Project/Area Number |
23K18181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 47:Pharmaceutical sciences and related fields
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
玉井 郁巳 金沢大学, 薬学系, 教授 (20155237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒川 大 金沢大学, 薬学系, 准教授 (40709028)
白坂 善之 金沢大学, 薬学系, 准教授 (60453833)
中島 美紀 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (70266162)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
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Keywords | 尿酸 / CD38 / 高尿酸血症 / 痛風 / 炎症 / 尿酸結合タンパク質 / 尿酸低下療法 / NAD+ |
Outline of Research at the Start |
血清尿酸値SUAはヒトでのみ高濃度に維持されており、SUA変動と様々な疾患の関連性が示唆されているが、詳細は不明である。本研究ではこの問いに対して尿酸結合タンパク質UABPの存在を仮定し、独自の尿酸結合ビーズによる試験からCD38とNDFIP1をUABP候補として見い出しているため、それらタンパク質を通じた尿酸の生理的・病理的意義の解明を試みる。既に、痛風原因となる尿酸塩結晶はCD38活性を増大させ、溶解した尿酸はCD38活性を抑制するという相反する予試験結果が得られている。このような結果は血清尿酸値を一定に維持することの意義に通じる可能性を示唆しており、本仮説による尿酸の役割を明確にする。
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Outline of Annual Research Achievements |
血清尿酸値は、ヒトならびに高等霊長類においては他の動物に比較して高く、その維持には多種のトランスポーターならびに酵素が関与している。しかし、このように高く維持される尿酸の意味は何なのかについてはよくわかっていない。唯一、尿酸は抗酸化作用を有していることは化学的に示されているのみである。一方、血清尿酸値変動は多様な疾患と相関するという臨床報告が継続的になされており、腎疾患、肝疾患、循環器系疾患などその病態は多様である。しかし、尿酸と病態の関連メカニズムは明確ではなく、血清尿酸値変動と因果関係があるのかあるいは単なる相関なのか曖昧である。本研究ではこのような古くから知られているにもかかわらず、生体への作用が曖昧な尿酸について、生体への作用機構を見出せないかと考えた。メカニズムの提唱無しに生体への作用の有無を論じできないためである。本目的を達成するために本申請では新たに「尿酸センサー」となる尿酸結合タンパク質の存在を仮定した。本タンパク質が血清尿酸値変動を察知して、尿酸の生理・病態に関わるというものある。本研究提案時点までに、尿酸結合タンパク質の選別を既に行っていた。尿酸自体は化学的に不活性であるため、類似化合物8-oxoguanineをビーズに結合させ、細胞溶解液中から尿酸結合タンパク質を分離し、プロテオミクス解析により複数の候補結合タンパク質を見出していた。本研究では、その中で、免疫・炎症などとの多様な生理作用と関連するCD38に着目した検討を進めることとした。CD38の主たる役割はNAD(Nicotinamide Adenine Dinucleotide)の分解酵素となり、 ADP-riboseならびにcyclic-ADP-riboseの生成に働く。このようなCD38に対する尿酸の作用について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CD38と尿酸の関係について、結晶化した尿酸結晶と可溶化尿酸に分けた解析を進めることとした。その結果、尿酸結晶は免疫系細胞においてCD38タンパク質発現量を増大させることが見出された。この時、in vitro試験系において、尿酸結晶はNAD+濃度も変動させる結果が得られた。CD38活性の低下は炎症反応を誘発させることは既に知られているため、本尿酸結晶の作用は痛風発作の発症と対応するものと考えられた。また、痛風発作の炎症反応となるNLRP3インフラマソームにおいてはNAD低下が伴うことが知られている。したがって、CD38の発現誘導は尿酸結晶による痛風発作の悪化を説明するメカニズムとして位置づけることが可能である。一方、可溶性尿酸についてもCD38に対する作用を検討した。その結果、可溶性尿酸はCD38の発現量には全く影響せず、尿酸結晶とは異なることがわかった。一方、可溶性尿酸はCD38のNAD+分解酵素活性を阻害することがわかった。本作用は非競合的であり、尿酸とNAD+はCD38の異なる部位の結合するものと考えられた。また、得られたIC50値はおよそ数mg/dLと、正常な血清尿酸値内にあった。したがって、正常な血清尿酸値においてはCD38の酵素活性は可溶性尿酸によりかなり抑制されているものと考えられた。以上より、可溶性尿酸はCD38のNAD+分解酵素活性を阻害することにより、NAD+を維持する方向に働き、尿酸結晶とは反対の生理作用を有する結果となった。NAD+を維持することは炎症抑制作用につながるため、本結果からは、適度な血清尿酸値を維持することで炎症反応を調節していることが想定された。このような炎症反応調節が尿酸の一つの役割であることが考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
尿酸の生理的役割ならびに病態との関連は、メカニズムが曖昧なまま、臨床的相関性から論じられ続けられいるのが現状であり、大きな研究の進展がない。本研究では、世界初の仮説となる「尿酸結合タンパク質」という発想で検討を進めている。これまでにCD38が尿酸結合タンパク質の一つとして見つかったことから、尿酸の生体への作用メカニズムを解読するに必要な分子を提案できるに至った。本成果については、初年度に論文報告に至ることができた。しかし、NAD+の分解・調節にはCD38以外の分子も関与しており、尿酸によるCD38への作用(発現・活性調節)が、生体でどれほど重要なものかという、寄与率を明確にする必要がある。そのための検討・情報収集をさらに行う必要がある。本目的を達成するためには、尿酸結合タンパク質の概念を広く臨床研究者に周知し、CD38のような具体的な分子と臨床現象を関連づける視野を広める必要がある。さらに、尿酸結合タンパク質として見出されたCD38以外のタンパク質についても解析を行う必要がある。その候補としてNDFIP1やDMT1があり、これらタンパク質と尿酸の関連を見い出す。また、高尿酸血症治療についても並行して進める必要がある。2021年に日本で世界初に上市された尿酸排泄促進薬(URAT1阻害薬)は既存薬と比べて、URAT1選択性が高く、活性も強いことから臨床上の有意性が示唆されている。では何故既存薬より選択性が高いかも明確にすることが、今後の創薬研究にも重要である。以上、今後はCD38との関連研究を深めること、CD38以外の尿酸結合タンパク質の解析を進めること、さらに病態との関連が明確になる可能性が高いことから尿酸値低下療法の推進をはかるための尿酸排泄促進薬の作用機構に関する研究を進める。
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