Project/Area Number |
23K18447
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 59:Sports sciences, physical education, health sciences, and related fields
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田渕 明子 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (40303234)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
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Keywords | ASD / シナプス / 遺伝子発現 / 転写因子 / 樹状突起 |
Outline of Research at the Start |
少子化社会における自閉スペクトラム症(ASD)患者やそのご家族のQOL向上は喫緊の課題であるが、特効薬は未開発である。我々は、ASD患者で見出された転写因子MRTFB遺伝子のde novo変異が、部分的転写活性抑制と神経細胞の樹状突起の単純化を引き起こすことを発見した。本研究では「MRTFB変異によるシナプスから核へのシグナリング障害」という新しいASD病態仮説を提唱し、その実証に挑戦する。変異によるMRTFB機能障害の機構解明と機能障害を改善する薬効成分の応用探索等を分子・細胞・個体レベルで遂行する。本研究は、シナプス病態仮説とも整合性がとれる上、対症療法ではない本質的な治療への道が拓ける。
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Outline of Annual Research Achievements |
少子化社会における自閉スペクトラム症(ASD)患者やそのご家族のQOL向上に向けて、ASDなどの発達障害で認められたde novo 変異の性質を探究し、病態との因果関係を探っている。また、当該MRTFB変異ノックインマウス創出によるASDモデルマウスの作製を進行させている。今年度は、ヒトの発達障害患者における2種類のMRTFB de novo変異についても研究を開始し、その変異を有するMRTFB発現ベクターの構築と細胞レベルにおける機能について解析を行った。既存のベクターに加え、部位特異的変異導入による変異型MRTFB発現ベクターを完成させ、タグの増設などを行い、免疫染色やウェスタンブロットによる検出感度を高めた。線維芽細胞において、MRTFBと結合する転写因子であるSRFに依存した遺伝子発現が、構築した変異型MRTFBでは微増していた。さらに、培養大脳皮質ニューロンにおいては、野生型と比較してSRF依存性遺伝子発現が顕著に増加していた。今年度新たに解析した変異型MRTFBは、アクチン結合能に障害があることが予想され、アクチン結合状態では細胞質に存在するMRTFBの細胞内局在が変異により変化している可能性がある。以上のことから、 神経細胞においては、特に核内に存在するMRTFBが効率良く転写活性化能を獲得することが考えられる。現在、その点や神経形態に関する影響について解析を進めている。また、MRTFB変異ノックインマウスの作製については、CRISPR-Cas9によるゲノム編集により実施しており、現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
長年研究をしているASDで発見されたMRTFB de novo変異体発現ベクターは、神経細胞において検出感度が低いため、実験を効率よく進行させにくい状態であった。その点を解消するため、既存のベクターのタグの増設などを行っていたため、実質的な研究成果の達成に遅れが出ている。また、今年度、新しく2種類のde novo変異の解析のため、変異体発現ベクターの構築を行った。当初の予定からやや遅れているが、時間をかけて検出感度を高めた実験材料を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により高感度の発現ベクターが構築できた。今後はそれらを用いて下記の研究を進める。 【課題1(基礎) 変異によるMRTFB核移行の検証】MRTFBの野生型ベクター、変異型ベクターをラット初代培養大脳皮質ニューロンに導入し 、シナプス活動を惹起する刺激を行う。その後、免疫染色法を行い、変異型の細胞内局在を検証する。 【課題2(基礎) インタラクトームを利用したMRTFB相互作用分子の同定と変異によって結合が妨げられる機構解明 】高品質抗体によるインタラクトーム解析を行い、相互作用分子を探索する。探索した分子については、 変異型のMRTFBとの相互作用抑制について共免疫沈降により検証するとともに、RNA干渉を利用し、シナプス-核移行阻害プロセスの直接的な再評価を1と同様の方法で行う。相互作用抑制機構解明に向け、野生型、変異型MRTFBタンパク質発現、精製を行い、構造生物学的解析の準備を行う。 【課題3(応用) MRTFB変異による遺伝子発現抑制を回復させる薬効成分の探索スクリーニング】MRTFBは転写因子SRFと複合体を形成して、CAr Gボックスと呼ばれる塩基配列に結合し、遺伝子発現制御を行う。申請者らは複数のCArGボックスを上流に有するホタルルシフェラーゼ遺伝子ベクターを構築している。神経細胞株あるいはラット初代培養大脳皮質ニューロンに当該ベクターと野生型および変異型MRTFB遺伝子を導入後 、薬効成分を加え、ルシフェラーゼ発光によりスクリーニングする。 【課題4(病態) MRTFB変異遺伝子ノックインマウスの作製による新規ASDモデルマウスの創出】ASDで認められたMRTFB遺伝子変異と同じ変異を持つマウスをCRISPR-Cas9により作製を進めている。今後も継続してマウス創出を進める。作製したマウスは、行動解析を行い、ASDの症状を呈するかどうかを検証する。
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