Project/Area Number |
23K17905
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 32:Physical chemistry, functional solid state chemistry, and related fields
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
立川 仁典 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 教授 (00267410)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
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Keywords | 量子多成分系分子理論 / データ科学 / 低障壁水素結合 / 水素結合型強誘電体 / 高感度緑色蛍光タンパク質 |
Outline of Research at the Start |
水素移動障壁が著しく小さな低障壁水素結合 (LBHB) が結晶中や生体超分子に含まれると、その周囲環境に応じた特異な物性や機能が発現する。本研究では、立川が独自に開発している、水素の量子効果を直接考慮できる新しい量子化学手法である、量子多成分系分子理論の高度化により、この課題に挑戦する。具体的には、第一の目的として、量子多成分系分子理論とデータ科学の融合により、周囲環境を取り込むための手法の開発とデータ科学による第一原理力場の作成に挑戦する。これにより、第二の目的として、局所的なLBHBが含まれる、水素結合型強誘電体や高感度緑色蛍光タンパク質の系統的理解に挑戦する。
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Outline of Annual Research Achievements |
水素移動障壁が著しく小さな低障壁水素結合 (LBHB) が結晶中や生体超分子に含まれると、その周囲環境に応じた特異な物性や機能が発現する。しかしながら、それら発現機構は未だ解明されていない。一方、理論計算でその機構を理解するためには、水素自身の量子力学的効果が重要であるものの、従来の量子化学計算だけではその効果を取り込むことができなかった。そこで本研究では、立川が独自に開発している、水素の量子効果を直接考慮できる新しい量子化学手法「量子多成分系分子理論」の高度化により、この課題に挑戦した。 具体的には、量子多成分系分子理論を用いて周囲環境効果を含めた実構造に近い計算を実現するために、多階層マルチスケール法を開発した。この手法では、反応活性部位には立川の量子多成分系分子理論を、固体電子状態(特に金属結合)には平面波基底を用いた周期境界系の密度汎関数計算(バンド計算)を、そしてタンパク質や溶媒には分子力場計算を適用した。また、低障壁水素結合が引き起こす多彩な物性機能の発現機構に対する系統的理解のために、本手法を水素結合型強誘電体における相転移発現機構の理解に適用した。水素結合型強誘電体は、重水素置換に伴い相転移温度が100K近く上昇するが、その物性変化の原因は解明されていない。そこで様々な水素結合型強誘電体の大規模計算を行い、重水素置換効果を解析した。また、高感度緑色蛍光タンパク質の発色団近傍における、精妙な水素結合ネットワークを介した水素移動機構を解明するために、軽水素を重水素に置換した計算を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子多成分系分子理論と周囲環境効果を含めるために、反応活性部位には立川の量子多成分系分子理論を、固体電子状態(特に金属結合)には平面波基底を用いた周期境界系の密度汎関数計算(バンド計算)を組み込み、特に二次微分の実装および具体的計算に成功した。また、低障壁水素結合が引き起こす多彩な物性機能の発現機構に対する系統的理解のために、本手法を用いて水素結合型強誘電体の大規模計算を行い、重水素置換効果を解析した。さらには、高感度緑色蛍光タンパク質の発色団近傍における、精妙な水素結合ネットワークを介した水素移動機構を解明するために、軽水素を重水素に置換した計算を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
【1】量子多成分系分子理論とデータ科学の融合による新たな計算化学手法の開発: (1A) 大規模計算手法の開発: 応活性部位には立川の量子多成分系分子理論を、固体電子状態(特に金属結合)には平面波基底を用いた周期境界系の密度汎関数計算(バンド計算)を組み込んでいるので、さらには溶媒等には分子力場計算を組み込む。また、それらを含めた上での、全エネルギーだけでなく、力の計算や振動数計算にも展開させる。 (1B) データ科学による第一原理分子力場の開発: データ科学による第一原理分子力場を開発し、従来の計算環境では不可能であった計算を実現させる。構造・エネルギー値・微分値を一組みとする学習データを数万回のサンプリングで収集し、データ科学(ニューラルネットワークと機械学習)を用いて水素の量子効果を含めた計算を実現する。特に、機械学習ポテンシャルを作成することを目指す。 【2】低障壁水素結合が引き起こす多彩な物性機能の発現機構に対する系統的理解: (2A) 水素結合型強誘電体における相転移発現機構の理解: 水素結合型強誘電体は、重水素置換に伴い相転移温度が100K近く上昇するが、その物性変化の原因は解明されていない。そこで様々な水素結合型強誘電体の大規模計算を行い、重水素置換で生じる、LBHBが相転移発現に与える影響を、引き続き解析する。 (2B) 生体超分子中の水素移動における機能発現機構の理解: 高感度緑色蛍光タンパク質の発色団近傍における、精妙な水素結合ネットワークを介した水素移動機構を解明する。特に本年度は、励起状態に焦点を充て、軽水素を重水素に置換した計算を行い、H/D同位体効果を理論計算により評価する。
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