Project/Area Number |
23K18148
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 45:Biology at organismal to population levels and anthropology, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 健雄 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10201469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 大輝 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60846773)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
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Keywords | ゴキブリ / キノコ体 / ケニヨン細胞 / シングルセル RNA-seq解析 / 記憶・学習 / ミツバチ / シロアリ / シングルセルRNA-seq |
Outline of Research at the Start |
本研究課題では、同じゴキブリ目に属しながら、社会性であるシロアリと、単独性であるが高い認知能力をもつゴキブリについて、脳高次中枢キノコ体を構成するケニヨン細胞サブタイプの種類を比較し、ケニヨン細胞サブタイプの複雑さが、「社会性」と「高い認知能力」のどちらに相関するか検討する。具体的には、ワモンゴキブリとヤマトシロアリについてキノコ体ケニヨン細胞のシングルセルRNA-seq解析を実施し、それぞれの種に固有なケニヨン細胞種を同定する。さらにRNAiにより、当該サブタイプ選択的に発現する遺伝子をノックダウンした際のワモンゴキブリの記憶・学習能力、ヤマトシロアリの社会性行動に対する影響を調べる。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らはハチ目昆虫ではハバチ亜目→ハチ亜目有錐類(寄生性)→ハチ亜目有剣類(営巣性/一部は社会性)への行動進化に伴い、昆虫脳の高次中枢であるキノコ体を構成するケニヨン細胞の種類が1→2→3と増加したことを見出し、その進化動態を解明してきた。本研究課題では、行動進化に伴うケニヨン細胞の種類の増加が他昆虫類でも見られるか検討するために、ゴキブリ目シロアリ亜科に属するシロアリ(社会性)と、(ムカシ)ゴキブリ亜目に属するゴキブリ(単独性)を対象に、ケニヨン細胞サブタイプを網羅的に同定・比較することを目的とした。令和5年度は、ワモンゴキブリのキノコ体のシングルセルRNA-seq解析を行うための細胞分離条件を検討した。ワモンゴキブリのキノコ体構成細胞は、細胞分離後にマルチプレット率が高いという難点があったため、ハチ目やハエ目の先行研究を参考に分離条件を検討し、マルチプレット率を抑え、かつ高い生細胞率が得られる分離条件を決定した。 並行して、セイヨウミツバチのキノコ体の細胞特性の解析を進め、ミツバチではエクダイソン受容体(EcR;昆虫の蛹期に誘導され変態を制御する)が採餌行動依存に小型ケニヨン細胞で発現誘導され、脂質代謝関連遺伝子群の発現抑制に働くことを示唆した[Iino et al., Sci. Rep., 2023]。また、ミツバチ固有なnoncoding RNA Nb-1が蛹キノコ体の増殖細胞で選択的に発現することを示した [Tadano et al., Sci. Rep., 2024]。さらに、エクダイソン情報伝達系の転写因子であるEcRとMblk-1がミツバチでは成虫のケニヨン細胞サブタイプ選択的に「再動員」され、有剣類に固有なキノコ体機能の獲得に寄与したことを総説として報告した[Matsumura et al., Front. Bee Sci., 2023]。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度はワモンゴキブリキノコ体のシングルセルRNA-seq解析まで実施する予定であったが、キノコ体の細胞分離条件の検討に予想外に時間が掛かった。しかし、細胞分離条件が決定されたので、令和6年度はシングルセルRNA-seq解析を実施し、予定通り、各種のケニヨン細胞サブタイプを網羅的に同定すると共に、サブタイプの種間比較を行うことで各種に固有なサブタイプを同定する。 これまでにin situ hybridization法を用いた予備的知見として、社会性のネバダオオシロアリは1種類、単独性で高い認知能力を持つワモンゴキブリは2種類のケニヨン細胞サブタイプをもつ可能性を見出している。このことは、ゴキブリ目ではケニヨン細胞の種類の増加は、社会性ではなく高い認知機能の獲得と相関した可能性を暗示する。そこで、今後、ゴキブリでケニヨン細胞サブタイプ選択的に発現する遺伝子のノックダウンを行い、当該サブタイプの記憶学習能力における機能を調べる予定である。令和5年度は松本幸久博士(東京医科歯科大学)との共同研究として、ワモンゴキブリにおける連合学習実験の再現実験を行ったが、その際、人の動作にゴキブリが過敏に反応するという問題があった。最近、ミツバチにおいて動画内の個体行動をトラッキングするツールを用いて行動を定量化する技術を確立したため[Kohno et al., J, Insect Behav., 2023]、令和6年度はこれをゴキブリの行動実験にも適用することで、できるだけ人の操作を介さずに記憶学習能力を測定できる実験系の確立を進める。令和5年度は、ゴキブリのシングルセルRNA-seq解析の難点が解決されたことと、本研究課題の比較対象であるセイヨウミツバチのキノコ体の細胞特性の解析において、予定以上の研究成果が得られたため、全体的には「概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ワモンゴキブリの成虫(雌)、およびヤマトシロアリの異なるカーストの個体(ワーカー、ソルジャー、女王、何れも雌)のキノコ体を摘出し、細胞分離した後にシングルセルRNA-seq解析を行う。取得したデータの種間比較解析により各種に固有なケニヨン細胞サブタイプが存在するか、またシロアリについては各カースト間での比較解析によりキノコ体構成細胞種やその構成比率に差があるかを調べる。さらに、同定した細胞種選択的に発現するマーカー遺伝子のin situ hybridizationを行うことで、キノコ体内における各細胞種の分布を調べる。また、両種ではRNAiが有効であるので、ワモンゴキブリ固有のサブタイプ選択的に発現する遺伝子をノックダウンした際のワモンゴキブリの記憶・学習能力を調べる。ヤマトシロアリについては、ヤマトシロアリ固有あるいはヤマトシロアリの各カーストに固有な細胞種に選択的な遺伝子のノックダウンにより、採餌行動や防衛行動、産卵行動などの社会性行動に対する影響を調べる。
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