Project/Area Number |
23K18154
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 45:Biology at organismal to population levels and anthropology, and related fields
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三本木 至宏 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (10222027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井川 武 広島大学, 両生類研究センター, 准教授 (00507197)
廣田 隆一 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (90452614)
藤井 創太郎 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (90806019)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
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Keywords | 温泉ガエル / 高温環境適応 |
Outline of Research at the Start |
変温動物である両生類は通常10~25℃の水場に生息しているが、研究分担者・井川が発見したリュウキュウカジカガエル(温泉ガエル)は、46℃の温泉に生息する。生物学の定説を覆すこの温泉ガエルの高温環境適応の仕組みを解明することが本研究の目的である。応募者らによる温泉ガエルの発見は、ワレスの生物地理区を覆すトピックス性のあるものである。本研究では、分子間共進化、生物間共進化の複眼的な視点から挑戦し、生物環境適応の謎に迫る。本研究は、生物学研究のミクロからマクロまでの階層を横断するものであり、本研究を通じて、細分化されすぎた従来の生物学体系からの脱却を図る。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、本研究の3つの側面、ゲノム科学、蛋白質科学、そして環境生物学とも大きな進展があった。まずゲノム科学の側面では、温泉に生息するリュウキュウカジカガエルの温度耐性について、高温下で問題となる有酸素代謝関連蛋白質に着目し、機械学習による構造安定性予測によってミトコンドリア関連蛋白質の熱安定性を予測した。まず呼吸鎖電子伝達系の複合体IV構成因子(COX1、COX2、COX3)について、熱安定性を予測したところ、リュウキュウカジカガエルのCOX1は研究対照とする清流に生息するカジカガエルよりも安定性が高く、恒温動物と同等であった。さらに、複合体IVのカウンターパートであるCytochrome C (CYC)についても同様に比較したところ、リュウキュウカジカガエル体細胞型の熱安定性が高いと予測された。次に蛋白質科学の側面からは、ゲノム科学側面で対象としたCYCの大腸菌を宿主に用いた異種発現、および得られる精製蛋白質の安定性と酸化還元電位を生化学的に検証した。その結果、機械学習による予測を支持する結果を得た。以上のことからリュウキュウカジカガエルの複合体IVを構成する蛋白質およびCYCはカジカガエルよりも熱安定性が高まっており、生体の高温耐性に寄与している可能性が考えられた。3つ目の側面、環境生物学のアプローチからは、温泉環境から高温性の藍藻を単離し、カジカガエルに高温耐性をもたらす効果について実験的に実証することができた。また、実際にリュウキュウカジカガエルが生息する環境からも高温性の藍藻を培養し、解析を実施した。具体的には、得られた藻類バイオマスからDNAを抽出し、ONT社ナノポアシークエンサーで塩基配列を決定した。その結果、高温耐性をもたらす藍藻と近縁の藍藻が優占種として見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の3つの側面のうち、ゲノム科学の側面から進めた研究成果を、2023年度中に学術論文として発表することができたからである。当該論文はオープンアクセス誌、PLOS ONEに掲載されたものであり、研究分担者・井川が責任著者、研究代表者・三本木が共著者となっている。一方、蛋白質科学、および生物環境学の側面から進めた研究に関しては、それぞれ研究代表者・三本木、研究分担者・廣田が責任著者となって論文等の成果を発表する準備を2023年度中に開始している状況にある。また、井川、三本木に加えて研究分担者・藤井が共著者となって本挑戦的研究(萌芽)の研究概要を査読付き和文学術誌に紹介し、本研究の内容を国内にアウトリーチすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の3つの側面のうち、ゲノム科学の側面からは、研究分担者・井川が主導して引き続きリュウキュウカジカガエルとカジカガエルのゲノム情報から前者の高温適応に関わる遺伝的要因を探る。並行して2024年度中に、ゲノム科学における未発表の成果を論文化する予定である。蛋白質科学の側面からは、研究代表者・三本木と研究分担者・藤井が主導して、リュウキュウカジカガエルとカジカガエルからそれぞれクローン化した2種、計4種のCYC遺伝子の産物の生化学的研究を進め、2024年中にその成果を論文化する。環境生物学の側面からは、研究分担者・廣田が主導して、リュウキュウカジカガエルが生息する温泉環境から単離した高温性藍藻のゲノム・代謝産物解析を研究分担者・井川の協力を得て実施し、その成果を2024年度中に発表する。温泉地から単離した藍藻については、今後行う予定の摂餌試験に十分な量を確保するため、効率的な培養法についての検討を共同研究先等との協働により検討する。またカエルの他の動物(ニワトリ)に対しても熱耐性をもたらす効果が確認されるか検討を行う。
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