Project/Area Number |
23K17993
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 38:Agricultural chemistry and related fields
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
花島 慎弥 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (50373353)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 糖脂質 / 有機合成 / MSスペクトル / NMR / 脂質ラフト |
Outline of Research at the Start |
植物細胞の主要なスフィンゴ脂質GIPCは、植物ステロールと相互作用して脂質ラフトを形成すると考えられてきた。しかし、GIPCの入手の困難さなどのため、GIPCと植物ステロールの相互作用に関する実験的な証拠に乏しい。そこで、有機合成と固体NMR等の物理化学的手法を用い、脂質膜環境でのGIPCの脂質鎖部位のふるまいを精密に解析する。有機合成を駆使して脂質鎖部位に重水素標識を施したGIPCプローブを作り、このプローブと植物ステロールの分子間相互作用を脂質膜環境下で固体NMRを使って精密に測定する。NMR信号を解析することで得られるセグメントごとの運動性情報から、植物に特有の脂質ラフトの描像にせまる。
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Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞膜の主要なスフィンゴ糖脂質Glycosylinositol phosphorylceramide(GIPC)は動物のスフィンゴ脂質とは全く異なる植物固有の分子構造を有する。したがって、GIPCと植物ステロールが集合した脂質ラフトは、動物細胞の脂質ラフトの類比的なものではなく、植物固有の姿をもつ可能性が高い。本申請は、GIPCの構造に特異的と考えられる、未知の植物脂質ラフトの姿にせまることに挑戦する研究提案である。本年度は、GIPCの植物体からの単離精製及びGIPC糖鎖部分の合成法の確立を目指し研究をおこなった。 安価で安定共有されている市販の野菜を購入してここからGIPCの抽出をおこなった。文献で報告されているGIPCの抽出精製法をまず検討し、ここに独自の改良を加えることで、植物体の抽出物からGIPC粗精製画分を効率よく得る方法を確立した。さらにこの粗精製画分のMSスペクトルを測定したところ、本植物に含まれるGIPCの主要成分の糖鎖構造は、糖鎖の非還元末端にヘキソース残基を有することが示された。今後は、この粗生成物から精製を進め、二次元NMRと構成単糖の分析をおこなうことで、構造を決める。 これまでGIPCは、イノシトールホスホセラミドからグルクロン酸が伸長した構造をコア構造として有し、続く三糖目がグルコサミンかNアセチルグルコサミン、またはマンノースを有する構造であることが報告されてきた。そこで、本年度は、これらの糖残基を末端に有する三種類の二糖構造の効率的な合成を目指し研究をおこなった。立体選択性の定まらないαグルコサミン化反応を避けるため、α選択的にグリコシル化反応が進行するマンノースをグルクロン酸に繋げた共通中間体をデザインし、合成を達成した。今後は、この共通中間体から目的の3種類の糖鎖構造に導くとともに、イノシトールホスホセラミド部の合成に着手する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
安価で安定共有されている市販の野菜を購入してここからGIPCの抽出をおこなった。文献では、キャベツやブロッコリーといったアブラナ科作物や、リーキのようなヒガンバナ科の作物からの生成例が報告されているが、NMRでの完全な構造決定はなされていない。GIPCは水溶性が高い脂質であることが知られ、精製法が難しい。そこで、含水有機溶媒で抽出の後、水を含む高極性溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーを採用し、GIPC粗精製画分を効率よく得た。この粗精製画分のMSスペクトルはよい結果が得られた一方で、NMRでは未知の糖鎖や脂質など他の物質の混入量が多く、目的の信号が観測できなかった。 上記のようにデザインしたGIPC二糖共通中間体の合成のため、市販のD-マンノースをアセチル化し、オルトエステル体を経由して6段階でマンノース供与体へと導いた。一方で、市販のメチルグルコースから3段階でグルコース受容体を得て、グリコシル化反応を用いて受容体と供与体を連結した。具体的には供与体をトリフルオロメタンスルホン酸銀で活性化してグルコース受容体と反応することで定量的にグリコシル化反応が進行して、高収率かつ高立体選択的に二糖共通中間体が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を経てGIPCの抽出と精製法で改善すべき点が3つある。まず、GIPC粗精製物の量をふやす必要がある。そこで、用いる材料の量を10倍にして、これまで確立した精製方法を用い精製過程を進めていく。次に、クロロフィルのような疎水性の色素や親水性の高い遊離の糖が抽出物内に含まれるため、これをあらかじめ除くことができれば組成性物の純度を高めることができる。作物の葉のうち葉緑体の少ない白い部分を抽出に用いることでクロロプラストの影響を除ける。また、含水溶媒による二層抽出をおこなうことで、水溶性の非常に高い成分をあらかじめ分離する。これらを試すことで粗生成物の純度を向上させる。最後に、粗生成物をHPLCを用いて精製する。 GIPC糖鎖共通中間体二糖構造から、マンノース型二糖を導く。共通中間体のグルコース6位の保護基を選択的に脱保護してアルコールとし、これをTEMPO酸化を用いてカルボン酸に変換することでグルクロン酸骨格へと導く。これを脱保護することで、一つ目の目的構造になる。また、共通中間体のマンノース2位を常法に従いトリフルオロメタンスルホン酸エステルとし、アジ化物イオンで求核置換反応をおこなうことで立体反転してグルコサミン型へと導くことができる。これらを脱保護することで残りの2種類の構造を合成でき、あわせて3種類の二糖構造を得る。 イノシトールホスホセラミド部分の合成にも着手する。市販のmyo-イノシトールを適切に保護した後、補助基を用いて光学分割する。市販のジヒドロスフィンゴシンから4段階でセラミドとし、アミダイト法を用いてイノシトールとセラミド部をリン酸ジエステルを介して結合する予定である。
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