Project/Area Number |
23K17944
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 35:Polymers, organic materials, and related fields
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
中 建介 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (70227718)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
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Keywords | かご型シルセスキオキサン / 表面偏析 / エントロピー / エントロピー駆動型 |
Outline of Research at the Start |
これまでに非イオン性親水性基を各頂点に導入したかご型シルセスキオキサン(POSS)誘導体を少量添加したポリ(メチルメタクリレート)溶液のキャスト法で表面偏析が起こることを見出している。この知見を基盤とし、POSS骨格の構造、有機官能基の種類や構造を系統的に変化させたPOSS誘導体を合成し、これらを添加した種々の溶媒を用いたポリマー溶液を種々の条件でキャスト法やスピンコート法を用いて薄膜を作製し、表面偏析挙動を評価することで、エントロピー駆動型表面偏析を達成させる因子を見出す。これらによって、社会実装により寄与できる低コストエントロピー駆動型表面偏析技術を実現する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究実施者が見出した剛直な無機クラスター骨格であるかご型シルセスキオキサン(POSS)に柔軟な親水性有機鎖を各頂点に有するナノ構造が制御された単一有機無機ハイブリッド分子が単純なキャスト法で表面偏析による表面親水化が達成できるという新規技術を基盤にした従来にない概念による将来の社会実装に資する革新的エントロピー駆動型表面偏析法を開拓することを目的とする。2023年度は親水性硫黄元素含有置換基を有するかご型シルセスキオキサン誘導体を少量添加したポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)溶液を室温でキャストすると、使用する有機溶媒を適切に選択することでPMMA膜表面に偏析し、表面を疎水化させることができることを見出した。また、親水性硫黄元素含有置換基が表面に露出させたPMMA膜を金ナノ粒子分散水溶液に浸漬させることでPMMA膜表面へ金ナノ粒子を担持することに成功した。さらに、表面偏析挙動は添加する化合物の溶解性に大きく影響され、溶解性が高い化合物は表面に偏析しやすいことがわかった。つまり、表面偏析において、分子の柔軟性を増大させ、エントロピーロスを補うことが重要であることを実験的に明らかにした。また、疎水性置換基を有するPOSSを側鎖や主鎖に有するポリマーは平滑な低表面エネルギー表面を得ることに有効であることから、ノルボルニル基を有するPOSSモノマーや、二官能性POSSモノマー、および不完全縮合型POSSを基盤としたシランカップリング剤を新たに開発し、それらの重合によって得られるポリマーの特性解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにPMMAを用いて表面偏析が達成できた親水性POSS誘導体は1種類のみであった。そこで本研究ではPOSS骨格の構造、有機官能基の種類や構造を系統的に変化させたPOSS誘導体を合成し、その構造や条件と表面偏析挙動との関係を明らかにすることを目的として種々のPOSS誘導体を合成し、表面偏析挙動の評価を行った。その結果、親水性硫黄元素含有置換基を有するPOSS誘導体を用いて適切な条件を設定することでPMMA中で表面偏析よって表面親水化を達成することに成功した。評価の過程で使用する有機溶媒の選択が重要であり、溶解性が高い溶媒を用いた場合に表面に偏析しやすいことを見出した。これは親水性POSS誘導体に限らず表面エンタルピー的に有利である疎水性置換基を有するPOSS誘導体の場合でも同様の挙動を示すことがわかった。 表面偏析法によって所望する物性や機能を有するセグメントを自在に自己組織的に自由表面に濃縮させる技術を開拓するという目的に対して親水性硫黄元素含有置換基は金属イオンや、金属ナノ粒子への配位能を有していることから、金ナノ粒子分散水溶液に浸漬させる検討を行った結果、PMMA膜表面へ金ナノ粒子を担持することに成功した。一方で当初の計画では反応液や外部試薬が不必要なクリーンな手法である光分解性保護基を有するPOSS誘導体を用いた検討を行うとしていたが、これらを用いたPMMA中における表面偏析の達成に至ることができなかった。よってこれらから総合的におおむね順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)表面偏析の促進には表面偏析剤の構造やキャスト溶液の濃縮過程の枯渇効果、溶媒蒸発速度や高分子-溶媒相溶性や溶質サイズなど様々なエントロピーが関与しているため、エンタルピー効果を凌駕した適切な親水化表面偏析剤を設計・制御するための基礎的理解はまだまだ不十分であると考えている。最初に表面偏析によりPMMA膜表面の著しい親水性化を達成したPOSS誘導体はオクタシリケートを基盤として柔軟な骨格であるジメチルシロキシリンカーを介した構造である。一方で、2023年度に検討した親水性硫黄元素含有置換POSS誘導体はPMMA膜表面の親水性化の程度は低かった。これは柔軟なジメチルシロキシリンカーを介さずに直接親水性硫黄元素含有置換基が結合していた構造であり、これが溶媒への溶解性を抑制しているのではと推測している。そこでPOSS骨格の構造、有機官能基の種類や構造を系統的に変化させたPOSS誘導体を合成し、これらのキャスト溶媒への溶解性とPMMA膜表面への表面偏析挙動との関係を評価し、エントロピー駆動型表面偏析を達成させる因子を明らかにする。さらに、接触角の温度依存性を測定することで表面エントロピーの評価を行う。 2)POSSに置換したアミノ基などの極性官能基を疎水性基で一旦保護し、これらをPMMAに添加して表面偏析するかを接触角測定で検証し、脱保護反応を行うことで親水性官能基を表面に有するフィルム作製を行う。 3)アクリレート系モノマーに1)と2)で得られたPOSS誘導体を添加し、熱・光硬化させる系でのPOSS誘導体の偏析挙動の評価を行うことで、社会実装により寄与できる低コストエントロピー駆動型表面偏析技術を実現する。
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