Project/Area Number |
23K17994
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 38:Agricultural chemistry and related fields
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
本田 孝祐 大阪大学, 生物工学国際交流センター, 教授 (90403162)
|
Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | NAD / NADP / 栄養要求性 / アンチトランスポーター / NADPH / NADH / 適応進化 |
Outline of Research at the Start |
細胞内においてNADとNADPには一定の役割分担があるとされる。しかし、実際の酵素がNAD、NADPに対して示す選択性は必ずしも厳密ではない。この事実より研究代表者は、「NADとNADPの役割分担に必然性はなく、これらは進化の成り行きで偶然生じたものに過ぎないのではないか?」との仮説を抱くに至った。本研究では大腸菌を用いた適応進化実験により、NAD、NADPの役割分担が破綻した変異株、具体的にはNADPを要求せずNADのみに依存して生育できる変異株の創出を試み、この仮説の成否を検証する。誰しもが当然と考えてきた「NADとNADPは全ての生物で用いられる」という事実に反例を示すことに挑む。
|
Outline of Annual Research Achievements |
NAD+/NADHおよびNADP+/NADPH(以下、それぞれNAD、NADPと記す)は、全ての生物で普遍的に利用される酸化還元補酵素である。これらは互いに類似した構造を有するが、NADは主として異化代謝、NADPは同化代謝や酸化的ストレスの除去といったように、生体内において両者には一定の役割分担があるとされる。しかし、こうした通説に謳われるNAD、NADPの役割分担も実際には往々にして曖昧である。この事実はわれわれに「生体内におけるNADとNADPの役割分担は進化の結果、偶然的にもたらされたものに過ぎず、そこに生化学的な必然性はないのではないか?」、だとすれば「進化の成り行き次第では、現在の通説とは大きく異なるNADとNADPの使い分けをする生物や、NADもしくはNADPのいずれか一方のみを利用して生育するような生物も存在しえたのではないだろうか?」という問い(仮説)を抱かせるものである。本研究ではこの仮説の成否を検証べく、大腸菌を用いた適応進化実験により、NAD、NADPの役割分担が破綻した変異株、具体的にはNADPに依存せずNADのみを利用して生育できる変異株の創出を試みる。そのための方策として、まず細胞外からNADPを取り込むことが可能なトランスポータータンパク質を探索もしくは分子育種し、これを大腸菌内で発現させる。次にNADPの生合成に関わる酵素遺伝子を破壊し、細胞外から供給されるNADPにのみ依存して生育可能な大腸菌株を作成する。NADP濃度を段階的に低下させた培地上での継代培養にて本株を適応進化させることによってNADP非依存性株の取得を目指す。当該年度は、その最初のステップにあたるNADP取り込みにかかるトランスポーターの探索に取り組んだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大腸菌においてNAD、NADPはペリプラズムにて分解を受けた後、その分解物が細胞内に取り込まれることが知られている。そこで、取り込みトランスポーターの発現と生合成遺伝子の破壊により、NAD要求性株の作成に成功したZhouらの報文(Appl Environ Microbiol, 2011)に倣い、同報文で用いられたNAD-ADPアンチトランスポーター(細胞内のADPを汲み出し、外部のNADを取り込む)タンパク質であるNTT4を大腸菌で発現させ、NAD、NADPを細胞外から分解を経ることなく大腸菌内に取り込ませることを目論んだ。またデータベース検索によりNTT4の相同タンパク質3種類を選抜した。これらの合成DNAを作成、同じく大腸菌内で発現させ、それぞれのトランスポーター活性を測定した。この結果、NTT4株では、NADを含む反応液中にて細胞内NAD濃度が約1.8倍にまで上昇した。一方、その他の3つの推定トランスポータータンパク質の発現株ではいずれも有意な細胞内NAD濃度の上昇は認められなかった。またNTT4を含め、いずれのタンパク質の発現株でもNADPの取り込みを確認することはできなかった。 NTT4発現株において、細胞外NADにのみ依存した生育が可能であるか否かを検証するため、NAD生合成経路を構成する酵素のひとつであるNadEの発現をCRISPRi法により抑制したノックダウン株を作成した。NadEのノックダウンは大腸菌に致死性をもたらし、NADの合成不全が大腸菌に致死的な影響を及ぼすことは確認できたが、その致死性をNTT4による細胞外NADの取り込みにより相補することはできなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
NTT4を含む複数の候補タンパク質でNADPの取り込み試験を行ったが、目的の活性を有したタンパク質を獲得するには至っていない。そこで次年度は、分子進化工学的手法によりNTT4にNADP取り込み能を付与した変異酵素の取得を目指す。このためにはNADP取り込み能を迅速に評価可能なスクリーニングシステムの開発が重要であり、その方策として、細胞外のNADPを取り込むことにより生育が可能なNADP要求性株の作成が望まれる。しかし、上述のとおりアナログ物質であるNADを対象とした同様の実験でも、現在までに所望の栄養要求性株を得るには至っていない。その原因として、生合成遺伝子をノックダウンするためのCRISPRi法に必要なdCasタンパク質とトランスポータータンパク質の発現比率の影響が考えられる。そこで次年度はdCasタンパク質とトランスポータータンパク質を異なる誘導剤で転写調節可能なコンストラクトを作成し、これを用いたNADおよびNADP要求性株の作成に取り組む。
|