Project/Area Number |
23K18001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 38:Agricultural chemistry and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒河 博文 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (80359546)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | クライオ電子顕微鏡 / 電子線回折 / タンパク質 / 結晶構造 / 電子回折 / 電子顕微鏡 |
Outline of Research at the Start |
本研究は電子線回折を用いた次世代結晶解析法の開発を目指す.電子線回折による結晶解析は比較的歴史が浅く,解決すべき課題は多い.例えば電子線に特有の多重散乱(一度回折した回折波が結晶内で再度回折を起こす現象)は解析精度を悪化させる主な要因である.本研究では多重散乱を動力学的回折理論に基づき適切な計算処理をすることで微小単結晶電子回折(microED)の解析精度を飛躍的に向上させることを目指す.また,この過程で低分子の位相決定法の開発も実施する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究はクライオ電子顕微鏡による3次元電子線回折(3D ED)による次世代タンパク質結晶解析法の開発を行う.荷電粒子である電子線は試料を透過する際に静電ポテンシャルによって散乱される.理論的には3D ED解析はタンパク質の構造情報とともに荷電情報も同時に与えるため,創薬分野での分子認識機構解明に大きく寄与することが期待される.さらに電子線はX線と比べて試料との相互作用が4~5桁も強く,膜タンパクや複合体タンパク質など微小結晶(数十~数百nmの厚み)しか得られないターゲットの構造解析に威力を発揮することが期待される. 一方,実際の3D ED解析はX線と比べると回折データと構造モデルとの誤差が大きく,解析精度が劣る点が問題であった.これは電子線に特有の多重散乱を適切に計算処理できていないことが主な原因の一つであった.本研究ではこの多重散乱を動的回折理論に基づき計算処理することで,3D EDの解析精度を飛躍的に向上させ,荷電情報も含めた次世代タンパク質結晶解析法開発を目指すものである. 初年度はアミノ酸やジペプチドなど低分子化合物結晶について3D ED測定を実施した.これらのデータに対して複数データをマージして多重散乱の効果を減らす構造解析手法とデータをマージせず多重散乱を動的回折理論に基づいて処理するプログラムによる解析をそれぞれ実施した.さらに中分子サイズ有機分子のモデルケースとして新規有機半導体の3D ED構造解析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アミノ酸とジペプチド結晶を粉末化して3D ED実験を行った。測定は所属部局(東北大多元研)設置のクライオ電子顕微鏡(日本電子CRYO ARM 300II)を使用した.電子回折像はTVIPS社製CMOSカメラTemCam-XF416を用いた.得られた回折像の指数付け・強度測定はプログラムKAMOおよびPETS2を用いた.KAMAOで複数のデータセットをマージした回折データについて構造決定を行い,SHELXLで精密化を実施した.さらにJANA2020を用いて構造決定および多重散乱を考慮した精密化を行った.この結果に基づき測定条件(露光時間やデータ取得に必要な実験ステージ回転角等)の妥当性について検討した. さらに分子量512の中分子サイズの新規有機半導体の3D ED構造解析を実施した.当初,直接法による構造決定を試みたが成功しなかった.そこで分子構造からab initio法で作成した構造をサーチモデルとした2段階の分子置換法を駆使することで,その複雑な3次元構造を解明することに成功し,成果の一部を論文発表した.
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Strategy for Future Research Activity |
アミノ酸およびジペプチドの3D ED解析は概ね順調に進んでいるが,JANA2020での精密化による解析精度の改善はまだ充分といえない.最近,実験ステージ回転角等の測定条件を改善してデータの再測定を行った.これらのデータについて構造決定と精密化を行い,解析精度のさらなる改善を進める予定である.JANA2020に加えて,多重散乱を考慮した精密化を行うプログラムの開発にも参加しており,回折データや精密化構造の提供を行う予定である. また,タンパク質の3D ED解析実施のために組換型タンパク質の生産と精製さらに結晶化を実施する.このために本年度は培養装置およびタンパク質精製のための低温チャンバーを整備した.組換型タンパク質生産のために発現ベクターをデザインし,既に全合成により作成済みである.大腸菌により組換型タンパク質を大量発現し,得られた抽出物を用いてアフィニティクロマトグラフィ,ゲルろ過クロマトグラフィにより高純度の精製タンパク質を得る.このサンプルを用いて結晶化を実施する.結晶が得られたら,所属部局設置のクライオ電子顕微鏡を用いて,3D EDデータの測定を実施する.
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