Project/Area Number |
23K17916
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 33:Organic chemistry and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
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Keywords | 開口フラーレン / 二量体 / ホモキラル / ヘテロキラル / キラリティ / 拡張フラーレン |
Outline of Research at the Start |
金属元素を含まずに軽元素のみから構成され、良好な円偏光発光特性 (CPL) を示す有機分子として、開口部をもつフラーレン誘導体に着目した。これらは市販のフラーレン C60 から2-4段階の反応操作で合成することが可能である。本研究では、これら化合物の開口部変換反応を開発することによって、良好な発光量子収率 Φ, ならびに発光における円偏光度 glum を有するキラルナノカーボン分子を合成する。
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Outline of Annual Research Achievements |
ホスフィンを用いた開口フラーレン誘導体において、分子間のカルボニルカップリングを目指し、条件検討を行なった結果、2 equivのPMe3を用いることで、同一のエナンチオマー同士が連結した二種類の二量体がそれぞれラセミ混合物として、異なるエナンチオマー同士が連結したメソ体が得られた。NMRとMS測定の結果、主生成物は二重結合で開口フラーレンが連結された分子であり、副生成物は単結合で連結された二量体であることがわかった。さらに、メソ体でも単結合で連結された構造をもつことが明らかとなった。ホモキラル二量体がヘテロキラル二量体に比べ優先的に生成していることから、本反応はホモキラル認識に基づく選択性をもつと考えられる。そこで、エナンチオピュアな開口体を用いて反応を行なったところ、メソ体の生成は確認されず、2種類のホモキラル体がそれぞれ32%、13%という高収率で得られることがわかった。また、別途単離したホモキラル二重結合連結体をPMe3存在下150度で加熱したところ、単結合体が49%の収率で得られたことから、原料の開口体から生成した二重結合連結体が反応系中でPMe3と反応し、単結合連結体が生成すると考えられる。これらの二量体は開口C60誘導体を直接連結した初めての例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、フラーレン C60 や C70 の炭素骨格を温和な条件で切断し、構造の明確な開口部をもつナノカーボン分子を合成する研究を行ってきた。これらの分子は、原料のフラーレンから2-4段階の簡単な合成操作によって合成することが可能である。また、これらの分子は開口部の構造と官能基の配置に関してキラルであるものの、そのキラリティに関する研究はほとんどなされてこなかった。しかし最近、我々は開口 C60 誘導体を光学分割し、その gabs 値が0.20と極めて大きな値であることを見出した。 すなわち、巨大な円偏光度をもつ化合物が簡便な合成操作で大量に得られ、また、この化合物では更なる構造変換と炭素骨格内部への化学種の包接が可能である。加えて、これらでは、光学特性を自在に調整し、センサー機能をも付与できる可能性がある。これらのメリットは、比較的小さな円偏光度をもつ化合物が多段階の合成操作によって少量のみ得られるという現状に変革をもたらし、この研究分野を大きく発展させる可能性を持っている。
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Strategy for Future Research Activity |
通常の有機分子では、発光波長や発光の量子収率等のπ共役系の性質を変化させるには、π系へ置換基を導入する手法が広く用いられている。しかし、置換基導入には複数の余分な合成ステップが必要であり、系統的な検討を加えることは通常困難である。吸収波長や発光波長は事前のDFT計算にて予想がつくものの、発光の量子収率については無輻射失活の効率に依存しているため、予測がつかない。そのため、標的分子が望みの光学物性を示すとは限らず、良い物性を示す分子の実現には、通常、合成と評価、それに基づいた分子設計の繰り返しが必要である。 一方、フラーレン誘導体では、球状のπ共役系を切断していくことによって、蛍光の量子収率を大きく向上できることが知られている。そこで、球状のπ共役系を戦略的に切断し、吸収波長を望みの領域へとシフトさせ、剛直な炭素骨格とコンパクトになったπ共役系に由来する高い発光量子収率を実現させることに取り組む。すなわち、開口体への更なる付加反応やダブルホール誘導体を基盤とした新規キラルナノカーボンを合成し、巨大 gabs 値を保ったままで、良好な Φ と glum を実現させる。
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