Project/Area Number |
23K18450
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 59:Sports sciences, physical education, health sciences, and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 努 京都大学, 農学研究科, 教授 (50466687)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
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Keywords | エタノール / FGF21 / 転写制御 / エピゲノム / DOHaD / 飲酒 |
Outline of Research at the Start |
日本人飲酒者の約2割の飲酒習慣には問題があるが、なぜ飲酒行動に個体差があるのかは未解明である。そこで本研究では、「飲酒行動の個体差は、飲酒欲求を抑制するFGF21のアルコール応答性分泌に起因し、FGF21の栄養エピゲノム制御が関与する」という仮説を検証する。そのために、アルコール応答性FGF21分泌の制御メカニズムの解明と栄養エピゲノム仮説に基づく個体差の機序解明の2つを進める。飲酒行動の個体差を生みだす基礎メカニズムの解明に栄養代謝の観点から取り組み、予防・治療へと発展させる礎とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「飲酒行動の個体差は、飲酒欲求を抑制するFGF21のアルコール応答性分泌に起因し、FGF21の栄養エピゲノム制御が関与する」という仮説を検証するために、アルコール応答性FGF21分泌の制御メカニズムの解明と栄養エピゲノム仮説に基づく個体差の機序解明の2つを進めている。 R5年度は、アルコール応答性FGF21分泌の制御メカニズムの解明を進めた。FGF21の転写・分泌を調節するアルコール代謝産物の同定については、エタノールの代謝産物ではなく、エタノールそのものが、FGF21の転写を誘導することを明らかにした。生体内の代謝に近いパターンを維持すると考えられる細胞株や肝臓の初代培養細胞を用いて、エタノール代謝酵素の阻害剤の添加実験を行い、エタノール代謝を阻害してもFGF21の発現が誘導されることを明らかにした。 また、アルコール応答性FGF21分泌を調節する転写領域の絞り込みを行った。絞り込まれた転写領域とそこに結合する転写因子の候補から、機序仮説を絞り込むことができた。各種の長さのFgf21プロモーターを用いたレポーターアッセイを行い、特定の転写因子が結合する領域が、エタノール応答性のFgf21転写誘導に重要であることを同定した。また、同部位の転写因子結合配列に変異を入れることにより、転写誘導が消失することを確認した。 また、上記と並行して、エタノールが誘導する細胞な情報伝達系の探索を行った。その結果、エタノール応答性に変動するシグナル候補を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、「(1)アルコール応答性FGF21分泌の制御メカニズムの解明」のうち、「(1-1)FGF21の転写・分泌を調節するアルコール代謝産物の同定」は、エタノールそのものであることを同定することができたため、目的を達成することができた。また、「(1-2)アルコール応答性FGF21分泌を調節する転写因子Xと責任領域Yの同定」については、転写因子Xと責任領域Yの候補は絞り込まれているが、クロマチン免疫沈降(ChIP)-qPCR法によって、結論を確定させるまでには至らなかった。 他方、エタノールと転写因子Xの間をつなぐシグナル候補を得られたため、大局的な目的である制御メカニズムの解明に向けて、想定外の前進もあった。 以上より、トータルで見ると、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、「(1-2)アルコール応答性FGF21分泌を 調節する転写因子Xと責任領域Yの 同定」を完了させるために、クロマチン免疫沈降(ChIP)-qPCR法を用いて、アルコール応答的に責任領域Yに結合する転写因子Xを確定させる。次に、転写因子Xを調節することが一般的に知られているシグナルZと、エタノールと転写因子Xの間をつなぐシグナル候補(Zではない)が、どのようにクロストークするのかを、細胞培養の実験系で薬理的な阻害剤実験などを用いて、検証する。これらの実験を通して、細胞培養レベルで、アルコール応答性FGF21分泌の制御メカニズムを解明する。 次に、アルコール嗜好性の個体差の機序解明を進めるために、アルコール応答性FGF21分泌能の違いが、アルコール嗜好性の個体差を生み出しているマウス群を選別する。そのために、アルコール嗜好性とアルコール応答性FGF21分泌を同一ブリーダーから購入した(遺伝環境と飼育環境が同一の)マウスで測定し、「アルコール嗜好性が低く、アルコール応答性FGF21分泌が高いマウス」と「アルコール嗜好性が高く、アルコール応答性FGF21分泌が低いマウス」を選別する。そのうえで、これらのマウスの初代肝細胞を作成し、同定したアルコール応答性FGF21分泌の制御メカニズムについて、各段階を群ごとに評価して比較する。それにより、FGF21分泌の違いがアルコール嗜好性の違いの原因の一つになるのかを検証する。
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