Project/Area Number |
23K18095
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 43:Biology at molecular to cellular levels, and related fields
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
立花 誠 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 教授 (80303915)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
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Keywords | 性分化 / 栄養 / 代謝 |
Outline of Research at the Start |
過去に申請者が作製した遺伝子変異マウスは、一定の頻度でオスからメスへと性転換する。このマウスの性転換個体が出現する割合は、妊娠期の母体の餌料によって変わることを見出した。申請者は、栄養代謝と性分化を結ぶ作用点はエピゲノムであるとの仮説を立てた。この仮説を検証するため、生殖腺体細胞で高発現している栄養代謝の律速酵素を破壊したXYマウスを作製し、その性決定・性分化の表現型を解析する。本研究の遂行は、ヒト性分化疾患とエピゲノム変異との関わりを提示する可能性がある。
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Outline of Annual Research Achievements |
過去に私たちは、ほ乳類性決定遺伝子Sryの活性化におけるエピゲノム制御の役割を明らかにした。H3K9脱メチル化酵素Jmjd1aの欠損マウスでは、胎仔期生殖腺におけるSryの発現レベルが野生型の約3分の1まで低下する。その結果、当該XYマウスは一定の頻度でオスからメスへと性転換する。その後に偶然にも、Jmjd1a欠損マウスの性転換の頻度が飼育施設によって大きく変わることを見出した。原因を精査した結果、妊娠母体の餌料の違いが性転換の頻度の違いを生むことを見出した。母体が摂取した栄養分は胎盤を介して胎仔側に供給され、胎仔の各臓器で代謝される。よって母体の栄養状態の変化は、胎仔生殖腺の栄養代謝の変化をもたらす。実際に性決定が行われる時期の胎仔期マウスの生殖腺体細胞を単離して遺伝子発現解析を行ったところ、栄養代謝関連遺伝子が有意に高発現していることも分かった。さらに、栄養代謝産物は、エピゲノム変動を介して遺伝子発現に影響を及ぼすことが、近年の研究によって明らかになってきた。以上の事実から、「母体の栄養状態は胎仔生殖腺のエピゲノム変動を介し、その性分化を攪乱する」との仮説を立てた。本研究提案では、マウスをモデルとした遺伝学的な手法により、この仮説を検証する。 2023年度は、胎仔生殖腺の性決定・性分化に栄養代謝がどのように働きかけるのか、それを母体を介さずに直接検証する実験系を立ち上げた。具体的には、性決定前の生殖腺と中腎を結合したまま単離し、細胞培養用の培地にて培養した。その結果、約20時間後にSryの発現がピークとなることを見出した。さらに培養を続けて生殖腺の性分化を観察した結果、Sryの発現から24時間(培養開始から計44時間)で、精巣または卵巣へと分化することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
母体を介さずに胎仔生殖腺の性決定及び性分化を直接検証できるようなin vitroの実験系を構築することを検討した結果、以下の成果を得ることができた。 性決定前の胎仔(受精後10.7日を経過した胎仔)を妊娠した母親マウスから摘出した。つぎに胎仔から、生殖腺、大動脈、間葉、中腎を、それらが結合したままの状態で単離した。これを一定のポアサイズのメンブレン上に静置し、ウマの血清が入った細胞培養用の培地に浮かべてCO2インキュベーター中にて培養した。XY生殖腺を一定の時間培養し、各時点でSryのmRNAを定量した。同時に、生殖腺体細胞の個数もカウントした。約20時間の培養でSryの発現がピークとなることを突き止めた。20時間培養した時点でのSryのmRNA発現量は、母体内で発生した性決定期(受精後11.5日)の胎仔のSryのmRNA発現量と同等であった。またさらに、20時間培養した時点での生殖腺体細胞の個数も、母体内で発生した胎仔の生殖腺体細胞の個数と遜色がなかった。さらに培養を続け、生殖腺の性分化を観察した。その結果、Sryの発現から24時間(培養開始から計44時間)で、XY生殖腺はSOX9陽性、FOXL2陰性の精巣へと分化し、一方で、XX生殖腺は、FOXL2陽性、SOX9陰性の卵巣へと分化することを明らかにした。 私たちが樹立したこのような生殖腺の対外培養の方法は、母体内にて発生する胎仔の性決定・性分化をうまくミミックしていることが分かった。この実験系が確立したことにより、母体を介さずに、代謝の阻害剤を生殖腺に直接作用させることができるようになった。このことから、2023年度の研究の進捗の度合いを、「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の生殖腺の体外培養実験系を使い、下記の代謝酵素の阻害剤がどのような影響を及ぼすのかを観察する。 ・解糖系の阻害:2-デオキシ-D-グルコース(HK1阻害剤)・脂質β酸化経路の阻害:Etomoxir(CPT1A阻害剤)・アミノ酸代謝(α-KG産生)の阻害:Ivosidenib(IDH1阻害剤)・鉄取り込み阻害:DeferoxamineまたはDeferasirox (鉄キレート剤) これらの阻害剤を加えて培養したXY生殖腺の性分化の状態を、SOX9/FOXL2抗体を使った免疫組織蛍光染色によって解析する。 さらに、性決定期の胎仔の生殖腺体細胞で高発現している栄養代謝酵素の欠損マウスを作製する。CRISPR/Cas9によるゲノム編集によりこれらの酵素を欠損したXYマウスを樹立し、その性分化の表現型を明らかにする。欠損マウスが胎生致死であるとの報告がある遺伝子(例:脂質β酸化の律速酵素Cpt1aなど)は、Cre-LoxPを利用した条件的欠損マウスを樹立する。具体的には、ドナーDNAの共存下でゲノム編集を行い、イントロンにLoxP配列を導入する。得られた条件的欠損マウスを生殖腺体細胞で特異的にCreを発現マウスと交配する。
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