Project/Area Number |
23K18124
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 44:Biology at cellular to organismal levels, and related fields
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
若山 照彦 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40360672)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若山 清香 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (10525918)
|
Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
|
Keywords | 微小重力 / 哺乳類 / 宇宙生殖 / 凍結 / 宇宙ステーション / 胚盤胞 / 精子 / 卵子 / 受精 / 発生 |
Outline of Research at the Start |
人類は将来、月や火星で生活するようになると考えられているが、異なる重力と強力な宇宙放射線が降り注ぐ宇宙で、哺乳類は子孫を作り繁栄できるのだろうか。しかし哺乳類はメダカやイモリと違い宇宙で実験するのが難しく、いまだ宇宙で生殖が可能なのか明らかになっていない。本研究では、国際宇宙ステーションで哺乳類の卵子や精子、受精卵を用いた生殖実験を行うためのデバイスを開発し、人類が宇宙で繁栄できるのか明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
将来、人類が宇宙に進出した時、人類だけでなく家畜やペットの繁殖も必要になるが、哺乳類が宇宙で子供を作れるのかわかっていない。しかしマウスをISSで長期間飼育することは困難であり、卵子や初期胚は非常に小さく取り扱いが難しいことから、哺乳類の宇宙生殖研究はほぼ不可能だった。そこで我々は、国際宇宙ステーション(ISS)で宇宙飛行士が凍結してある初期胚を解凍し培養することが可能なデバイス「ETC」を開発し、世界初の胚の培養実験を行った。その結果、微小重力環境でも受精卵は胚盤胞へ発生可能だったが、内部細胞塊が分離し、一卵性双生児が生まれる可能性が高まることが示された(Wakayama et ., iScience 2023,世界中のメディアで報道された)。しかしこの時の実験では、胚の回収率が地上実験よりだいぶ低く、細菌のコンタミも確認された。そこで本研究では、その時の開発のノウハウを生かして、①宇宙で体外受精を行うこと、②宇宙で発生した胚盤胞を再凍結し、地上に持ち帰ることができること、③胚の回収率100%のデバイスを開発し、宇宙で発生した胚から産仔を作出することを目指す。 宇宙で体外受精を実施するためには、卵子と精子を凍結してISSへ打ち上げ、ISSの冷凍庫(-95度)で実験日まで保存し、宇宙飛行士が解凍して両者を混ぜ合わせなければならない。今年度の研究により、低浸透圧の凍結保護剤を用いて卵子を凍結することで、数日間であれば-80℃で保存しても解凍後に一定数の生きた卵子を得ることが可能になった。次に、宇宙飛行士がISS内で卵子と精子を解凍し体外受精を行うため、精子をシリンジ内で凍結する方法を開発した(学会発表済み)。一方、ISSで胚盤胞を凍結するために、凍結方法および凍結容器の開発を行い、まだ成績は非常に低いが、解凍後に生存した胚盤胞を得られるようになってきた(学会発表予定)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当時、胚に触れることなく解凍、洗浄し、胚盤胞まで培養できるようなデバイスは存在せず、この開発は困難を極めたが、約10年かけてついに、宇宙飛行士がシリンジを使って順番に解凍液を注入するだけで、凍結胚を解凍し培養することが可能なデバイスの開発に成功した(Wakayama et al., Plos One 2022)。このデバイスを使って実際に宇宙飛行士がISSで胚の培養を実施し、哺乳類の宇宙生殖について重要な知見を得ることに成功した。だが、このデバイスの胚の回収率は低く、このデバイスが様々な分野で利用されるようになるためにも、融解後の胚の回収率を100%にしなければならない。また、本研究ではISSで体外受精を行い、発生した胚盤胞を凍結して地球に持ち帰り、仔を作ることを目指している。そのためには、-80度で卵子を長期保存し、宇宙飛行士がISSで体外受精でき、胚盤胞を冷凍庫で凍結することが可能なデバイスを開発しなければならない。 今年度、低浸透圧の保存液を用いることで、卵子を-80度で最長5日間保存しても生存させることが出来た。得られた卵子を単為発生刺激により発生させると、問題なく胚盤胞へ発育できたことから、品質にも問題はないと思われる。しかし保存期間が長くなるにつれて生存率は低下しており、目標の3か月間の-80保存を成功させるためには、網羅的な保護剤の検討が必要である。 精子は、当初シリンジで凍結保存をすると解凍後に体外受精できなくなってしまった。しかしシリンジを使用前に良く洗浄し、金属毒性の無い針を選ぶことで、解凍後にも高効率で体外受精可能な状態で凍結保存できるようになった。 胚盤胞の-80度での凍結は、凍結保護剤と冷却速度を一定に保つ凍結容器の検討により、ついに解凍後に生存胚盤胞を得ることに成功した。生存率は低いが、不可能ではないことが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
前回の研究で、我々は哺乳類の初期胚は重力が無くても発生可能であることを初めて証明した。だが、胚盤胞の内部細胞塊(ICM)が分離する現象が発見され、重力はICMの局在化に重要である可能性も示された。もしこれが事実であれば、宇宙で発生した胚は双子になってしまう危険性があるが、この実験では胚盤胞で化学固定を行ったため、宇宙で発生した胚が産仔にまで発育できるのか調べられなかった。またこの時の実験では2細胞期胚を打ち上げており、卵子と精子が宇宙で可能なのか調べていない。哺乳類の宇宙生殖の可能性を明らかにするためには、この時開発したデバイスをさらに発展させ、ISSで体外受精可能なこと、発生した胚盤胞をISS内の冷凍庫で凍結保存できること、および持ち帰ってから産仔を作れることが可能な新デバイスの開発が不可欠である。 一方、前回の実験ではデバイスの胚の回収率の低さや細菌のコンタミが問題となった。このデバイスは胚操作の練習なしで胚を扱えるため、不妊治療クリニックや実験動物施設、畜産業など初期胚を扱う分野でも広く利用される可能があるが、そのためには胚の回収率を100%にしなければならない。デバイスから胚が漏れ出さないように、メッシュシートの種類や加工時の接着方法などの改良が必要である。改良したデバイスを用いることで、宇宙で発生した胚盤胞が多数得られれれば、ICMの分離現象が確かめられる。さらに凍結した胚盤胞を持ち帰り移植して産仔を得ることが出来れば、宇宙で発生した胚から一卵性双生児になる危険性が高まるのか明らかにできるだろう。新デバイスで実施する体外受精から胚盤胞の凍結まで多岐にわたるため、全工程を1つのデバイスで完了させることはかなり難しい。そのため宇宙実験を体外受精から胚盤胞の化学固定までと、初期胚の培養から胚盤胞の凍結までの2回に分けることも検討する。
|