Project/Area Number |
23K17915
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 33:Organic chemistry and related fields
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山下 誠 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10376486)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
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Keywords | ホウ素 / アルミニウム / 結合性空軌道 / π共役系分子 / 電子効果 |
Outline of Research at the Start |
本研究では代表者らがジボラン(4)の化学を展開する中で独自に開拓してきた結合性空軌道という考え方を、π共役系分子の設計へと拡張して、有機π電子系化合物に対して摂動を与える新しい手法として確立することを目指す。具体的にはジボラン(4)の利用法として(1)電子対の無い電子求引性置換基としての利用、(2)電子注入可能なスペーサーとしての利用、(3)内部埋込ユニットとしての利用、を行うことを計画している。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画に記載した項目(1)-(3)のうち、以下に示した(2)および(3)の研究を行った。 (2)電子注入可能なスペーサーとしての利用:本項目では、ジボラン(4)の二つのホウ素原子が同じπ共役系へ結合した分子の合成を行うことを目的として、ビスカテコラートジボランおよびジアミノジハロボランに対するジアニオン性炭素求核剤の反応を行った。前者は直接1段階で目的生成物を得ようとする経路であり、後者は段階的な反応を経由する合成戦略である。前者の反応ではその条件により、目的の炭素4置換ジボランが生成したと考えられる結果も得られたが、現在までに単離には至っていない。後者の反応では炭素2置換ジボランは発生していることをNMRスペクトルにより確認したが、後続の反応における置換基変換により複雑な混合物が得られている。 (3)内部埋込ユニットとしての利用:本項目では、ジボラン(4)を芳香族分子内部に埋め込んだ分子としてフェナントレン誘導体とピレン誘導体を合成することを目指して、鍵中間体と位置づけられるボラタベンゼン二量体の合成に着手した。既知のボラベンゼンに対して水素化リチウムアルミニウムを作用させることで、ヒドリド置換ボラタベンゼンのテトラブチルアンモニウム塩を単離、X線結晶構造解析によりその構造を確定している。現在はこのヒドリド置換ボラタベンゼンの触媒的脱水素二量化反応により、B-B結合を有するビスボラタベンゼンを得るための条件検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(2)電子注入可能なスペーサーとしての利用:これまでに我々が報告した炭素4置換ジボランの合成を参考に、ビスカテコラートジボランに対して炭素求核剤を反応させる検討を行った。1-ナフチルGrignard反応剤を用いると、テトラ(1-ナフチル)ジボランが得られることを見いだしたが、1,β-ジリチオスチレンまたは対応するGrignard反応剤を用いた場合は、生成物の同定には至らなかった。一方、ジアミノジクロロジボランに対してジリチオスチレン誘導体を反応させたところ、炭素2置換ジアミノジボランに帰属可能な生成物が得られた。アミノ基をさらにハロゲン、炭素置換基へと変換する検討を行ったものの、これまでに標的化合物の生成を確認はできていない。 (3)内部埋込ユニットとしての利用:目的のB2含有フェナントレン誘導体およびピレン誘導体はいずれも、部分構造としてビスボラベンゼン構造を持つため、まずビスボラタベンゼンの合成に着手した。既知のボラベンゼン・トリエチルアミン錯体に対して水素化アルミニウムリチウムを作用させることで、ヒドリド置換ボラタベンゼンのリチウム錯体を得ることができた。これを塩化テトラブチルアンモニウムで処理することでアニオン交換を行い、ボラタベンゼンのアンモニウム塩へと誘導した。このリチウム塩およびアンモニウム塩に対して、炭化水素の脱水素化に活性を有する遷移金属触媒を作用させることで脱水素化によるB-B結合形成を検討しているが、ビスボラタベンゼンの同定には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は研究計画(1)「電子対の無い電子求引性置換基としての利用」にも着手する。具体的にはジボランをacceptorとしたdonor-acceptor型分子やジボランの両側へπ共役系を伸長した分子を合成し、これらの光学特性等を明らかとする。ここではジボラン(4)部位の置換基効果を物理有機化学的な視点で各種測定を通して明らかにすることに主眼を置く。研究計画(2)については、ビスカテコラートジボラン前駆体やジアミノジクロロジボラン前駆体に対して、ジアニオン性炭素求核剤として有機亜鉛および有機スズを反応させる検討を行うと共に、シロール誘導体からのトランスメタル化も合わせて検討を行う。研究計画(3)については、現在行っている均一系脱水素化触媒を用いる検討を継続すると共に、金属錯体に対してB-H結合を酸化的付加させた後に、ボラベンゼン・トリエチルアミン錯体などの求電子的なホウ素を反応させる経路についても合わせて検討を行うこととしている。
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