |
23K17898
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 32:Physical chemistry, functional solid state chemistry, and related fields
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 淳也 北海道大学, 触媒科学研究所, 教授 (30322168)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 変数分離 / 電子状態 / 固有反応座標 / 波動関数理論 / ポテンシャル面の精密化 / 反応座標分離 / ポテンシャル面の高精度化 |
Outline of Research at the Start |
ポテンシャルエネルギー面の計算は,広く化学で重要な研究になった.しかし,計算に使用される密度汎関数理論は依然として解決が困難な課題を抱えており,精度を系統的に向上することが難しい現状である.本研究では,反応座標を分離するアプローチをとることで,高精度波動関数理論を活用して化学反応ポテンシャル面の計算精度を向上する手法の開発を試みる.
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Outline of Annual Research Achievements |
【背景】昨今,密度汎関数理論(DFT)を使用する化学反応エネルギー面の計算は,実験科学者にも広く普及した。しかし,その信頼性に問題が生じている。DFT計算の精度を決める相関交換汎関数の多くには複数のパラメータを導入し,実験データを再現するように決定しているが,厳密性を欠いており,活性化エネルギーや反応エネルギーの精度を系統的に改善する方法は未だ見出されていない。 波動関数理論(WFT)では基底関数と他電子波動関数を系統的に改善することで,厳密解に至る理論階層が明らかになっている。しかし,高精度理論の多くは (i)計算時間を要し,(ii)解析的エネルギー微分が実装されていない理論はポテンシャル曲面上の構造最適化が難しいなどの理由で実用には至っていない。すなわち,半世紀にわたるWFTの開発成果が化学反応論に活用できておらず,極めて残念な状況である。 【目的と方法】本申請では,WFTを活用して化学反応ポテンシャル面の計算精度を向上することを目的とする。これにより,遷移金属をはじめとする複雑電子系のポテンシャル面の精度を改善する。 化学反応経路を定義する標準的手段として固有振動座標(IRC)が用いられる。IRCは原子核の変位を表す1次元曲線である。他方で,解析的エネルギー微分が実装されていないWFTであっても,1次元曲線上での構造最適化は容易である。したがって,IRCを主反応座標として変数空間を分離すると,WFTを化学反応論に活用する道が開ける。 【研究成果】いくつかの分子において,IRCの精密計算を行った。NEB法を用いた計算行ったが,計算精度に問題があることが分かったため,GRRMプログラムを用いた計算に切り替えて対応した。DFT計算によるIRCに沿って,より高精度波動関数理論を用いた一点計算を行い,波動関数理論による一次の補正を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題として考えていたIRCの計算手段に目途が立った。研究計画の当初には,IRCの計算にNEB法の利用を計画していた。しかし,NEB法から得られるエネルギー極小経路は精密化することが困難であることが分かった。GRRMプログラムにおける計算プログラムは,精度良くIRCを計算することが分かった。これにより,反応座標を分離する際に必要となるIRCの数値データを計算できることが分かった。 IRCに沿ってWFTを用いる計算を実施して,ポテンシャル面が精密化することを示す目的で,proof-of-concept(PoC)型の研究を進めている。有機分子の反応,遷移金属錯体を含む分子の反応などの中から,代表的な分子をとりあげて,主要な遷移状態についてのIRCを求めている。また,高精度波動関数理論の中から本研究の目的に合致した手法を見出す試行計算を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,先の項目に述べたPoC型の研究を継続して実施する。今日見られる化学反応ポテンシャル面の計算では,wB97XD/6-31G*レベルの電子状態計算を用いて構造最適化を行い,基底関数を6-311+G(2d,p)まで拡張しての一点計算を行う例が多くみられる。この標準的なプロトコルによる計算精度を評価することを目指す。具体的には,wB97XD/6-31G*レベルの計算で得られたIRCについて,6-311+G(2d,p)レベルの計算によって補正する。次に,波動関数理論として,CCSD(T)やCCRC(2,4)などで表記されている電子状態理論を用いた計算を実施する。これによって,活性化エネルギーや反応熱の計算値の変化についての正しい知識をえることとする。 また,当該分野の研究を推進するにあたり,雇用できる若手研究者が見当たらない懸念がある。加えて,研究代表者は付置研に所属するため,研究を担う学生数が少ない課題がある。残念ながら,初年度は研究を担当する学生を見つけることができなかったが,二年目以降は研究室内での調整を経て,研究を担当する博士研究員を見出すことができた。初年度の研究費使用を抑えて,二年目以降に使用する計画を立てた。
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Report
(1 results)
Research Products
(17 results)