Project/Area Number |
23K17922
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 33:Organic chemistry and related fields
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柴田 高範 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80265735)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
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Keywords | 円偏光発光 / π-π相互作用 / 軸不斉 / 付加環化反応 / Suzukiカップリング / ヘテロール |
Outline of Research at the Start |
キラルな光である円偏光(CPL)が、高輝度液晶ディスプレイの光源や新たな光情報通信の基盤技術として注目される中、「円偏光発光材料としての低分子有機化合物」の開発が強く求められている。本申請研究では、適度な可動性を有するジベンゾヘテロール類のπ-π相互作用を優れた円偏光発光特性創出の戦略として、ヘテロ芳香環により構築される軸不斉テルアリール化合物の不斉合成とキロプティカル特性の系統的評価を目的とする。具体的には、アリール基として酸素、硫黄、窒素、ケイ素などのヘテロ原子を有するジベンゾヘテロールを選択し、軸不斉化合物における光機能性を評価する。
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Outline of Annual Research Achievements |
次世代のディスプレイや照明を実用化するための基礎材料のひとつが「発光性有機分子」であり、新規な機能性有機化合物の開発が盛んに行われている。特に最近、キラルな光である円偏光発光(CPL)が、高輝度液晶ディスプレイの光源や新たな光情報通信の基盤技術として注目される中、「円偏光発光特性を有する低分子有機化合物」の開発が強く求められている。本研究では、適度な可動性を有する含ヘテロ原子芳香環間のπ-π相互作用を利用し、優れた円偏光発光特性を有する新規化合物群の創製を目指す。具体的には”heteroaromatic wall”(ヘテロ芳香環による壁)により構築される軸不斉テルアリール化合物の不斉合成と、それらのキロプティカル特性の系統的評価を目的とする。本年度は、ナフタレンの1,8位に2つのアリール基を導入した軸不斉化合物の触媒的不斉合成を目指した。まず1つ目のアプローチとして、付加環化を鍵反応として利用した。すなわち、1-アリール-8-アルキニルナフタレンを基質として、ジインとの[2+2+2]付加環化反応を行い8位に芳香環を構築することで、軸不斉の創製を行った。その結果、キラルロジウム触媒を用いることにより、最高>99% eeを達成した。2つ目のアプローチとして、カップリングを利用した。すなわち1,8-ジハロナフタレンに対し、キラルパラジウム触媒による連続的Suzukiカップリングにより、軸不斉の創製を行った。その結果、現時点では1,8-ジヨードナフタレンに対するモノアリール化が高エナンチオ選択的に進行し、光学活性なヨードナフタレンを最高95% eeで得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1-(エトキシカルボニルエチニル)-8-フェニルナフタレンを電子不足なモデルアルキンとして選択し、窒素架橋1,6-ジインとの分子間[2+2+2]付加環化反応を検討した。キラルロジウム触媒存在下で反応を行ったところ、所望の環化体として1-アリール-8-フェニルナフタレンを高鏡像体過剰率で得たが、1,6-ジインの自己二量化体が主生成物でった。1,6-ジインの活性が高いことがわかったので、キラルロジウム触媒と電子不足モノアルキン存在下、1,6-ジインをゆっくり滴下したところ、所望の環化体が高収率かつ高鏡像体過剰率で得られた。一方、1,8-ジヨードナフタレンに対するキラルパラジウム触媒による不斉Suzukiカップリングの検討として、発光性有機化合物の合成を視野に入れて、1-ピレニルホウ酸をモデル化合物として選択し、反応条件の検討を行った。キラルなジホスフィン配位子、ホウ酸の当量、溶媒等の精査の結果、ピレニル基が1つ導入されたモノカップリング体として、1-ヨード-8-ピレニルナフタレンが、高収率かつ高鏡像体過剰率で得られた。連続的不斉Suzukiカップリングを目指し、過剰量の1-ピレニルホウ酸を用い、1,8-ジピレニルナフタレンの不斉合成を行ったが、2段階目のカップリングの進行が遅く、多くのプロトン化体が副生した。 付加環化反応ならびにSuzukiカップリングの2つの手法により、当初の目的であったナフタレンの1,8位に2つのアリール基を導入した軸不斉化合物、あるいはその前駆体の触媒的かつ高エナンチオ選択的不斉合成を達成できたので「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
分子間[2+2+2]付加環化反応に関しては、まず1,6-ジインの検討を行う。すなわち、モデルジインとして使用しているアルキン上に置換基を持たない窒素架橋1,6-ジインに代え、酸素架橋、炭素架橋ジイン、あるいはアルキン上にアルキル基やアリール基を有する種々の1,6-ジインを基質として用いる。さらにπ拡張が可能であるオルトフェニレン、あるいはナフチレン架橋のジインも検討する。一方、アリール基して、モデルのフェニル基に代え、電子的に、あるいは立体的に異なる種々のアリール基を検討する。さらに「発光性有機分子」の創製のため、発光団としてピレニル基、カルバゾイル基を検討し、CPL特性を精査する。また、Suzukiカップリングにより得られたキラルな1-ヨード-8-ピレニルナフタレンに関しては、結晶性が極めて高く溶解性に問題があるので、tert-ブチル基などの導入により、脂溶性の向上を検討する。そして得られた種々の1-ヨード-8-ピレニルナフタレン類を基質として用い、2つ目のアリール基の導入により、当初の目的である光学活性な1,8-ジアリールナフタレンの不斉合成を行う。嵩高いアリール基を導入する場合は、ジアステレオ選択性を達成する必要がある。そして得られたテルアリール化合物の光学的特性の測定により集積される構造活性相関の知見をもとに、より高いCPL特性を有する「発光性有機分子」のデザインを目指す。また、キラルな1-ヨード-8-ピレニルナフタレンに関しては、軸不斉を有する「光学活性ヨウ素化合物」として注目し、例えば、光学活性超原子価ヨウ素化合物としての利用を検討する。
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